ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

酒も老化の原因物質のひとつか

2024-05-05 10:36:31 | 健康・医療
私はそれほど大量には飲みませんが、酒が好きで毎晩飲んでいます。夕食の時軽くビールを飲み、風呂上りにウイスキーを少し飲んで寝るというのが日課となっています。

最近このエタノールが代謝されてできるアセトアルデヒドが老化原因物質のひとつであるという説が出てきました。歳をとると認知機能が落ち、筋力が衰え耳が聞こえにくくなったり視力が低下するなどして、身体の機能や環境への適応力などが落ちて老化します。

老化は活性酸素によって身体が錆びつき、身体を作っている物質のひとつタンパク質が「酸化」や「糖化」作用により、劣化することなどで起きることが知られています。

名古屋大学の研究グループは、酒に含まれるアルコールが体内で代謝されて作られるアルデヒドが老化原因物質のひとつではないかという論文を発表しました。

今回の研究成果の背景には、研究グループが2020年に提唱した「AMeD症候群」という原因不明の遺伝病についての研究があります。

この病気は、正常な血液を作れなくなることで精神遅滞、低身長・小頭症などの症状を発症しますが、研究グループはこの病気の原因がアルデヒドの分解酵素に関係した遺伝子変異ではないかとしました。

酒の中に含まれるエタノールは、胃や小腸などの消化器官から約90%が肝臓に送られ、アルコール脱水素酵素(ADH)などによって酸化されて有害なアセトアルデヒドに代謝されます。

アルデヒドは、細胞内のミトコンドリアに存在するアルデヒド脱水素酵素(ALDH)でさらに分解され、無害な酢酸に解毒された後、最終的には水や二酸化炭素として体外に排出されます。

アジア人はALDHの酵素活性をもたない遺伝的な多型(変異)を持つ人が多く、酒が弱く飲むと顔が赤くなったり、ひどい二日酔いになることが知られています。

有害なアルデヒドを酢酸に分解する機能が弱く、有害なアルデヒドが長く体内に存在するからで、この遺伝子多型は「二日酔い遺伝子」などとも呼ばれています。ここでアルデヒドの有害性について述べていますが、ほとんどの研究はホルムアルデヒドで実験されています。

ホルムアルデヒドは遺伝子の設計図でもあるDNAを損傷させ、ガンの発症や糖尿病、神経変性疾患などの原因となり、老化を早めたりするため、生物は解毒する機能としてアルデヒド脱水素酵素を持っています。

酒からできるアセトアルデヒドはそれほど毒性も強くなく、非常に代謝されやすいためそれほど問題になることはないと思っています。

二日酔いになるほど飲まなければ、老化を進めることもないだろうという希望的観測を持っています。

原子と元素は何が違うのか

2024-05-04 10:33:55 | 化学
物質を徹底的に細かくしていくと、原子に到達します。この原子というのはいわば私の専門であり非常に身近なものですが、一般的にはあまり考えることもないでしょう。

この原子を大きさ順に並べた周期律表を見ると、いろいろ思い出して非常に懐かしくなります。原子に現われる性質によって分子が作られ、化学反応を起こすようになり体や身の回りのものになっていきます。

ですから原子がものの基本的な単位であるというのは確かなことです。私たちに馴染みのある性質が現れるのが原子という単位からで、眼に触れるすべての物は118種類の原子の組み合せなのです。

118種類の原子は、性質が似ているいくつかのグループに分けることができ、原子をグループ別にまとめたものが「周期律表」です。この周期を生み出すもとになっているのが、それぞれの原子を作っている電子の配置です。

原子の中では原子核を中心にして、いくつかの電子が何重にも取り囲んで回っています。一番外側の輪(最外郭)を回っている電子の数が、原子の科学的な性質に大きく関わっています。

一番外側の輪を回っている電子を「価電子」と呼び、その数が同じ原子同士は似たような化学的な性質をもつようになります。周期律表では縦の列に似ているものが並ぶように配置されているので、縦のグループにどのような原子があるかが重要です。

周期律表の縦の列を「族」と呼んでいます。周期律表の一番左の列に位置する水素やナトリウムなどが属する第1族は、価電子が1個しかなく電子は他の原子に移りたがります(プラスになりやすい)。

逆に右の方の列に位置するフッ素や塩素が属する第17族の原子は、電子があと1個入ってくれば一番外側の輪を満員にできるので、他の原子から電子を引っ張り込もうとします(マイナスになりやすい)。この様な原子たちが出会い、電子をやり取りすることで化学反応が起きます。

そのため周期律表を見るだけで、その原子がどのような化学的性質をもつかが分かるのです。ここまでずっと「原子」という言葉を使ってきましたが、周期律表では「元素」という言葉を使います。同じ水素や酸素の中にも兄弟のような原子がいる場合があります。

兄弟の関係にある原子は、陽子と電子の数は同じですが、中性子の数が異なります。原子といった場合、その兄弟は厳密に分けて考えるのですが、元素という場合には同じ家族の一員とみなします。

これが原子と元素の違いですが、実は私も本当には分かっていないのかもしれません。まあどちらを使っても構わない程度の違いといえるのかもしれません。

脳の誤った通説、脳の10%しか使っていない説

2024-05-03 10:32:21 | 健康・医療
近年脳科学は大いに進展し、ブラックボックスであった脳が徐々に分かってきたような気がします。

また心理学なども進み人の魂なども徐々に解明されているようです。この過程で誤った通説なども生まれてきましたので、ここではそういった物の解説記事を紹介します。

まず人が「左脳タイプか右脳タイプか」という発想は不朽の概念となっているようです。脳の左側部分は論理的、右側は創造的であると擬人化され、人の個性やスキルはどちら側の脳が支配的かによって決まるという考えです。

脳の左半球と右半球は対称的に配置されていますが、両者は非対称的に成長し機能することが分かっています。いずれも1000億個近いニューロンが識別可能な領域に位置しており、特定の役割のために調整されています。

2つの半球は協力して機能しますが、それは直観的に思っているような意味ではありません。例えば脳は目から入って来る視覚情報を脳の後方にある後頭葉を通じて処理します。しかし左半球は右の視野から来た情報を処理し、逆も同様です。

こうした非対称性にもかかわらず、通常の認知機能が左右どちらかの半球だけで起きていることを示す証拠は事実上存在しません。左右の大脳半球をつなぐ脳梁は、両半球間での広範なやりとりを可能にし、脳の活動が両者間で連携する手助けをしています。

左脳的/右脳的思考という考えは、便利な枠組みに思えるかもしれませんが、最終的には科学的事実と一致しません。分析的思考にたけた人もいれば、創作活動が得意な人もいるだろうが、こうした長所とどちらかの半球が支配的であることを確実に結びつけることはできません。

次が人間が脳の10%しか使っていないという浸透している通説です。心理学の世界では人間は「認知的倹約家」であるといわれています。これは合理的であったり現実に完全に一致する決断を下すことが、生き残りにとって必ずしも重要なことではないことを意味しています。

要するに人は何かを考えるときに、しばしば最も楽な道を選びます。この考えが人は脳の10%しか使っていないという発想に繋がったのかもしれません。しかしこの理論は、脳の「全能力」を使うことができないとは言っていません。

もし脳の10%しか使っていなければ、残りの90%に外傷性脳損傷が起きても脳の機能に影響しないことになります。現実には損傷を受けても機能を損なわない脳の部分は存在しません。何をしている時であっても、脳のすべての部分は常に活動しています。

たとえ睡眠中であっても脳のすべての部分が何らかの役割を担っており、そうやって人間が機能することを保証しています。

その他脳が100%使われている例は多いようですが、それでも脳というのはまだブラックボックスのような気がしています。

加熱式タバコはアルツハイマー病の進行に悪影響

2024-05-02 10:35:45 | 煙草
最近加熱式タバコのハームリダクション(害の低減)についての記事を見かけるようになりましたが、完全禁煙推奨のため加熱式煙草の問題点を出すよりは、どんな害が減るのかも出す必要があるような気がします。

今回も加熱式煙草の悪い点ですが、どうも科学的ではないような気もします。喫煙がアルツハイマー型認知症の発症や進行に影響を及ぼすことは知られていましたが、加熱式タバコについての新たな研究結果が発表されました。

認知症は高齢化社会での大きな問題であり、日本では65歳以上の認知症の患者数が2025年に約730万人、2060年には1100万人以上になるという推計もあります。

これは各年齢の認知症の危険因子となる有病率が、2012年から2060年までの間すっと20%上昇し続けると仮定した場合です。認知症にはアルツハイマー型認知症(約68%)、血管性認知症(約20%)、レビー小体型認知症(約4%)などがあります。

喫煙は認知症、特にアルツハイマー型認知症のリスク因子であり、喫煙者がアルツハイマー病になるリスクは2.3倍というような研究がこれまで数多く出され、受動喫煙も認知症リスクを高めることが分かっています。

広島大学などの研究グルーは、実験用マウスを使い、加熱式タバコの喫煙が脳へ及ぼす影響を調べた研究結果を発表しました。認知症は、症状が出る前に長い前駆期と呼ばれる期間があり、その間に徐々に病気が進行します。

研究グループは、アルツハイマー型認知症の前駆期を模倣した実験用のモデルマウスを用い、ピストンシリンダーによる簡易な加熱式煙草の喫煙装置を作って、加熱式タバコからのタバコ煙をマウスに長期間さらす(暴露する)実験系を作成しました。

マウスが加熱式タバコにさらされ、体内に吸引しているかどうかは、ニコチンの代謝物であるコチニンの濃度を測定しました。また実験後の解剖でタバコ煙暴露に特有な肺などの炎症性サイトカインなどの遺伝子の発現を調べることで評価しました。

加熱式タバコの喫煙の長期の影響を調べるため、合計80匹のマウスを暴露群と普通の空気群に分け、暴露群を16週(4か月、週5日間)タバコの煙にさらしました。

その結果、アルツハイマー病の前駆期に現われる大脳のアミロイドプラーク沈着や原因とされる神経の炎症、原因のひとつとされるミクログリアの活性化などについて、加熱式タバコの喫煙による影響は特にみられませんでした。

しかし加熱式煙草の喫煙にさらされたマウスの発現遺伝子に違いがあり、282個の遺伝子が変化していました。研究グループは、変化した遺伝子は、脳下垂体のホルモンや神経ペプチドホルモンを活性化したり、ガラニン受容体の活性化に関連しているとしています。

これまであまり知られていなかったアルツハイマー型認知症の非炎症系の経路に加熱式煙草が影響を及ぼしているのではないかと考えられるようです。

尿1滴で覚醒剤など薬物40種類を判別

2024-05-01 10:34:41 | 健康・医療
私が現役のころ、ラットやマウスの尿中の薬物排出量を測定して欲しいという依頼がありました。

ところが尿というのは当然ですが老廃物の宝庫で、無数と言える化合物を含んでいます。しかもこの老廃物のパターンは、同じ個体でもいつ採尿したかによって大きく異なり、うまくバックグラウンドを消去するのに非常に苦労した記憶があります。

近畿大学や愛知県警科学捜査研究所のグループが、尿1滴で覚醒剤など数種類以上の薬物を3分以内に特定できる手法を開発したと発表しました。

これまで薬物犯罪捜査で科捜研に送られた被害者や被疑者の尿を、分析化学に精通した人が鑑定する際に時間がかかり、簡易検査では疑陽性の誤った結果も出るという問題がありました。

このため逮捕から検察官送致のリミットである48時間以内にできず結果が出せないこともあり、被疑者が釈放されるといったこともあったようです。現在全国の警察で採用されている尿の薬物簡易検査は、化学構造が似た薬物群の推定に留まるうえ、疑陽性の誤判定が出ることもありました。

正確な物質特定のために用いられる質量分析は、試料を調整したり成分を分離したりするために熟練の技が必要で時間もかかりました。今回開発したものは、サンプルプレートに尿と試薬を混ぜて1滴たらしたものから、薬物を分析することができる装置です。

約40種類の薬物特有の情報を機械に覚えさせ、一致する物質を判別し、波形の大きさから検出濃度が分かる機能を備えています。数種類の薬物が含まれている尿や、遺体の尿でも鑑定が可能としています。

薬物分析の手順は、尿に内部標準溶液のジアゼパムD5溶液とエタノールの試薬を添加し、混合した溶液を鍼灸用の鍼につけます。続いて鍼に電圧をかけてイオン化し、真空状態でアルゴンガスと衝突させます。すると薬物構造に特有の断片が生じます。

これを断片情報と照らし合わせて何の物質かを特定する仕組みです。特定する薬剤の種類を増やすことも可能ですが、現在は薬物犯罪で主に使われている物質にターゲットを絞る工夫を凝らしています。

この装置は本体の幅が1メートルほどで、机におけるサイズで、将来的には現場に持ち込んで分析することも可能としています。

2023年版犯罪白書によると、大麻取締法違反の検挙者は2014年から増加傾向にあり、覚醒剤取締法違反では減少傾向にあるものの、使用罪の割合が過半数を超え、中学生の検挙例もあったようです。

こういった薬物犯罪を減らすうえでも、迅速な測定法が果たす役割は大きいような気がします。