Alpha-1 Wrestling Here We Go Again 4/14/2019
ドッグ・カラーマッチ
イーサン・ペイジ対マクスウェル・ジェイコブ・フリードマン

 

小悪党ヒール道を歩むMJFに、かつてその道を歩んできたイーサンがやりたい様にやらせつつも、潰す所は潰す形で進める。チェーン、拳、煽りの3つを徹底的に使いつつも、それだけで通すのは中々厳しいものがあり、ステープラーに椅子、ドアなどを活用。前半に関しては悪態をつくMJFを、イーサンがボコボコにする流れで、熱量も凄まじかったが、後半はスローになっていくことも相まって少しトーンダウン。凶器や流血で何とか繋ぎ止めるものの、終盤を纏める際の、MJFの型がまだ定まっていない事もあり、熱を持続出来なかったのが要因。メジャーのステージならブッキングで押さえつけ、フォローもどんどん入れる所が、イーサンの団体とはいえインディなのでイーサンもMJFに任せていた。それ自体は経験を積んでいく場なので問題はない。フィニッシュは、サマーソルトアタックでドアを貫通したフィニッシュ。首輪のチェーンが外れるというネタを使うのは理解出来るものの、もう少しシンプルにインパクトが高い形の方が、箔が付いたはず。
まだまだ発展途上ではあるものの、それでも賭けたくなる程のキャラクターとそれに沿った立ち振る舞いはやはり才気に満ち溢れている。MJFの才能を再確認出来る一戦。
好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

Alpha-1 Wrestling MatRats 2 9/18/2016
Alpha-1 Wrestlingアルファ・メイル王座戦-ラスト・マン・スタンディングマッチ
ハイディ・ラブレス(c)(ルビー・ライオット)対コービー・ダースト

 

長きに渡る抗争もこれで決着。エニウェア戦を経てのラストマン戦という事で全編ハードヒット&ハードコア。性差関係なしの無慈悲なしばき合い。各種凶器でこれでもかと相手を痛めつけながら、過去の試合を彷彿とさせるスポットもサラッと入れる。破壊力ではコービーの方が勝るのは仕方なく、ハイディには実際椅子攻撃の物足りなさ等は感じてしまうものの、それを打ち消してしまうハードワークが素晴らしい。良い意味で性差を感じさせない対等なライバル関係になっているのが印象的。会場の盛り上がりも凄まじくこの試合を後押し。そのハイディの気迫に応えるコービーもラダーからのパイルドライバー・オン・ザ・テーブルといった衝撃のスポットを含め、見事な潰しっぷりを見せた。最初から最後まで勢いが落ちず、ピュア・ヴァイオレンスで貫き通した死闘。WWEはこれを見れば、彼女の実力にもっと気づくはず。好勝負。
評価:****

C4 Snowpiercer 1/17/2020
C4王座戦
ダニエル・ガルシア(c)対イービル・ウノ

ガルシアのハードヒットにウノがラフとヒールプレイを織り交ぜる形。場外戦から、レフェリーへの攻撃にハードコアと密度の濃い攻防を展開。ウノのスワントーンを膝剣山で受けた時に痛めた脚に対して、すぐさま脚攻めを行うとネタ要素の強いシーンも効果的に活用し、試合の幅を広げたのも良かった。会場の盛り上がりも凄まじく、試合を後押し。ローカル・インディーならではのベタな内容ではあるが、ベタを侮ってはいけない。そこに2人のハードワークとハードコアを加えれば確実な内容に仕上がった。
好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

WWE NXT UK #127 1/14/2021
NXT UK王座戦
ウォルター(c)対A-キッド

 

関節技ならまだチャンスを作れるとそれに賭けるA-キッドに対し、手を焼きつつもチョップで流れを変えるウォルター。そこからドミネイトに入る形。アンダードッグ性は持つA-キッドだが、飄々としたタイプではあるので、ネチネチと削りに行かず、テンポの良さを守った支配ターンだったのは正解。ウォルターの猛攻を受けたA-キッドだが、ロープを使ったドラゴンスクリューをきっかけに、アームロックや三角締めで対抗。打撃もいつもよりもキレが良かったのもポイント。破壊者ウォルター対若き奇術師A-キッド、想像よりも更に仕上がっていた内容。パッケージ化出来ていた試合である。この試合を観て何を思ったか。ウォルターが全米に名を轟かす事となったザック・セイバーJr.との試合を彷彿とさせる内容である。ザック程の完成度はなく、仕留めるパターンが複数かつ固定化されていない所はあるけれども、苛烈なドミネイトに屈服しそうになるも、何度やられても立ち上がり、打撃を散らしながら、関節技で一本狙いというのはまさにウォルター対ザック。ザックの獲得が不可能なら、自前で作ってしまえ。その白羽の矢が立ったAキッドが見事に役割を果たした一戦。イリア戦と共に数え歌として看板化出来る一戦です。試合時間の短さは全く気にならない濃密な好勝負。
評価:****

全体評価:7

 

WWE NXT UK #126 1/7/2021
NXTクルーザー級王座戦
ジョーダン・デヴリン(c)対ベン・カーター

2020年のインディー界でも屈指のトッププロスペクトだったベンジャミン・カーター改めベン・カーターがWWEデビュー。そのキレのある動き、飛び技はやはり才気を感じる。しかしそれ以外はまだまだ発展途上なので、そこはデヴリンが手綱を握りながら調整。彼もまだこんなものではないものの、カーターの勢いに押され、少し本調子を出せたか。無駄を省き、カーターのシンデレラボーイぶりを活かし、最後はデヴリンが横綱相撲で幕引き。
正直マーク・アンドリュースでもフラッシュ・モルガン・ウェブスターでも出来る役回りではあり、コロナの影響がなければまだWWEにはいなかったかとは思うが、Speaking Out等の影響で駒不足が顕著なNXT UKにおいて、救世主となって欲しい存在のカーター。デビュー戦は100点満点の活躍であった。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

WWE NXT UK #119 11/19/2020
NXT UK女子王座戦-フォールズ・カウント・エニウェアマッチ
ケイ・リー・レイ(c)対パイパー・ニヴェン

宿命のライバル同士。このカードはスコットランドのICWで、クイーン・オブ・インサニティーマッチというデスマッチも戦った間柄ではあるが、WWEなのでKLRのハードコア巧者ぶりは抑え目、ハードバンプは封印。のらりくらりとしたヒール王者として戦う。その分パイパーがWWEに入った事により、洗練されていたので、攻めの比率が増えても、以前よりも見せ場を作れていた。巨体の割にパワフルさがないのは改善出来てはいないものの、凶器攻撃で補っていてまとまりを出していた。平均的良試合。
評価:***1/4


 

Impact Wrestling Hard To Kill 2021 1/16/2021

ノックアウツタッグ新王者決定トーナメント決勝
ジェシカ・ハヴォック&ネヴェア対ファイアー・アンド・フレイヴァ(キエラ・ホーガン&ターシャ・スティールズ)

 

強力なジェシカに対して、小回りを効かせながら対応するFNF。この組み合わせで出来る限界は感じたものの、俊敏なFNFと一発の重みで決めるジェシカとネヴェアという形を通して、やれる事はやった内容。FNFの小気味良いタッグワークは、磨けばもっと武器になるだろう。ジェシカのパワーやネヴェアのデイヴ・クリストムーブ等見所はある。平均レベル。
評価:***

Xディビジョン王座戦-トリプル・スレットマッチ
マニック(c)対ロヒット・ラジュ対クリス・ベイ

 

序盤はそつなく3ウェイをこなしていたが、マニックの剥がされたマスクの中から、ジョーカー風メイクのTJPが現れてからは、一気にギアチェンジ。乗りに乗る選手揃いのXディビジョンらしいスピーディーな3ウェイ。打ち合いだけではない要素で3ウェイらしさを打ち出していたのは良い。ラジュが上手くバランサーとして振る舞っていて、TJPとベイはキレで魅せる。余り期待はしていなかったものの、尻上がりに良くなっていき、勢いに乗ったままフィニッシュ。中締めとしては十分な出来。中々良い試合。
評価:***1/2



バーブドワイヤー・マサカー
サミ・キャラハン対エディ・エドワーズ

 

カリビアン・バーブドワイヤー・デスマッチさながらに有刺鉄線を巻いたロープや有刺鉄線ボード、ケージ、椅子や竹刀、バット等各種有刺鉄線形凶器が公認凶器となっている。とはいえ有刺鉄線なので、他の凶器を入れたくなる所ではあるが、普段、通常形式で勝負しているこの2人なので、手広く有刺鉄線系凶器の数々を使いつつ、流血を添えながら、デスマッチ色を強める。有刺鉄線をこれでもかと使い、ハードコア以上である事は示しつつも、普段デスマッチをやらない団体、しかもPPVの試合である事を考慮し、アングラになり過ぎない配慮も加えているのが憎い。スローペースでFREEDOMS、GCWやICWがやっている様なデスマッチからすると物量は足りないかもしれないが、有刺鉄線の殺傷力を最大限加える工夫はしているのは見事。

狂乱キャラを身につけたとはいえ、デスマッチよりハードコア色が強いエディ・エドワーズがいるので比較的スマートになる中、上手くタクトを握ったのはサミ。やはりハードコア/デスマッチと言えばサミ・キャラハン。まず表情の魅せ方が豊富。細かな点だが、スローペースのデスマッチを選んだ時点でこれが上手くないと質は上がっていかない。ダメージ表現や凶器を使う前、攻勢に出る点でも様々な表現を使っていて巧み。更にゲーマーであるサミらしい有刺鉄線を巻いた任天堂64のコントローラーの使用やカクタス・ジャックオマージュの自殺エルボーを使う所まで、手数は決して多くなくても、無駄がなく全て効果的。久しぶりにサミの本領をインパクトで見る事が出来た。テッサ戦が1年前のこの大会なので本当1年ぶり。この試合のサミは流石の一言。というかこれ位は簡単にやってきた選手である。

決して流行りを追った内容ではないが、この試合に求められる内容は全て注ぎ込んでいた。現在のインパクト・レスリングにおけるアンダーテイカー、エディ・エドワーズとHHHであるサミ・キャラハン。団体の古参となった2人が、ケニー・オメガ襲来という目玉の前にしっかりと大会を締めた。サミ・キャラハンファンは見逃せない内容。好勝負。
評価:****

“BULLET CLUB”ケニー・オメガ&グッド・ブラザーズ(カール・アンダーソン&ドク・ギャローズ)(w/ドン・キャリス)対リッチ・スワン、クリス・セイビン&ムース
 

ケニー&アンギャロはBULLET CLUBの名前とロゴが入ったコスチュームを着用。ギャローズのコスチュームには、The ClubやOCのロゴも入っている。
まず大会前にアレックス・シェリーが欠場し、代打に選ばれたのはムース。先日までスワンのパートナー、ウィリー・マックと抗争していて、スワンのインパクト世界王座を狙うアピールもしていたが、オープニングから大会中も、この試合では団体を背負って闘うというプロモをこれでもかと加えて、半ば強引ではあるがフェイスターンに踏み切る。確かにシェリーが入ればMCMGの連携が使えて、個々としてもかなりの見せ場を作れるが、スワンがシェリーの代わりにセイビンとの連携役に入り、強力な飛び道具としてムースが入った事により、パワーバランスが結果的に拮抗したのは不幸中の幸い。巨漢ギャローズにも対抗出来る体躯を持ち、ケニーと対峙させても一定の内容を生み出せる。特大のスパニッシュフライを放つ等大きな見せ場を作り、ムース史上でも上位の活躍を見せていた。

スワン対ケニーの対戦は、良い内容ではあるが小出しにする必要がある中で、この試合を裏回ししていたのがセイビンとアンダーソン。セイビンは主に受け役、繋ぎ役を担い、黒子に徹するかと思いきや、クレイドル・ショックでケニーを追い詰めたシーンは熱かった。

そしてアンダーソンは、支配ターンでは温存されたケニーの代わりに、2段支配の舵取りを担い、ケニーとギャローズを操縦。それだけならWWEでもやっていたが、個々のパートでも見せ場を作っていて、これは新日本の時のアンダーソンが戻って来そうな雰囲気有。伸び伸びやっていて好感。

個々が活躍するパートの振り分けのバランス、そしてそのシーンで最大限の活躍を見せる。トリオとしての完成度が素晴らしい。それだけではなく、華々しく参戦したAEW世界王者ケニーをインパクト軍が様々な手を駆使してギリギリまで追い詰めていく終盤は、熱量も最高潮。最後こそ支配的な雰囲気を出したものの、決して一方的ではなく終始スリリングな接戦だったのが高ポイント。演劇に走らずアクションペースの方が、このメンバーに合っていた。団体抗争軍団抗争の初戦としては申し分なさ過ぎる内容。PPVは勿論、通常放送が見たくなる作り方は憎い。来たるスワンやインパクト勢対ケニー、インパクト勢対AEW勢のクロスオーバーがますます楽しみになる一戦でした。
文句無しに好勝負。
評価:****1/4
 

 

全体評価:8.5

ROH Final Battle 2020 12/18/2020

 

ザ・キングダム(マット・テイヴェン&マイク・ベネット)対ザ・ライチェアス(ヴィンセント&ベイトマン)(w/ヴィタ・ヴォンスター)
 

テイヴェンの窮地にWWEをリリースされフリーエージェントになっていた盟友ベネットが登場し、憎きライチェアスに宣戦布告したのがこの試合。軸としてはファストペースのタッグマッチだが、連携を終えた後にパンチ連打を加えるテイヴェンは見事。それを入れるだけでグラッジマッチなのだと軽くでも表現出来る。これがこの間のドーム大会で足らなかった要素。ノーDQではないので過激化が出来ない所を、細かなタッチワークで埋める形。久しぶりの再結成となるキングダムは、以前組んでいた時と同等それ以上の連携を見せる。以前より個々の力量が上がっているのも心強く、今のROHなら確実にタッグ王者、トップとして回せるレベル。その様なキングダムに対しても、臆する事なく連携で対抗出来ていたライチェアスも嬉しい誤算。個々の力量では劣るけれども、連携技も多く、不気味なキャラクターも立っている。ウォーキングデッドのエゼキエルの様なヴィンセント、ブロディ・キングの元相方ベイトマンも活き活きしていて、これならポジションを確実に出来るだろう。どこかでクオリティが落ちるだろうと思っていたが、最後まで何とか勢いを持続してフィニッシュ。試合後の襲撃シーンも含めて見応え有。この内容なら抗争継続は全然有。中々良い試合。
評価:***1/2

ROH世界TV王座戦
ドラゴン・リー(c)対トニー・デッペン

 

プレショーの4ウェイで勝ち上がったデッペンが、フリーエージェントのままで王座戦に登場。縁もゆかりもないデッペンとの対戦ではあるものの、リーは平常運転。平常運転とはいえ、スーパーアスリートハイパーハードヒッティングフルスロットルモードは変わらない。要は激しくスピーディーで過激技も厭わない物量押しファイトではあるが、デッペンもこの土俵に乗り、ティタンや高橋ヒロム並に真っ向から立ち向かった。コミカルな展開やヒールでスカす事も出来るのがデッペンではあるが、新日本/CMLL的ハードなスタイルであっても難なく対応出来る懐の深さ、地力の高さが堪能出来る内容。単調といえば単調だが、内容は詰まっている。インディーを超えてこのクラスを相手にしても全然やれるのかと再認識。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

ROHピュア王座戦
ジョナサン・グレシャム(c)対フリップ・ゴードン

フリップにピュアルールで挑ませるなんて無謀だと思った戦前の予想通りの内容。脚攻め等やることはやっていても形をつけるのがやっとで、逆に飛び技師であるフリップの良さをピュアルールが殺した格好となった。餅は餅屋。ロープブレイクの使い方も理に適っておらず、結局攻めも受けもグレシャムが孤軍奮闘していた内容。今のグレシャムの充実度、新ユニットThe Foundationを立ち上げて勢いに乗っている事を考えれば、この大一番ではもう少しピュアルールに精通した選手を当てたかった。後長すぎる。軍団長マーティを失ったフリップはどこへ行く。平均レベル。
評価:***

ROH世界王座戦
ルーシュ(c)対ブロディ・キング

 

ほぼ捨てられかけている新日本に媚びたマッチメイクなのは置いておいて、ラフファイトが得意なルーシュの相手としては申し分なし。ノーDQではないものの凶器攻撃や煽りを交えながら支配するルーシュに対して、ブロディは大技連発で対抗。始めはトペを使ったものの、それ以外はビッグマンとして振る舞うことに集中していたのは良く、大振りの打撃も映える。ボスであるマーティを失っても、シングルプレイヤーとして戦力化は出来そうな雰囲気。大味ながらアクション数は一定以上あり、粗が出ない試合時間試合構成になっていたのも〇。最後はルーシュとドラゴン・リーの父親であるベスティア・デル・リングが介入し椅子攻撃一閃。メキシコマットに向けてはニュースになるが、米国や日本では全く話題にならないサプライズなのは苦しい。ルーシュはスターではあるが、相手を選ぶのと、WWEは勿論、AEWやインパクトを追撃するカードとしては弱い。王座に相応しいとは思うが、その分ミッドカードやタッグ戦線で、ルーシュ起用を補う核が欲しい。エグゼイヴィアー、若きオースチン・エリーズ、森嶋猛やジェリー・リンの王者時代はその他のメンバーが豪華で充実していたからこそ冒険が出来ていたが、そうは言っていられない崖っぷちに立たされているROHに、かつての様な事が出来るのか。ルーシュとドラゴン・リーを登用し、新日本&CMLLとのパイプを残すのは理解出来るが、特に新日本が振り向いてくれるのを待っているだけでは厳しい。普通のインディーならそれでも良いけれども、一時は北米2番手にのし上がったROHでは、それでは許されないだろう。試合としてはまあまあ良い試合レベル。
評価:***1/2

全体評価:7.5