★★★★

 

本を閉じ深い溜息が出た。

1992年、福岡県飯塚市で小学1年生の女児二人が登校中に何者かに連れ去られ殺害された。

犯人とされた久間三千年は逮捕・起訴され、死刑判決確定からわずか2年後、再審請求の準備中に死刑執行される。
冤罪を主張し続け、自白がない状態での刑執行のスピードに唖然。

「飯塚事件」の3年ほど前に起きた女児失踪事件が未解決だった事で警察に焦りがあったのではないのか。

警察が威信を掛け犯人逮捕に全力を注ぐ姿勢に共感する一方で、思い込み捜査や記憶の改ざんで冤罪が作られていく恐怖も感じた。

真相は未だ藪の中だ。

 

 

※2024年6月5日、福岡地裁は再審を認めない決定をした。同10日、弁護側が福岡高裁に即時抗告。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

島本理生、村田沙耶香、藤野可織、西加奈子、鈴木涼美、金原ひとみ、千早茜、朝吹真理子、エリイ、能町みね子、李琴峰、山下紘加、鳥飼茜、柴崎友香、宇佐見りん、藤原麻里菜、児玉雨子、17名の書き手が自らの身体に向き合って記したエッセイ集。

1人当たりのページ数は少ないが非常に濃い内容。

性について赤裸々に描かれている作品が多く、途中でなんどかエッセイである事の確認をしたほど。

性被害、性的搾取、妊娠出産など、女性で在るが故の苦悩がリアルで心がヒリヒリした。

物哀しさもあるが、自分の身体に真摯に向き合う姿勢に共感を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★

 

「ジンが願いをかなえてくれない」
「子供部屋おじさんはハグがしたい」
「屋上からは跳ぶしかない」
「ユキはひそかにときめきたい」
「妻への言葉が見つからない」
「パパは野球が下手すぎる」
独立した6話収録の短編集。

全話面白かった。

自分に自信を持てない女子高生、43歳・独身で実家住まいの中年男、通称『子供部屋おじさん』、ブラック企業で苦しむ男性社員、ときめきを求める主婦、想いを言葉にして伝えたい二人の男性、過去の後悔を引きずる夫。

どの物語の主人公も身近に感じられ、脳内でクリアに映像化された。

読後感の良い粒揃いの短編集。