*認知症の人間の言動は理解不可能か・第3回
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◆自尊心が傷つくことは仕方のない、我慢しなければならないことではない
さてここに来るまでの間に、こういうことが明確になった。
ひとを異常と判定するのがそのひとのことを「人でなし」と見なすことであってみれば、そのように異常と判定されて自尊心が傷つくのはむしろ当然のことであるが、そうした指摘に対し、こうした反論が挙がるものと思われるとのことだった。
「でも実際、認知症なのだろ? じゃあ自尊心が傷ついても仕方ないじゃないか。わがままばっかり言うな!」
しかしちょうどいま証明したように、そもそもこの世に異常なひと(人でなし)など存在し得ない。認知能力の低下具合が、仮に医学の定めた何かの基準を凌いでいたとしても、それは異常であること、すなわち「人でなし」であることを意味しない。そのひとには他者からの手助けが必要であったとしても、それでもやはりそのひとが「異常(人でなし)」であるということはない。
認知症や軽度認知障害と診断するのはひとをその認知能力の低下具合から異常(人でなし)と判定することであるが、そうした判定は論理的に不当である。
それがいま明らかになったことであるが、それに対して次のような苛ついた罵声が浴びせられることになるのはほぼ確実ではないだろうか。