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テスラが中国にて自動運転(FSD)導入のための規制をクリアしたとの報道。自律運転とロボタクシー実用化に向け大きく前進、中国での地位奪回に期待がかかる

テスラ

| テスラはこれまで中国市場ではFSDを使用できず、ライバルに対してディスアドバンテージを背負っていた |

ただしこれで「中国のライバルと同じ土俵」に立てるようになったに過ぎない

さて、昨日にはテスラCEO、イーロン・マスク氏が突如北京を訪問したことが話題となっていますが、その目的が「中国にてFSD(フル・セルフ・ドライビング=自律運転)を導入する」ためであったことが報じられています。

さらに本日、続報にて「今回の短い訪問において、テスラと中国のグーグルとも呼ばれるインターネット大手の百度(バイドゥ)との間で地図作成契約が締結され、テスラが中国で完全自動運転(FSD)を開始するための規制上の道をクリアした」というニュースが流れており、これはテスラの中国における展開史上もっとも大きく、そして同社の自動運転機能開発に関する最大のニュースだと言えるかもしれません。

テスラCEO、イーロン・マスクが急遽中国入り。これまで導入されていなかったFSD(自律運転)の最終認可のためと見られ、これが実現すれば大きく事情が変わる可能性も
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外国企業が中国で自動運転を導入するには様々な「障壁」をクリアせねばならない

中国には様々な規制が存在し、それが外国企業にとっての「障壁」ととして立ちはだかっていることが知られていますが、その規制にも「保安上」「自国の産業保護の観点から」など様々な側面が存在します。

もちろん中国における「自動運転」の導入についても同様に障壁が設けられ、まず中国の公道にて先進運転支援システム (ADAS) を動作させるには、最初に地図作成資格を取得する必要があるのですが、これは外国企業単独では取得できず、 外国企業はライセンスを保有する国内企業と提携する必要が生じます(少し前まで強制されていた、現地で生産を行う場合は、現地企業との合弁会社を設立する必要がある、という法律とよく似ている)。

そして今回テスラが協力関係を結んだバイドゥ(Baudu)はその資格を有する十数社のうちのひとつであり、今後テスラはバイドゥをパートナーとして自律運転プロジェクトを(中国において)推進してゆくこととなるわけですね。

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実際にはテスラとバイドゥとの提携は2020年からスタートしており、テスラはすでにバイドゥの作成した地図データを(中国で販売する)テスラ車へとインストールしていますが、中国の法律で義務付けられているように、テスラ車両が収集したすべての情報は現在、米国テキサスの本社には送信されず、中国国内のデータセンターにローカル情報として保管されています。※中国内にて(テスラが)収集したデータは機密扱いとなるので国外に持ち出せない

さらに今回の新しい提携内容によってテスラがバイドゥの持つ資格を活用し収集したデータを地図に反映させる(統合する)ことができるようになり、これは「テスラが重大な規制障壁を克服し、中国の公道で収集したデータへのアクセスが可能になった」という事実を意味するのにほかならず、中国内でのFSD提供、さらにロボタクシーの導入に向けて大きな前進を得たということに。

現在中国ではEVメーカーが過密状態となっていて、各社とも様々な戦略を打ち出していますが、そんな中で消費者に対して強く訴求できるのが「自律運転」だと言われます。

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テスラは中国での「ポジションの奪還」「新たな市場の創出」に向けて歩を進める

日米では「自律運転は自動車メーカーが勝手に推し進めているもので、消費者の殆どがそれを望んでいない」という状況ではあるものの、テクノロジーに対する関心が強い中国、そして自動車を「快適で安楽、ラグジュアリーな移動手段」として捉える傾向がある中国市場ではセールス上の武器になるとされ、しかし今までテスラは規制の関係もあり中国市場ではこれを提供できなかったわけですね。

ただし今回、地図サービスのライセンス取得によって、テスラは中国の路上にてFSDソフトウェアを合法的に展開できるようになり、自社の車両が道路レイアウト、交通標識、近隣の構造物に関するデータを収集し蓄積することが可能となっていますが、今後中国内での自動運転実現に向けてそれらデータの解析(と地図への統合、それによるFSD「プログラムの作成)を行う必要が生じます。

テスラはこのデータ解析を行うため、収集したデータを海外(テスラの本社)に転送したいと考えているものの、現時点ではその認証を得ることができたのかどうかは不明であり(簡単ではないだろう)、許可を取得できなければ中国内にてその業務を行うことになりそうです。

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参考までに、テスラは先日「(安価な)モデル2の開発を中止し、かわりに自動運転とロボタクシーに集中するという戦略を強化して人員配置を見直した」と報じられていますが、その伏線が今回の「中国でのSFD導入、ひいてはロボタクシー導入」につながってくるものと思われ、今後に期待したいところでもありますね。

ただ、注意を要するのは「今日明日にでも」FSDの導入が可能となるわけではないこと、自律運転は多くの中国のライバルが導入済みでありテスラのみの武器とはなりえないこと、そしてこれによって急激に販売台数を回復できるわけではないこと。

「モデル2」を捨て自動運転とロボタクシーに特化するという事実、そしてこれまでのイーロン・マスクCEOの発言からするに、テスラは今後「自動車メーカー」としてではなく「ソフトウエア企業」としての性質を強めることとなり、そのソフトウエアを他社に販売することで収益を得る計画を持っているのだと考えられ、しかしその道もまた平坦ではないのかもしれません(競合が多い)。

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参照:Bloomberg

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