2025年3月28日金曜日

Thelonious Monk Quartet, John Coltrane / At Carnegie Hall


 
 このアルバムはアメリカの国営放送局の Voice of America の国際放送サービス部門が残していたオープン・リール・テープの音源をデジタル変換作業していた際に発見されたものです。Monk が Bud Powell のヘロンイン所持を庇ってキャバレーカードを没収されたのが1951年、その後NYエリアでの演奏活動が出来ずにいたが、マネージャーの Harry Colomby と ニカ夫人の尽力で1957年に奪回し、NYでの活動を再開し、Coltrane と1957年7月18日から12月26日までマンハッタンの Five Spot で活動することになります。それが恐ろしく音の悪い未発表音源の The Thelonious Monk Quartet Featuring John Coltrane / Live at the Five Spot Discovery! (1957) で、そのほか、同年の4月6月7月で、二人のセッションが録音されているのが、Thelonious Monk With John Coltrane (1957-1958)Thelonious Monk Septet / Monk's Music (1957) になります(私の所持音源では)
 Coltrane も有名なヘロインのジャンキーで、1957年にマイルス・バンドを1回クビになっています。1957年のはじめ、Café Bohemia 出演の時、Coltrane が全く無反応だったのにマイルスは頭をひっぱたき、腹にパンチをいれ仲裁に入ったのが Monk だったとも。自身は薬物はやっていなくても、色々な事件の影に薬物があり、この時代のアメリカは映画のような世界だったようです。ニカ男爵夫人の著書で、Monk の3つの願いは、1.音楽的に成功すること、2.幸せな家庭をもつこと 3.君のようなクレイジーな友人をもつこと。ニカ夫人以外の友達もクレイジーだったようですが。


 さて、この録音に戻ります。1957年11月にNYの Carnegie Hall で行われたライブ録音です。レギュラー出演の Five Spot とは別の場所でのライブ録音となっています。【Early Show】は、PM 8:30 ですから、遅い開始となります。このアルバムに収録は、Monk's Mood、Evidence、Crepuscule With Nellie、Nutty、Epistrophy の5曲で、1時間に満たないので、おそらく録音全てが公開されてはいないと思うので、ほとぼり冷めた頃に完全版が発売されるのでしょう。多分未だ出ていないと思います。音は結構良いのですが不満は若干あり、最後に書いときます。Monk's Mood は、最初は長めのピアノソロから始まり、 Coltrane が吹きまくる、ほぼデュオで始まります。ベースが弓弾きで控えめに入っていますがドラムは休みで幻想的な曲になっていて、まさにショーが始まる演出もばっちりです。Evidence では、ドラムも入ったキッチリとしたコンボ演奏です。Coltrane が相変わらず吹きまくるので、Monk の独特の和音と入れるタイミングは誇張しすぎず、調和のとれたバッキング。でもピアノソロ部分では思いっきり、あのタイミングを入れてくるので、それに合わせ Coltrane が単音を入れてきますが、Monk に少し遅れて入れてくる掛け合いが何とも楽しいです。Crepuscule With Nellie では、個人技よりもバンド・アンサンブルとしてモンク節の効いた演奏になっています。盛り上がってきたところで、Nutty です。ドラムの 
Shadow Wilson が、ドシャっとした音ですが上手い方だと、ここで気づきます。いつもの
Roy Haynes だと、もう少し四角い感じでリズムキープに徹する感じと対照的で、次のEpistrophy だと、もっと顕著に違います。シンバル・ワークとか曲の随所で細かい芸があります。でも演奏的には上手すぎて、どこか、ぎこちない感じがするような、いつもの演奏も良いもんなんだなと、聴きながら思ってしまいました。
 CDだと盤は変わりませんが【Late Show】は午前0時スタートです。電車で帰るという感覚が無いのでしょう、NYの遊び方は時間の感覚が日本と異なるようで遅すぎです。Bye-Ya 正統派なバップで、ここでもドラムのパーカッションが居るかのような細かな技、Coltrane の流れ出る音符に、Monk の感性が一つの音楽を創り出し説得力があります。と思っていたら次の Sweet And Lovely の朗々とした演奏もまた別の趣。長めの緩やかな演奏を静かに聴いていたら、途中からテンポ・アップにハッとさせられるのも面白い仕掛けかなと思います。ここら辺は Coltrane が居るならではの構成ではないでしょうか。長めの9分34秒です。そしてBlue Monk は、お馴染みのモンク・ナンバー。演奏し慣れている感じが十分に伝わる軽々した演奏で、テーマとソロ部分も変わったことはせずに、きっちりと演奏しきっていて安定感があります。最後は Early Show のラストでもあった、Epistrophy で締めくくりです。同じ曲でありますが Early Show はパーカッシブなイントロであったのに対し、Late Show では、アーシーなアレンジです。このタイプの演奏は Monk では珍しい気がします。ピアノソロに入ったところの2分24秒でフェイド・アウトはもったいない。あと30秒ぐらいは欲しかったです。🎶
 聴き終わりましたが、残念なことは、本CDは、PCでは普通に再生できない東芝EMIのセキュアCDであったこと。PCでの再生用のプログラムも動かず、私のPCでは再生できませんでしたが、幸いこのアルバムは別の方法で音源が入手できました。しかしこのほかに、Ben Harper / Both Of The Gun, Sony Music からの 小沼ようすけ / Jazz'n' Pop なんかは、全く歯が立ちませんので、盤はあるのに1回も聴けない状態です。よく見て買えよって話しですが、この盤を購入した人だけ「音質は落ちるけどストリーミングできるIDを入れておく」とかの何か救済措置はできないもんなのか。著作権は守らなければならないのでコピープロテクトは良いとしても、機器によっては全く再生できず、データを見ることもできないでリスナーを狭めるような技術の片手落ちのような音源の作り方はどうなのかな、日本盤を買わなければ良かったな、と思ってしまいます。残念
piano : Thelonious Monk
tenor sax : John Coltrane
bass : Ahmed Abdul-Malik
drums : Shadow Wilson

producer (concert) : Kenneth Lee Karpe
recorded by, engineer (Voice Of America) : Harry Hochberg
art direction, design : Burton Yount
ilustration (cover) : Felix Sockwell

recorded on November 29, 1957 by Voice of America at Carnegie Hall, New York City.
This concert was produced for the benefit of the Morningside Community Center.
The original recordings were engineered by Voice of America.
Tape preserved and provided from the collections of the Library of Congress.
24-bit/192 kHz digital transfer from the original 15 ips mono analog tape,
Sonic Restoration, Forensic Editing™, and Pre-Mastering by Transfer Master.

【Early Show PM8:30】
1. Monk's Mood / Thelonious Monk
2. Evidence / Thelonious Monk
3. Crepuscule With Nellie / Thelonious Monk
4. Nutty / Thelonious Monk
5. Epistrophy / Kenny Clarke, Thelonious Monk
【Late Show AM0:00】
6. Bye-Ya / Thelonious Monk
7. Sweet And Lovely / Charles N. Daniels, Gus Arnheim, Harry Tobias
8. Blue Monk / Thelonious Monk
9. Epistrophy (Incomplete) / Kenny Clarke, Thelonious Monk


▶ Nutty



  

2025年3月27日木曜日

Dulfer / Hyper Beat


 1995年の発売当時は、トヨタのRV4のCMで、視覚的にも音的にも情報が入ってきました。そしてフュージョン大好き人間だったので、このタイプの音楽もカッコ良いと思ったことは思いました。しかし何か違うものを感じて、当時購入することはなく、おそらく10年以上経ってから、中古でこの盤を見つけて手にしたはずなのでリアル・タイムでの購入ではありませんでした。そう思い返すと1995年グ以来の時は、バス釣りにハマっていて、車の購入にトヨタのRV4もどうしようかと思いながらも、ホンダのCRVを購入、休みの日には夜明け前に起きて、爆音で音楽を聴きながらバス釣りに行っていたことを思いだします。


 このアルバムの作者は Hans Dulfer で、1940年オランダ生まれ。フュージョン・コンテンポラリー系、娘さんの Candy Dulfer もコンテンポラリー系のジャズで有名なサックス奏者です。他のアルバムについて聴いたことはありませんが、ファンクやパンク・ロックの色合いの濃い音楽性があり、自身のアルバム以外にも様々なセッションに参加しているようです。


 本CDは、日本のみの独自編集版のEPで、Hyper Beat の3種類のリミックスと、Mickey Mouthを含む4曲を収録しています。Hyper Beat ついては、1曲目は、1930年代のスイング・ジャズのリフを使用して、ラップを取り入れながらの印象の濃いサックスのリフを繰り返す、ジャズ・ヒップホップ。2曲目は、重めのリズムに歪みかかったベース、ホーハードロックタイプのドラム、ラップ無し。3曲目 Double Dutch は、テクノっぽいリズムにのせて、打ち込みかサンプリングした切れ目の無いベース・リフを連続させる手法で、1、2曲目目の Hyper Beat には無かったアドリブを入れています。Grand Slam は、完全にプログラミングで作成したヒップホップのトラックにのせて、速いリフで軽快な楽曲。Hyper Beat に次いで色々なシーンで使い勝手が良さそうな楽曲。Valley People も、プログラミングで作成したヒップホップのトラックに、ダル目のサックスでのアドリブをのせる手法ですが、ねちっこいサックスにしています。ラップは味付けに使っています。Mickey Mouth は有名なので、このポップなリフは聴いたこともある人が多いはず。オジサン、オバサンはこれで踊り狂った人も結構いるでしょう。派手でキャッチーでポップ、ラップ愛好者にも受け入れられるセンス抜群の楽曲です。最後の、Hyperbeat (Rav4 Mix) は、基本は1曲目と同じなのですが、ラップでしつこく「Rav4」を連呼するトヨタの手先のような楽曲になっています。
 全曲レビューはする気が無かったのですが、懐かし過ぎて書いちゃいました。お祭り騒ぎ全開で、これはこれで楽しいです。昔のスイング・ジャズの要素もしっかり入れての近代的な音への展開・・・といっても1995年ですから約30年前ですか🎶

1995 EMI Music Holland

1. Hyperbeat (Single Version)
2. Hyperbeat (Ace Mix) 
3. Double Dutch
4. Grand Slam
5. Valley People
6. Mickey Mouth
7. Hyperbeat (Rav4 Mix) 





  

2025年3月26日水曜日

Bob Marly / Volume Two- Riding High


 Bob Marly(ボブ・マーレイ)のベスト盤シリーズの2枚目。このシリーズ「The Collection」という往年のアーチストのベスト盤を、かなりいい加減な作りで販売しているシリーズでタイトルのつけ方が自由奔放です。
 よく見てください。変なことに気づきます。3だけアラビア数字だったり、副題の Stir It Up が one と four に使われていたりしてます。曲名がアルバム名にもなっているかと思いきや、1,4番目のアルバムは Stir It Up ですが、4番目のアルバムに Stir It Up は収録されていません・・ジャケットのデザインをアルバイトに任せていたらこうなったのでしょうか。当然、詳細な解説のあるライナーノーツが入っていることは無く、裏面に曲が書いてあるだけのペラペラの紙がだけです。ただ、あっさりとした作りですが海賊版では無いようで、版権切れの楽曲を集めた廉価版と思われます。そんな廉価盤なので、音が悪いとか、選曲がどうだとかは気にせず、ボブ・マーレイの Put It Out ってどんな曲だっけか?と思った時に聴ければ良いわけで購入したことに背徳感、後悔、不満はありません。

ボブ・マーレイ博物館

 さて、ボブ・マーレイと言えばジャマイカ。ジャマイカと言えばアメリカ大陸の中央に位置してカリブ海にある島国です。欧米人が美しいカリブ海を求めて訪れるリゾート地としても人気があり、手つかずの山や海など大自然を体験できるアクティビティも豊富です。 公用語は英語、年間を通じて20℃以上と温暖な気候です。首都はキングストンで、ボブ・マーレイ博物館は観光名所になっているようです。
 ただレゲエとリゾートとしての明るい文化の反面、2022年の世界の殺人発生率 国際比較統計・ランキングでは、ジャマイカは2位の53.11件/10万人、で1位はタークス・カイコス諸島の76.34件/10万人、3位は南アフリカの43.72件/10万人となっていて、1959年にはイギリスから自治権を獲得してから65年が経過しているのに、治安に不安が残るようです。


 Bob Marly の活動は Bob Marley And The Wailers でバンドで活動していました。The Wailers(ウェイラーズ)は、1963年に Peter Tosh、Bob Marle、Bunny Wailer の3人で結成したバンドで Bunny Wailer の名前を冠していますが、1974年に Peter Tosh、Bunny Wailer は脱退してしまい本人不在のまま、Bob Marley And The Wailers にバンド名を改めて、新たなメンバーでツアー活動を開始しています。
 Bob Marley And The Wailers は、ラスタファリ運動の思想を背景として音楽・思想を語り続けています。ラスタファリ運動とは、1930年代にジャマイカの労働者階級と農民を中心にして発生した宗教的思想運動で、宗教ではなく一握りのエリートによって支配され、社会的に抑圧されたジャマイカ市民による抵抗運動です。
 アルバムのレビューは、今更良いですかね🎶

1. Riding High
2. Mellow Moods
3. There She Goes
4. Put It Out
5. Fussing And Fighting
6. Duppy Conqueror
7. Try Me
8. No Sympathy
9. Treat You Right
10. Chances Are
11. Hammer
12. You Can't Do That To Me
13. Touch Me
14. How Many Times





  

2025年3月25日火曜日

Jimmy Smith & Wes Montgomery / Jimmy & Wes: The Dynamic Duo

 

 私目的のアルバムに目星をつけて購入することは少なく、適当に中古屋で見て購入していくスタイルなので、購入したものの1回聴いて、こんなものかと思って数年聴かないアルバムも多数あります。ウェスに関して言えば適当に購入したものが、当たりを引いていないので、意外とつまらない録音が多いのだなと言う感覚でした。適当ではない購入での一番のお気に入りは死後の発掘盤である Echoes Of Indiana Avenue (2012) が一番のお気に入りで、他つまらない作品については私の先入観なので記述はあえてしません。
 このアルバムは存在を知ってから、購入リストに入れていて中古屋で先日巡り合えたので、おっ発見 と思って手に入れました。暫く家で寝かせてから、いつもの音楽好きの集う「おでんバー」に持って行き開封しました。出だしはキレも良くカッコ良いビッグ・バンドをバックに、ご機嫌な演奏であることを確認していましたので期待しながらのご対面です。が、隣に座っていた常連の若い女子カメラマンと話しが盛り上がり、グイグイと飲んでしまったので、実は2曲目以降は、ほぼ内容を覚えておりません。


 しかし1曲目はとにかく好印象。帰ってきてから酒無しで聴いてみると・・・やっぱり好みの音で、素晴らしいアルバムでした。録音は1966年9月の21、23、28日の3回に分けての Van Gelder Studio での録音。1,2,4 曲目は Oliver Nelson のアレンジによるビッグ・バンド、3, 5曲目は、オルガン、ギター、ドラム、パーカッションになります。
 記憶通り、Down By The Riverside の突っ走りっぷりが、最初から勢いがあります。Oliver Nelson のビッグ・バンドは、鋭い切れ込み方のあるアレンジで迫力があり、Jimmy & Wes の二人のソリストが登場するまでを、大いに盛り上げてくれます。テーマが終わるとホーン部隊はスッと引いて Jimmy Smith 登場です。最初から飛ばし過ぎてはいませんが段々と熱が入ってくる感じです。Wes Montgomery のバッキングも四つのカッティングではなく、単音、オクターブ奏法を混ぜながらの歯切れの良いコード弾き。Jimmy Smith の頂点の盛り上がりでは細かなリズムでハモンドに絡み、ギターソロにつなげます。ソロ分では驚異的なオクターブ奏法のフレーズを連発しながら発展していき、コード・ソロの部分が最高です。長尺で十分に演奏を聴かせてくれます。またドラムの Grady Tate のノリノリのドラムのキレが良く、アレンジもドラムが遊びやすいアレンジなのでしょう。前半のテーマ部分はドラムの為のようなものに聞こえます。とにかく最高です。Night Train 1曲目が飛ばし過ぎたので、テンポを落としたブルースの2曲目は地味に聴こえます。Oscar Peterson Trio でも有名な曲ですが、Jimmy & Wesの方がブルースが強い8ビート・シャッフルで重いアレンジです。2回目のテーマは Blues March を模している感じで強めのビートにして印象を強烈にしながらの Wes Montgomery のソロです。1曲目と同じような対比のさせ方です。ソロのバックでブラス部隊が多めに出てくるのも1曲目との違いです。Wes Montgomery は、ブラスがバックで出てくるとブラスの音圧に負けないようにするためか、オクターブの細かいフレーズで対応するところが聴きどころでもあるように思います。James & Wes は、ブラス抜きの二人のセッションです。Jimmy Smith の他のアルバムをあまり持ってはいませんが、ベーシストを入れた演奏も多くペダル・ベースが聞き取れなかったので、足技は使わない人かと思っていましたがここでは聞き取ることが出来ます。交互にとられるソロの技を楽しむ曲ですね。13 (Death March)  映画「13」の主題歌とのことで、なるほどジェームスボンドのテーマのようなキメが映画っぽい感じです。1,2曲目は Jimmy & Wes の二人のソロを引き立てるためのビッグ・バンドのようなアレンジでしたが、この曲では曲自体に二人が溶け込んだソロを取るような曲になっています。最後のテーマでドラムが、タイミングをワザと外してタムを入れる小技などの芸の細かさも印象に残ります。最後は Jimmy & Wes のブラス抜きのセッションで Baby, It's Cold Outside も映画の主題歌とんことですが、ビッグバンドと張り合うような緊張感のある演奏と、楽器を歌うように使う名手二人のリラックスした演奏の対比も良くアルバムを楽しむことができます。
 酒で、聴いた記憶が飛んでいたアルバムですが非常に良かったです。Jimmy Smith、 Wes Montgomery ともに、あまり聴いてこなかったことと、購入したアルバムのめぐり合わせが悪くて、今まで興味が薄かったので、もう少し深堀してみようかと言う気になってます。愛聴盤コーナー行きに決定です。ビッグバンドを聴いてこなかった人にも楽しめる刺激が入っているかとも思います🎶

organ (hammond) : Jimmy Smith
guitar : Wes Montgomery
bass : Richard Davis (1, 2, 4)
drums : Grady Tate
percussion : Ray Barretto (3, 4, 5)
arranged by : Oliver Nelson
sax, clarinet : Phil Woods (1, 2, 4)
alto sax, clarinet, flute, flute (alto) : Jerry Dodgion (1, 2, 4)
tenor sax, Flute, Clarinet : Bob Ashton (1, 2, 4)
baritone sax, bass clarinet, flute, flute (alto) : Danny Bank (1, 2, 4)
trumpet : Clark Terry (4), Ernie Royal (1, 2, 4), Jimmy Maxwell (1, 2, 4), Joe Newman (1, 2, 4)
flugelhorn : Clark Terry (1, 2, 4)
trombone : Jimmy Cleveland (1, 2, 4), Melba Liston (1, 2, 4), Quentin Jackson (1, 2, 4), Richard Hixon (4)
bass trombone : Tony Stud(4))
flute (tenor), flute (alto), clarinet : Jerome Richardson (1, 2, 4)

recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.
tracks 1, 2 recorded on September 23, 1966.
tracks 3, 5, recorded on September 28, 1966.
track 4 recorded on September 21, 1966.

1. Down By The Riverside / Traditional
2. Night Train / Jimmy Forrest, Lewis Simpkins, Oscar Washington
3. James & Wes / Jimmy Smith
4. 13 (Death March) / Gary McFarland
5. Baby, It's Cold Outside / Frank Loesser





  

2025年3月24日月曜日

Dizzy Gillespie / Night In Tunisia


 ガレスピと言えば、リスのように頬っぺたを膨らませて、ベルが上に突き出たトランペットを高音で豪快に吹きまくるスタイルで人気のトランぺッターで、恰幅の良い体型で、だみ声でのスキャットを得意とするジャズ歌手でも有名です。このアルバムの音源の録音の1945年はガレスピーは27歳で盛んなソロ活動を開始していますので、年も若いのでスリムな体型です。しかし、このアルバムは細身のスキっとしたイラストです。演奏時に巨大に膨らむガレスピーの頬はパフォーマンスと思っていたら特異体質だそうです。(医者の研究にも協力したらしい)


 ベルが上を向いたトランペットを使い始めるのは、1954年からでパーティーの席で客席に置いてあったトランペットに奥さんが痴話喧嘩して他の客が転んでトランペットに尻餅をついて曲がってしまったことが始まりなのは有名な話。音の通りが良かったんで、ずっと使っててトレードマークになったらしいです。
 このアルバムは1945~1946年の録音のオムニバスで Giants Of Jazzというレーベルから発売されています。つまり1945年には曲がったトランペットは使用していなかったことになります。


 ところで最近トランぺッターのジャズアルバムを好んで聴いていることは多いものの、Dizzy Gillespie については、それほど好きなサウンドと言うこともなく、このアルバムは中古で見かけたので、お勉強のために購入してみたものです。
 古臭いアルバムではありますが、共演者を見ていると、お宝のようなメンバーです。9曲目までは Milt Jackson(Vib), Sonny Stitt(as), Ray Brown(b) Al Haig(p) を軸とした録音、12曲目 Blue N Boogie では、Dexter Gordon(ts) 13~17、22曲目は Charlie Parker(as) 
 全22曲はお買い得と思って購入。1945~1946年の録音のオムニバスとは、購入後に気づきました。他のオムニバスでも、ジャズに限らず、この時代の録音は1曲3分程度が標準です。メンバーを眺めながら聴くのも面白いとは思いますが、66分を超える録音内容で22曲は、正直、聴いていてもかなり惰性になります。真剣に聴くのも疲れます。
 なので、全曲レビューは疲れちゃうんで割愛ですね。そのうち真剣に聴く気になったら書き加えます。本アルバムに関してですが、同じレーベルから同じ名前ですが収録曲の異なるベストが販売されていました。発売する国によって変えているようです🎶

1. 52Nd Street Theme
2. Night In Tunisia
3. Ol' Man Rebop
4. Anthropology
NewYork, February 22,1946 
Dizzy Gillespie Septet 
Dizzy Gillespie(tp), Don Byas(ts), Milt Jackson(vib), Al Haig(p), Bill De Arango(g), Ray Brown(b), J.C.Heard(d) 

7. Oop Bop Sh'bam
8. One Bass Hit (Pt.1)
9. That's Earl, Brother
NewYork, May15, 1946 
Dizzy Gillespie Sextet 
Dizzy Gillespie(tp/vcr), Sonny Stitt(as), Milt Jackson(vib), Al Haig(p), Ray Brown(b), Kenny Clarke(d), Gil Fuller(vcl)

10. I Can't Get Started
11. Good Bait
NewYork, January 9, 1945 
Dizzy Gillespie All Stars 
Dizzy Gillespie(tp), Trummy Young(tb), Don Byas(ts), Clyde Hart(p), Oscar Pettiford(b), Shelly Manne(d) 

12. Blue N Boogie 
NewYork, February9, 1945 
Dizzy Gillespie Sextet 
Dizzy Gillespie(tp), Dexter Gordon(ts), Frank Paparelli(p), Chuck Wayne(g), Murray Shipinski(b), Shelly Manne(d) 

13. Dizzy Atmosphere
14. All The Things You Are 
New York, February 29. 1945 
Dizzy Gillespie(tp), Charlie Parker(as), Clyde Hart(p), Remo Palmieri(g), Slam Stewart(b), Cozy Cole(d) 

15. Salt Peanuts
16. Hot house 
17. Shaw Nuff
New York, May 11, 1945 
Dizzy Gillespie and his All Star Quintet 
Dizzy Gillespie(tp/vcl), Charlie Parker(as), Al Haig(p), Curley Russell(b), Sidney Catlett(d) 

5. Round About Midnight
6. When I Grow Too Old To Dream
18. Confirmation
19. Diggin' For Diz
20. Dynamo A
21. Dymano B 
Hollywood, February 7. 1946 
Dizzy Gillespie Jazzmen (Tempo Jazzmen featuring Gabriel on trumpet) 
Dizzy Gillespie, as Gabriel(tp) LuckyThompson(ts) Milt Jackson(vib) Al Haig(p) Ary Garrison(g) Ray Brown(b) Stan Levey(d) The Three Angels : Dizzy Gillespie, Lucky Thompson & Milt Jackson(vcl) 

22. Hallelujah
New York, June 6, 1945 
Red Norvo and his Selected Sextet 
Dizzy Gillespie(tp), Charlie Parker(as), Flip Phillips(ts), Red Norvo(vib), Teddy Wilson(p), Slam Stewart(b), Specs Powell(d) 
1. 52Nd Street Theme
2. Night In Tunisia
3. Ol' Man Rebop
4. Anthropology
5. Round About Midnight
6. When I Grow Too Old To Dream
7. Oop Bop Sh'bam
8. One Bass Hit (Pt.1)
9. That's Earl, Brother
10. I Can't Get Started
11. Good Bait
12. Blue N Boogie
13. Dizzy Atmosphere
14. All The Things You Are
15. Salt Peanuts
16. Hot house
17. Shaw Nuff
18. Confirmation
19. Diggin' For Diz
20. Dynamo A
21. Dymano B
22. Hallelujah





  

2025年3月23日日曜日

David Sanborn / Voyeur


 2024年5月12日に78歳で他界した David Sanborn の1980年作品です。1970年 Taking Off (1975) を Warner Records からリーダー作をリリース以降、1年に1枚のペースで発売しているので、6枚目のアルバムとなります。
 Voyeurの邦題は「夢魔」で、直訳は、窃視症の人、性的な面でのぞき趣味の人、出歯亀、ゴシップ好き、詮索好き 等とあまり良い言葉ではないようですが、タイトルの言葉イメージとは違い、アップテンポで明るくファンキーなフュージョンとなっています。前作のHideaway では1曲だけの参加だった Marcus Miller が全ての曲に参加していてサウンドに大きな変化をもたらしています。同じく後のサウンドの要となってくる Hiram Bullock はこのアルバムでも参加は1曲のみ。しかし以降しばらく続くファンキー・フュージョンの Sanborn サウンドは、このアルバムが大きな起点になっています。


 ファンク・フュージョンに舵を切ったとはいえ、まだまだ泥臭いニュアンスも残してしているのが、この作品の魅力かと思います。それでは大好きな一枚を全曲レビューしていきます。Let's Just Say Goodbye サンボーン作曲で、歌(サックス)メロが、はっきりとしていてわかりやすい、ザ・フュージョン。Buzzy Feiten のカッティング・ギターが印象的で、サックスはエフェクトが少しかかっていて都会的で軽い。It's You サンボーン的な、ほのぼのした楽曲で、アコースティック・ギターをメインにした Buzzy Feiten のギターが曲の雰囲気を作っています。Wake Me When It's Over 2曲目までは、身を潜めていた Marcus Miller が Wake Me When It's Over で、グイッと存在感を出してきます。ドラム、ギター、ベースのリズム隊は全てマーカスになっています。ポップでファンクな曲に、David Sanborn も合わせてきます。One In A Million メローな旋律は David Sanborn 作曲で、ギターが Hiram Bullock、ドラムが Steve Gadd から Buddy Williams に変わり曲がまろやかになります。そして Marcus Miller の印象が濃い Run For Cover です。 David Sanborn の鋭いサックスの演奏もカッコ良いですが、世の中のベーシストのスラップの練習では皆さんこの曲のお世話になっているものと思われます。テナーサックスで Tom Scott が参加しています。All I Need Is You は、Marcus Miller がイントロでスラップしているものの、物静かで優しいテーマが Marcus Miller っぽくないです。Just For You 前の曲でらしくないと思っていたら、まさかのピアノが Marcus Miller とのデュオで締めくくりです。これが意外と良くて1分32秒はもったいない。
 私のサンボーンの入り口は学生時代に聴いた Straight to The Heart (1984) で、それから少しづつ色々なサンボーンを聴いてきている中でも、派手さが少ないフュージョンであるのが気にいっています🎶

producer : Michael Colina, Ray Bardani
recorded by, mixed by : Ray Bardani
recorded at Minot Sound Studio, White Plains, N.Y.;
Warner Bros. Recording Studios, North Hollywood;
Westlake Recording Studios, Los Angeles;
Jennifudy Recording Studios, Los Angeles;

1. Let's Just Say Goodbye / David Sanborn
alto saxophone, electric piano : David Sanborn
electric guitar, acoustic guitar : Buzzy Feiten
electric bass, synthesizer : Marcus Miller
synthesizer : Michael Colina
drums : Steve Gadd
percussion : Lenny Castro
2. It's You / David Sanborn
alto saxophone, electric piano : David Sanborn
electric guitar, acoustic guitar : Buzzy Feiten
electric bass, synthesizer : Marcus Miller
synthesizer : Michael Colina
drums : Steve Gadd
percussion : Lenny Castro
3. Wake Me When It's Over / David Sanborn, Marcus Miller
alto sax, saxello : David Sanborn
drums, electric bass, electric piano, electric guitar, synthesizer : Marcus Miller
synthesizer : Michael Colina
gong : Ray Bardani
4. One In A Million / David Sanborn
alto saxophone, electric piano : David Sanborn
electric guitar : Hiram Bullock
synthesizer : Marcus Miller, Michael Colina
drums : Buddy Williams
congas, percussion : Lenny Castro
percussion : Buddy, David, Hiram
5. Run For Cover / Marcus Miller
alto sax, saxello : David Sanborn
flute, tenor sax : Tom Scott
synthesizer : Michael Colina
electric bass, electric piano, electric guitar : Marcus Miller
drums : Steve Gadd
percussion : Ralph MacDonald
6. All I Need Is You / Marcus Miller
alto sax : David Sanborn
backing vocals : Diva Gray, Gordon Grody, Hamish Stuart, Lani Groves
synthesizer : Michael Colina
electric bass, electric piano, electric guitar, bells : Marcus Miller
drums : Steve Gadd
percussion : Ralph MacDonald
7. Just For You / Marcus Miller
alto sax : David Sanborn
piano : Marcus Miller





  

2025年3月22日土曜日

Curtis Maifield / Curtis Live!


 1971年1月、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジのクラブ Paul Colby's Bitter End で行われた公演が収録されている名盤と言われているヤツです。録音されたクラブは1961年のオープンから1974年までは、Paul Colby氏 がオーナーで現在は The Bitter End Cafe として現存していました。キャパは230人と書いてありましたので、そこそこの大きさですが大きな会場ではありません。本アルバムでも客との近い距離感がわかります。


 1958年に The Impressions で活動を開始した Curtis Maifield は1970年からアルバム Curtis (1970) を皮切りにソロ活動を開始します。そして翌年に発売されたのがこの Curtis/Live! (1971), Roots (1971) となります。The Impressions の活動でも Further Impressions(1996) で聴いていて、1967年あたりから大きく作風が変わってきたのを感じましたが、数年前までは古いタイプのソウルを歌っていた Curtis Maifield が更にこのソロ活動で大きなサウンドで進化していることで当時のファンは歓喜したに違いなく、そこからもこのアルバムは名盤と言われているものと思います。


 Billboard 200で21位、R&Bアルバム・チャートでは3位。ギター・ベース・ドラム・パーカッションのシンプルな編成、再び聴きながらの全曲レビューしていきます。1曲目は Mighty Mighty (Spade And Whitey) は、Donny Hathaway / Live(1972) に通ずる雰囲気です。まばらに聴こえる観客の手拍子が、そこそこ小さな会場かと思ったりしましたが曲が終わった後の拍手では手拍子で感じるよりも人数が多い。軽快でノリの良い曲だが、We're killing off our leaders, It don't matter none black or white, And we all know it's wrong, And we're gonna fight to make it right の歌詞でもわかるように人種差別と暴力への痛烈なプロテスト・ソングです。Rap~I Plan To Stay A Believer イントロで Curtis がしゃべっているところで 音が途切れてしまうと思っていたら、ここが Rap で、そこから次の曲が始まる編集転でした。そして I Plan To Stay A Believer これも Donny Hathaway / Live(1972) の雰囲気と似た演奏のソウル、何故か最後にリコーダーの音がしてぶっつり。購入当時に聴いた時には、この盤は bootleg なのかと思ってしまいましたが、今聴くと臨場感あふれる録音とも解釈できます。We're A Winner ここら辺から Curtis 節になってきますが、タイトな演奏がカッコ良いです。そして、また Rap で語りブツっと切れてからの、We've Only Just Begun ゆったりとしたソウル、突然のテンポアップと二つの曲を何も考えずにつなげて演奏しているかのような斬新な曲です。愛のプレリュードとして Carpenters がヒットは1970年ですから、これは流行歌を意識しての録音のようです。Curtis のペラペラなテレキャスの音が良いですね。気になります。People Get Ready 名曲は Impressions 時代からの Curtis 作曲です。語りかけるような歌は切なくて聴きながら現代の様々なミュージシャンにも愛される様々な演奏も思い出しながら聴けます。そして Rap です。rap の意味を改めて見てみたら、叩く、おしゃべり、非難する、逮捕する、ラップで歌うと色んなシーで使われる単語のようです。Stare And Stear 作風としては今までにない感じのストレンジな楽曲で、ワウのかかったギターのフレーズも印象的。Check Out Your Mind タイトなソウルのイントロで、テーマに入ると雰囲気が変わります。全体的には Curtis 節の16ですが、ベースだけ JB のノリが面白い。Gypsy Woman やっぱりライブなどでも外せない名曲です。ドラムもベースも原曲の流れの中で外さない程度の小技を入れたフェイクのよう なリズムを入れてきて、やたらハイレベルです。The Makings Of You そしてバラードタイプの曲の投入です。Curtis のファルセットが効果的な曲です。そしてまた Rap で、メンバー紹介からのWe The People Who Are Darker Than Blue やたら長い曲名でサイケな雰囲気なベースが曲全体をイメージづけます。このフレーズはB級マイナー・ジャズ・ファンクでよく使われるやつですね。曲の途中で、また I Plan To Stay A Believer のようなリコーダー音が鳴ります。つまりはリコーダーでは無いですね。マイクのハウリングでしょうか。余計なことが気になります。そして(Don't Worry) If There's A Hell Below, We're All Gonna Go は曲名も長いが、録音も長い9分25秒です。基本的には一つのリフを延々と繰り返すタイプで、ここら辺がキチンとABメロ、サビのような様式での Impressions 時代と大きく異なる演奏形態で、Curtis の発明と言うことではないでしょうが、以降のファンクなどの曲作りの中に取り入れられていのかと改めて思いました。Stone Junkie だるいリズムに繰り返されるStone Junkie のメロディは中毒性があります。
 改めて聴いて思っていた以上に、サウンドが Donny Hathaway / Live(1972)  と似ていると思いました。このアルバムは1971年、ほぼ活動が同期しているので、誰が最初かはあわりませんが、Impressions時代を加味すると先駆者は Curtis なのかとも思えてきます。そんなことも聴きながら楽しめる名盤🎶

producer, vocals, Guitar : Curtis Mayfield
Guitar : Craig McMullen
Bass : Joseph "Lucky" Scott
Drums : Tyrone McCullen
Congas, Bongos, Percussion : Henry Gibson

writtenby : C. Mayfield (1 to 5, 7 to 16)
recorded live at Paul Colby's Bitter End, New York City.

1. Mighty Mighty (Spade And Whitey)
2. Rap
3. I Plan To Stay A Believer
4. We're A Winner
5. Rap
6. We've Only Just Begun / Paul Williams, Roger Nichols
7. People Get Ready
8. Rap
9. Stare And Stare
10. Check Out Your Mind
11. Gypsy Woman
12. The Makings Of You
13. Rap
14. We The People Who Are Darker Than Blue
15. (Don't Worry) If There's A Hell Below, We're All Gonna Go
16. Stone Junkie





  





2025年3月21日金曜日

Chris Connor / Chris

 

 新しく女性ジャズ・ボーカルを開拓してみたいと思い、どうせなら美人ボーカリストが良いと思いながら、たまに中古屋を見ていますが同じ人になりがちで4枚目です。Sings Lullabys Of Birdland (1954)、A Jazz Date With Chris Connor(1958)、Chris Connor At the Village Gate(1963)、そして本アルバム Chris 1956 となります。Chris Connor は、1927年生まれのハスキー・ボイスが特徴の1950年代に活躍したジャズシンガーです。こうした白人女性の、低音の効いたハスキー・ボイスは色っぽくは感じるのですが、ゾクッとくる部分はあるし、曲によりますが色っぽさを強調する歌い方でもなく意外とサラッとした心地のものが多いように感じます。


 Bethlehem からのリリースのラストで4作目、次のアルバムからは Atlantic からの発売となり、本アルバムは流行りの歌手へと羽ばたいていく初期の過程の作品で1953年から1955年にかけた4つのセッションが収録されています。既に何回か聞き流しながら聴いていますが、派手さや独創性は無いですが堅実に聴かせてくれる歯切れの良い聴き心地の印象です。
 最近聞き流している時と、聴きこんだ時の印象が違うことも多いので今回もそんなことが起きるのかどうか、1曲づつ聴きこみながらレビューしていきます。All About Ronnie / Joe Greene ピアノ、ベース、ギターで、歌を徹底的に支えるドラムレスのバックで余分なものを、そぎ落としたシンプルに歌い上げています。Miser's Serenade 1曲目とガラッと変わってサイ・オリバー楽団(Sy Oliver And His Orchestra)の賑やかでスインギーな演奏がワン・コーラス、イントロにしては長いと思っていたらからポップにワン・コーラス歌い上げて直ぐに終了のシンプルさです。1953年ですから1曲の長さに制限があるため、ほぼ3分以内のため元々のテーマが長いためこのような構成はしょうがない。Miser's はケチな男って意味らしい。Everything I Love コールポーターの作品で1941年のミュージカル Let's Face It の中のラブ・ソングで、2曲目に引き続きサイ・オリバー楽団の演奏は明るく楽しい。Chris Connor も開放した歌いっぷりでが清々しい。Indian Summer 1919年に Victor Herbert がピアノ曲として作曲、20年後の1939年に Al Dubin が歌詞をつけてシナトラが同楽団で歌って話題になった楽曲を、今度は Chris Connor がカバー。楽団のワンコーラス目は相変わらず長いですが、そこから超低音から歌い始め中域までの音程で歌い上げています。Indian Summer とは小春日和らしいですが、荘厳な夜明けみたいな重めのアレンジ。 I Hear Music 今度は軽めにポップ、のびやかに歌い上げて短めに語尾をゆする Chris Connor の歌い方が良く合います。曲によってビブラートの長さを Chris Connor は使い分けているようで、これに着目して次の曲 Come Back To Sorrento を聴いていると長めのビブラートになっていて、長めになると少しネバっこくなります。日本語訳は「帰れソレントへ」です。なるほど確か中学校時代の音楽で聴いたカンツォーネのあれです。全く違う曲に聞こえましたが良く聴けば、あのテーマがあのメロディになっています。が懐かしいと思えるのは、このテーマをゆっくり歌うワンコーラス目の一瞬です。 Out Of This World マイナーなフィーリングでイントロから Chris Connor が歌いだし、直ぐに明るい感じに変わりますが、ノビノビとした感じにはなるのですが、ある程度までで抑制した感じで止めているので底抜けに明るいまでは到達しません。そこら辺の表情のつけ方が Chris Connor の持ち味でもあるなと感じました。Lush Life この曲はナットキングコールで有名なヤツかと思いますが Billy Strayhorn がエリントン楽団のオーディション用に入団前年の1938年につくった楽曲とのこと。Joe Cinderella のギターをバックにしっとりと優しく歌い上げていて、シンプルに好きです。From This Moment On 1950年の Cole Porter 作品。この作品で最も凝ったアレンジで、イントロはJ.J. Johnson, Kai Winding の2管のトロンボーンの軽快なユニゾンスリリングな高速パート、ワルツにしてテンポを落としたサビ とコロコロと表情が2分30秒で変わり、Chris Connor はキッチリと忙しく歌い分けていて歌っている感じもとても楽しそうです。A Good Man Is A Seldom Thing ニューヨーク出身の Charles DeForest の作詞作曲の辛口ラブソング。レイジーな演奏をバックに、短いビブラートと長めのビブラートを使い分けて、やるせない表情で歌い上げています。Don't Wait Up For Me バラードが最後に続きます。don't wait up for me, don't start suspecting me, don't start trying teas と、静かに歌いかけてきます。これも良い曲です。In Other Words これは?? Fly Me To The Moon じゃないですか。そうですねサビの出だしが In Other Words のタイトルです。1954年に Bart Howard が書いた原曲はこのタイトルだそうです。From This Moment On と同じように、ワルツにしてスイングにしてバラードにしてと表情を変えるアレンジ手法が、気持ち良い。
 最初に聴いた印象は短い長さの曲が散在している地味なアルバムだったんですが、しっかり聞けば地味でシンプルな曲に Chris Connor の味が詰まっている曲も多く、また低音ハスキーボイスのお色気のようなイメージも、丁寧に曲に少しづつ表情をつける上手い歌い手であると思いました🎶

【1,5,6】
vocals : Chris Connor
piano : Ellis Larkins
guitar : Everett Barksdale
bass : Beverly Peer
recorded in New York on August 9, 11, 1954.

【2,3,4】
accompanied by : Sy Oliver And His Orchestra
recorded in New York on December 17, 18, 1953.

【7,8】
vocals : Chris Connor
bass : Vinnie Burke
guitar : Joe Cinderella
drums : Art Mardigan
accordion : Don Burns
Flute, Clarinet – Ronnie Ordich
recorded in New York on August 21, 1954.

【9,10,11,12】
piano, arranged by : Ralph Sharon
bass : Milt Hinton
guitar : Joe Puma
drums : Osie Johnson
flute, tenor sax : Herbie Mann
trombone : J.J. Johnson, Kai Winding
recorded in New York on April 1955.

1. All About Ronnie / Joe Greene
2. Miser's Serenade / Claude Reese, Fred Patrick, Jack Val, Marvin Fisher
3. Everything I Love / Cole Porter
4. Indian Summer / Al Dubin, Victor Herbert
5. I Hear Music / Burton Lane, Frank Loesser
6. Come Back To Sorrento / Claude Aveling, Ernesto de Curtis, Giambattista De Curtis, arranged by Ellis Larkins
7. Out Of This World / Harold Arlen & Johnny Mercer
8. Lush Life / Billy Strayhorn
9. From This Moment On / Cole Porter
10. A Good Man Is A Seldom Thing / Charles DeForest
11. Don't Wait Up For Me / Charles DeForest
12. In Other Words / Bart Howard