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パリオリンピック IBC(国際放送センター) OBS パリ五輪2024 4K AI Paris2024

2024年05月15日 10時58分30秒 | 国際放送センター(IBC)
史上最も華麗なセーヌ川開会式で幕を開けるParis2024

Paris2024 セーヌ川開会式 出典 Paris2024
2024年パリ夏季五輪大会(Paris2024)は、7月26日から8月11日まで開催され、32競技329種目が行われ、参加選手数はTokyo2020より約600人少ない1万500人に絞った。男女それぞれ5250人で、五輪史上初めて男女同数の大会となる。
 前回のTOKYO2020は、新型コロナのパンデミックの影響で無観客試合となったが、コロナも収束して、再び満員の観衆を前にして熱気を取り戻した五輪大会となる。
 主要競技会場は、、セーヌ川に沿って集中的に行われ、エッフェル塔やグランパレ、コンコルド広場、アンバリッド廃兵院などのパリを象徴する歴史的ランドマークが利用される。
 異色なのはサーフィン会場、タヒチのティーポオで開催され、史上初の海外開催となる。
 合計41の競技会場が整備されるが、95%が既存または仮設施設利用する。新設はアクアスティックセンター(Aquatics Center/Sant-Denis 6000席 アーティスティックスイミング、飛び込み、水球)とスポーツクライミング( Le Bourget Climbing venue/Saint-Denis)の2競技場のみだ。
 オリンピック選手村は、パリ北部のサンドニに約20億ユーロ(約3200億円)を投じて建設された、約70%が民間資金で、公的資金は6億5000万(約1000億円)ユーロが投入された。
 大会期間中は約14000人の選手や関係者の宿泊施設となる。大会終了後は2220戸以上の一般市民用の住居と770戸以上の高齢者や学生向けの住居が設けられ、医療施設や学校も整備されて約6000人が暮らすニュータウンとなる。また約6000人が働くオフイススペースも整備される。
 開催経費は、インフレの影響で当初予算から約35%増加し、組織委員会予算で約44億ユーロ(約7400億円)、競技会場やインフラ整備を担当するオリンピック施設庁(SOLIDEO)予算で約45億ユーロ(約7600億円、合計89億ユーロ(約1兆5000億円)程度とされている。
 ちなみにTokyo2020では組織委員会経費が6404億円、国や東京都が7834億円、計1兆4238億円、ほぼTokyo2020と同額の開催経費となった。
 開催都市が選べる追加競技は、ブレイクダンスが初採用された。スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンはTokyo2020に続いて採用したが、野球・ソフトボールと空手は実施しない。若い世代の重視を強調した戦略だ。
 Paris2024の最大のハイライトは、史上初のセーヌ川(River Seine)で開催される開会式、206 の国と地域の選手や関係者、数千人を乗せた100隻(当初計画は160隻)以上のボートが、セーヌ川を約6km(4マイル)航行、ルートにあるパリのランドマーク、ノートルダム寺院、ルーブル美術館、オルセー美術館、、ポンヌフ(パリ最古の橋)、コンコルド広場、グラン パレ、エッフェル塔を通過する史上、最も華やかな開会式になる。 当初計画では「開かれた大会」を目指して、空前の60 万人以上の観客動員を計画したが、警備の難しさから32万6000人程度(有料席10万4000人、無料席22万2000人)に半減された。
 パレードの出発地点のオステルリッツ橋(Pont d'Austerlitz)から最終地点のエッフル塔前のイエナ橋(Pont d'Iena)の間の川岸下部エリアはチケットの購入が必要な有料席、川岸上部エリアは組織委員会の招待者専用無料席が設置される。当初計画にあった市民が自由に出入り可能な席は無くなった。
 そして観客のためにルートに沿って 80 の巨大なスクリーンが設けられる。
 またエッフェル塔の向かいにあるトロカデロ広場(Trocadéro square)には数十人の各国首脳と政府や国際機関の関係者、約200人が出席する予定だ。
  Paris2024では、「オリンピック史上最も壮観でアクセスしやすいセレモニー」になるだろうと語った。まさに世界に冠たる観光都市、パリを前面に押し出した大会となる。

異例の展開 2024夏季大会招致
 Paris2024が決まったのは、極めて異例の展開の中で行われた。
 2024年夏季五輪大会に最終的に立候補したのは、ブダペスト、ローマ、ロサンゼルス、パリの4都市だった。パリは1924年パリ五輪から100周年の節目の年の開催を目指した。
しかし、暴騰する開催経費の懸念や住民の反対運動などでブダペスト、ローマが相次いで撤退し、結局残ったのはロサンゼルス、パリの二都市となってしまった。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、住民の理解が得られず五輪大会の開催地に手を挙げる都市がいなくなることに危機感を抱き、立候補したパリとロサンゼルスを24年と28年の2大会の開催都市に振り分ける異例の同時決定を行った。
 IOCはどちらの都市が先に開催するかは、二つの都市で話し合うことを求め、その結果、「100周年」を掲げるパリが24年、ロサンゼルスが28年で決着した。
 IOCのしたたかな戦略が浮かび上がる。

Paris2024 IBC(国際放送センター)

IBC(国際放送センター) CDU 東京2020 出典 OBS
 Paris2024の放送・デジタルストリーミングのメディアの拠点、国際放送センター(IBC/International Broadcast Centre)は、ル・ブルジェ・コンベンションセンター(Le Bourget exhibition and convention centre)に設置される 。
 国際放送センター(IBC/International Broadcasting Center)は、世界各国のテレビ、ラジオ、デジタルサービスなどの放送機関等のオペレーションの拠点となる施設である。IBCの設営・運営は、五輪大会のホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)であるオリンピック放送機構(OBS/Olympic Broadcasting Services )が行う。
 OBSは、開閉会式などのイベントや全競技の国際映像・音声信号(ITVR:International Television and Radio Signals/World Feed)のライブ中継制作や信号の伝送、各放送機関等の専用ユニーポジションの設置やオペレーションの支援、記者リポートポジションやビューティカメラの設置、信号の伝送や配信を行う。
 IBCのOBSエリアには、コントロール(Contribution)、分配(Distribution)、伝送(Transmission)、ストレージ(VTR Logging)など行うシステムが設置され、オフチューブ・コメンタリー・スタジオやSNGサテライトファームなども整備される。また放送機関(MRHs)エリアには、各放送機関等がサテライト・スタジオや放送機材、ワーキング・スペースを設置、ユニー・オペレーションを行う。

IBC OBSエリア 出典 OBS
  OBSは、Paris2024で41競技場(内サーフィンはタヒチ)で開催される32競技329種目のすべてを4KUHD(Ultra High Definition )/HDR(RHigh Dynamic Range)、音声は 5.4.1 immersive audio。
でライブ中継を行い、テレビ、ラジオ、デジタルサービスのライツホルダー(MRHs)に4KUHD、HD、デジタル・ストリーミングなどさまざまなフォーマットで配信される。総配信時間は史上最高の 11,000 時間超(東京2020では1万200時間 リオデジャネイロ2016では7100時間)、 エグザーチョス(Yiannis Exarchos)OBS会長は「全部合わせると1年半以上かかる」と自慢した。この内、 3,800 時間から 4,000 時間はライブ中継( 競技と開閉会式や式典) である。
 オリンピックを支えるメディアの果たす役割は極めて大きい。国際オリンピック委員会(IOC)は、メディア戦略を重要な柱として位置付けている。とりわけ競技中継を世界各国で行う放送メディアは、オリンピックの存立基盤を握るとまで言われている。そのメディア戦略を担うのがIBCなのである。

CCTVのサテライト・スタジオ IBC   出典 OBS

 IBCの建物やオーバーレー(仮設スペース)、電源、空調、光ファーバーなどのインフラの整備は開催都市が行い、 2024 年 1 月にOBSに引き渡された。そしてOBSのIBC 建設チームがパーティションなどの内装工事や放送機器を設置し、ホストブロードキャスターとしてのオペレーション環境を整える。 5月にはライツホルダーの放送機関等(MHBs)が 入居を開始、それぞれの放送オペレーションの拠点を作り上げる。IOCから放送権を取得したMHBsは26、世界100各国以上の80の放送機関等に配信する。OBSがIBCの開設準備は通常26か月(約2年)前に始められる。
IBCの開所は6 月 26 日、以降、会期終了まで24時間オープンする。
 IBCで活動するスタッフは、OBSが約8300人、世界約100か国から集まった放送専門家集団である。その他1,300人のフランス人学生が研修プログラム(BTP/Broadcast Trainning Programme)で参加する。
 IBCに参加する放送機関等(MHBs)のスタッフは、約4000人程度と思われ、計1万2000人程度の放送スタッフがIBCで活動する。

 ル・ブルジェのIBCの面積は、東京2020のIBCが設置された東京ビッグサイトに比べて約13%(MRHsの面積は18%)縮小される。使用電力量は東京2020に比べて44%、リオデジャネイロ2016に比べると配信時間は2倍に増えたが約72%も削減される。 
 OBSは、IBCのIP化とクラウドの導入を進めることで、ライツホルダー(MRHs)の自国でのリモート制作を可能にした。これまで放送機関はIBCに放送機材を設置して要員を派遣してオペレーションを行ってきたが、それが不要になり経費を大幅に効率化できるようなった。主要放送局はいずれもIBCでのオペレーションを削減、その結果がIBCの規模縮小につながった。
 また 東京2020から、OBSはMRHsとのアクセスを効率化するために集中テクニカルアリア(CTAs:Centralised Technical Areas)を設けIBCのレイアウトを大幅に見直した。CTAsに両者が映像・音声信号を送受信する放送機材を集中的に設置することで、熱、換気、空調を抑えて、電力消費削減を達成して省エネ効果を上げることも可能になる。以前のIBCレイアウトでは各エリアに分散していたが、CTAsの設置でIBCスペースをより効率的に使用してスリム化を果たした。

CTAs:Centralised Technical Areas  出典 OBS

ル・ブルジェIBC
 IBCが設置されるル・ブルジェ・コンベンションセンター(Le Bourget exhibition and convention centre)は、パリの北部、シャルル・ド・ゴール空港から南に13km、オリンピック・パラリンピック選手村から東に8kmに位置する。ホール 2B、3、4、5 合計 4 つのホール (Hall3は新設) を使用して整備され、総面積は 40,000 平方メートル。大会期間中、OBS と MHBs(Media Rights-Holders) のさまざまな放送機材や管理的施設が設置されて、テレビ、ラジオ、インタネットなどのメディアの主要活動拠点となる。

ル・ブルジェ・コンベンションセンター(Le Bourget exhibition and convention centre)  出典 Le Bourget exhibition and convention centre
 2年に一度開催されるパリ・エアショー(パリ国際航空宇宙ショー)で世界的に有名なコンベンションセンター。航空宇宙業界の国際見本市で世界最大規模を誇る。1909年に創設され、航空機や戦闘機のデモンストレーション飛行も行われるダイナミックな見本市としても知られている。2019年ではフランス国内外から2,453社が出展・139,840人の業界関係者が来場し、フランスにおいて航空業界の発展を牽引している。2023年にも開催され、2025年にも開催予定。

 5つの展示場ホールを有し展示場面積の合計は約80,000平方メートル、隣接した飛行場を備えるユニークなコンベンションセンターである。

オリンピックの視聴者数は世界で30億5000万人
 国際オリンピック委員会(IOC)では、東京2020で、オリンピック関連の番組やニュースをテレビやデジタル・プラットフォームで見た視聴者数は、世界で30億5000万人、視聴時間は総計230億時間に及ぶと推定している。この内約64%の視聴者はテレビとデジタル・プラットフォームの両方で視聴したとしている。
 デジタル・プラットフォームは280億ビュー、22億4000万人のユニーク・ビューヤーを記録し、リオデジャネイロ2016に比べてビュー数は139%増、ユニーク・ビューヤー数は74%増と大幅に増加したとしている。

出典 IOC/OBS


OBS Team  出典 OBS
ホストブロードキャスター OBS
 OBSは、2001年に国際オリンピック委員会(IOC)が五輪大会のホストブロードキャスター業務を担う組織として全額出資して設立した“子会社”である。
 スペインのマドリッドに本部があり、スイスのローザンヌにも拠点がある。30の国と地域の約160人の常勤スタッフが在籍するグローバルな組織である。OBSの運営に関わる財政的負担はIOC責任を持つ。
 現在のIBS CEOは、イヤニス・イグザーチョス(Yiannis Ezachos)氏、 1964年ギリシャ生まれで、アテネ法律大学で法律と映画を専攻、卒業後、文化・芸術関連のテレビ・ラジオ番組を制作、ギリシャ国営放送、ERTの執行役員を歴任して、2012ロンドン夏季五輪後にOBSのCEOに就任した。

 これまで五輪大会のホストブロードキャスター業務は、開催都市組織委員会(OCOG)の責任だった。大会ごとにOCOGが開催国の放送機関と協力してホスト・ブロードキャスターを担う組織をゼロから作り上げる必要があった。しかし大会規模が拡大るにつれて、ホストブロードキャスター業務を担うために大量の機材と人員を確保することが強いられて、開催地の負担になった。
 ちなみに1964年東京夏季五輪や1972年札幌冬季五輪、1998年長野冬季五輪はNHKがホストブロードキャスターを務めた。
 一方、メディア戦略を最重要視する戦略をとる国際オリンピック委員会(IOC) にとっては、すべての大会で放送サービスの最高水準の品質を維持して、ライツホルダー(MRHs)にサービスすることが重要である。IOCの収入の70~80%は放送権収入で占められているからである。放送権収入が入らなくなったらオリンピック存続の死活問題となる。
IOCは常設のホストブロードキャスターを担う常設組織の必要性を痛切に感じ、全額出資をしてオリンピック放送機構(OBS)を設立することに踏み切った。IBCの設営・運営や中継業務などホストブロードキャスター業務を実施するための機材や要員、経費をIOCが責任を持ち、開催都市への支援(Contoribution)とした。その原資はIOCが放送機関等から受け取る放送権料である。
 このスキームで、これまで開催都市に課されていた財政的負担と放送機材や要員の確保の負担が軽減され、オリンピック大会が欧米だけなく発展途上国など世界各国で開催される可能性を開いた。
 OBSは、2005年にマドリードに本部を設立して組織を整え、2007年には常勤スタッフを18名から146名に一気に増大させた。
 2028年北京夏季五輪では、開催都市の組織委員会(OCOG)、北京五輪組織委員会(実働部隊は中国中央電視台[CCTV])とジョイント・ベンチャーを組みホストブロードキャスター業務を行った。中国国内の配信業務はCCTVが請け負った。
そして2010年バンクーバ委冬季五輪で、初めて単独でホストブロードキャスターを担い、国際信号の制作や配信業務、IBCの設営・運営などを行った。
 2018年平昌冬季五輪からは、パラリンピックを含めて、OBSが全面的にホストブロードキャスターを務めるようになった。東京2020でもホストブロードキャスターはOBSである。

 OBSは7つのミッションを掲げている。
・ITVR(国際映像・音声信号)の制作
・国際放送センター(IBC)の企画・設計、設営、運営、撤収
・競技会場や競技施設の放送オペレーション設備の企画・設計、設営、運営、撤収
・大会組織委員会が担当するOBSやRHBsが使用する会場の放送インフラの企画・設計、設営の支援
・RHBsの大会組織委員会への要請の取りまとめ
・オリンピック・アーカイブスの運営
・新たな放送技術開発の開発と導入

OBSのホストブロードキャスター業務
 OBSは、ホストブロードキャスターとして中継車(OB-VAN)50台やブロードキャスト・コンパウンド(Broadcast Compaundを設置して競技やイベントの映像・音声信号の制作を行う。
 ライブ中継用に1,000台以上のカメラを配置、パリの象徴的な風景を撮影する12台のビューティカメラも設置して超高解像度でライブ中継、さらに、3,600本のマイクを設置して試合の感動を伝える。
ブロードキャスト・コンパウンド(Broadcast Compaund)には、OBSのベニューオペレーション拠点でIBCへの映像・音声、データ信号の送受信ポイントとなるTOC(Technical Operation Centre)が整備される。
競技場内にはCamera Position(OBS用・放送機関ユニー用の中継カメラ設置エリア)やMix Zone(アスリートインタビュー・エリア)、インフォ―メーション・オフイス(BIO)が設けられ、電源・通信インフラ・高速インターネット、各種のケーブリング等が準備される。
MRHsに対しては、ユニーカメラ・ポジション(Uni-Camera Position)、コメンタリー・ポジションCommentary Positions)、アナウンス・ポジション(Announce Positions)、プレゼンテーション・ポジション(Occasional Presentation Positions)、記者リポート・ポジション(Stand-up Position)、ソーシャルメディア・ポジション(Social Media Position)、ベニューTVサテライトスタジオ(TV Studio Facilities)などのサービスが提供される。
そしてパリ市内のビューティポイントに複数のOBS TV Towerを建設し、MRHsのユニーTVスタジオの設置を可能にする。このスタジオからParis2024の象徴的な風景を背景にしてキャスターやゲストが出演することになる。

Mix Zone 東京2020 出典 OBS

中継オペレーションの高度化
 Parais2024で、OBSの技術力が最も示される重要な瞬間はセーヌ川の開会式。 OBS は 3 隻の特別建造船を準備し、船上とセーヌ川沿いの要所に設置された 130 台以上のカメラで、開会式パレードをライブ中継する。 高品質で安定した画像を提供するために、OBSが特別に設計した機材が使用され入念な調整も行われた。2023年7月には大規模な技術リハーサルを実施、OBSによるとシステムは順調に動き、微調整も完了し準備は万端、7月26日の開会式には世界の約15億人の視聴者に高品質の画像と音声を提供できると自信を示す。
 Paris2024ではOBSでは、新たな中継テクノロジーを導入した。
・被写界深度がより浅い映画用レンズ(Cinematic Lenses)を初めて使用
視聴者に迫力の臨場感あふれた映像サービス、アスリートの表情をリアルに伝える。
・マルチカメラ再生システム(Multi-camera replay system)
東京2020の倍の20台に増やす。
・空中懸架ケーブルカメラ(Spider Camera)
 4-Pointのワイヤーで動作させる最新鋭のカメラ
・ドローン搭載カメラ
・アスリートの瞬間(Athelete Monmets)
 競技場にモニターを設置して、協議終了後にアスリートの家族や友人とライブで結ぶ。
・Dynamic Graphics
 より多くのデータを提供することを強化することで、ストーリー性を強化し、より没入型のソリューションを提供する。ライブピンニングや生体認証データなどのダイナミックグラフィックスを導入する。
・バーチュアル・スタジオ・バックドロップ(Vertual Studio Backdrop)
 バーチャル・スタジオを設置して、さまざまな背景映像でリポーターやアスリートが出演する。

マルチカメラ生システム(Multi-camera system) 出典 OBS

4-Point スパイダーカメラ   出典 OBS

アスリートの瞬間(Athelete Monmets) 出典 OBS

Dynamic Graphics  出典 OBS

ビューティカメラ   出典 OBS

Paris2024はAI五輪 人工知能 (AI) 自動ハイライト生成システムの導入
 最近開催された 2024 年江原冬季ユースオリンピック期間中、OBS は制作および編集ワークフローに人工知能 (AI) 自動化を導入して、オペレーションの効率を飛躍的に高めた。
・OBS 自動ハイライト生成とOBS 生成支援編集システム
OBSはIntel と協力して開発したOBS 自動ハイライト生成とOBS 生成支援編集システムを開発した。
・Mix Zoneのインタビューの英語スクリプト自動生成
・映像ファイルのキャプション・サブタイトル自動生成


人工知能(AI)プロセッサー、「Intel Xeon」
AI五輪を推進するIntel
国際オリンピック員会(IOC)のTOPスポンサーのインテルは、Paris2024で公式「ワールドワイド AI プラットフォームパートナー」の称号を獲得した。インテルが開発した人工知能(AI)テクノロジーを世界最大の舞台で実装する。
インテルはOBSと協力して、最新鋭の人工知能(AI)プロセッサー、「Intel Xeon」を搭載した自動ハイライト生成システムを開発して導入する。これによりハイライト映像の制作と編集作業が大幅にスピードアップ・効率化され、より迅速に視聴者に提供できるようになる。
またインテルはサムスンと協力して、AI で競技映像を解析して、アーカイブ練習映像と照合して一人一人のアスリートを自動的に識別して、プロフィールを自動的に画面に表示するシステムも開発した。
さらにインテルは、 「Intel Xeon」 上に構築された AI を活用して、競技施設の 3D モデルが作成して、スマホアプリを介して屋内および音声ナビゲーションをサービスする。観客サービスにもAIが活躍する。
Paris2024ではエンドツーエンドの8K ライブ OTT ブロードキャスト配信ワークフローにも挑む。このサービスはインターネット上で配信する8K解像度の低遅延ライブストリーミングで、「Intel Xeon」AIプロセッサーを搭載したブロードキャスト・サーバーを使用する。OBSとNHKは開会式やコンコルド広場で開催されるアーバン・スポーツを8Kで中継制作するが、この8Kライブ信号を60FPS/HDR/48Gbps、VVCコーディックで圧縮して、最新のインテルベースの PCやラップトップにわずか数秒の遅延で配信する。8Kテレビでも視聴可能で、世界中の視聴者が最高の解像度を誇る8Kライブストリーミングでオリンピック競技を楽しむ道を開いた。
インテルがマクドナルドの撤退を受けてTOPパートナーになったのは2018年、平昌冬季五輪2018では5Gタイムスライス映像、360度全方向VR、1218機のドローン編隊飛行などを披露、東京2020では3Dアスリート・トラッキングや VR トレーニングを導入し、北京冬季五輪2022では 初の5G初のライブ・ブロードキャストを実現させて、オリンピックの舞台でITテクノロジーのトップランナーとして名を馳せている。そしてParis2024ではAIオリンピックを掲げて登場する。


Live Cloud Broadcasting   出典 OBS
OBS Could Live Cloud Broadcasting
OBSはParis2024から初めてすべての国際映像信号(ホスト映像信号 ITVR)の配信をOBS Cloudで行う。OBS Cloudは世界4カ国の14か所のデータセンター(内2か所は高性能施設)に実装された。これまではIBCに大量の配信サーバーを仮設で設置してMRHsに配信していが、この配信オペレーションが大幅に効率化され負担低減を可能にした。世界中で高速・大容量の光ファイバー網のインフラ基盤が整備されたことがクラウド化実現の大きな要因である。
さらにクラウド化することで、MRHsのニーズに応じて映像・音声信号フォーマットのコンバートが自由に行うことができる。
世界中のMRHsは、自国の放送拠点でHD、4KUHD、SD、デジタル・ストリームなどニーズに応じたフォーマットを選択しての国際映像信号を受け取ることができる。MRHsは、開催都市のIBCに大量の放送機材や要員を派遣しないで、自国の放送オペレーション拠点での作業が可能になる。
OBSとMRHs双方の利便性は増し、大幅な効率化や経費節減が可能になった。
 クラウド化に成功した鍵は、中国のIT企業、阿里巴巴集団(Alibaba Group)が提供する巨大なクラウドシステムである。Alibaba Groupは2017年に、国際オリンピック委員会(IOC)最高位スポンサー「TOP」となり、2028年まで3回の冬季・夏季五輪をIT分野でサポートすることになった。
 「TOP」スポンサーの立場を活かして、2018年9月、Alibaba とOBSはクラウド上で作動する革新的なブロードキャスティング・ソリューション、OBS Cloudを立ち上げることで合意、ライブ中継信号の配信、ストレージ、コンテンツの制作をクラウド上でスムーズに行うことを可能にした。
OBS Cloudには最先端の Intel® Xeon® スケーラブル プロセッサが実装され、IBCやMRHsの高速・大容量接続などオリンピックの厳しい要件を考慮したソリューションを提供する。
東京2020で部分的に導入され、Paris2024では初めて100%のCloud Broadcastingが実施される。
 高速・大容量の光ファイバー網が整備されていない発展途上国等に対しての国際映像の配信は、依然として衛星による配信に頼ることになる。

OBS/Alibaba OBS Cloudを立ち上げで合意 2018年9月 出典 IOC

SDIからIPへ SMPTE ST-2110準拠したIPインターフェース(Internet Protocol Interface)実装
OBSは東京2020大会からIBCのシステムをすべて放送コンテンツのIP送信標準規格、SMPTE ST-2110に準拠したIPインターフェース(Internet Protocol Interface)を実装してIPプロダクションを実現した。
 OBSは国際映像の制作に伴う映像・音声信号の処理や機器間の接続はすべてIP信号で行う。
 IPプロダクションの実現で、IBCシステムの機器や要員は大幅に簡素化された。
 4K/UHDの登場で、OBSが処理する信号フォーマットは、4K、HD、デジタル・サービスと多様化し、処理するデーター量も飛躍的に増加してIBCシステムの肥大化に拍車をかけている。また配信するコンテンツや時間数も飛躍的に増えて、従来のSDIのオペレーションでは機器や処理が膨大になり支障が出始めてきた。
 IP化すれば、映像・音声信号に加えて制御信号、同期信号などの情報も同時に伝送可能になり、放送機器やケーブルを省力化することが可能になる。またマルチ・チャンネル配信が可能になるのでケーブリングは大幅に省力化を実現できる。
 IPインタフェースの基盤を確立するの成功した鍵も、中国のIT企業、阿里巴巴集団(Alibaba Group)が提供する巨大なクラウドシステムでだ。
 IP化の実現で、東京2020ではIBCの「肥大化」抑制に歯止めがかかり、面積で約30%(2016リオデジャネイロ大会比)、放送設備で約21%(同)の削減に成功した。
 OBSのオペレーションはすべてIP化されて、IBCは「国際放送センター」から「国際データセンター」に変貌していった。

SMPTE ST 2110
 世界の放送技術の標準化を定めるSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers 米国映画テレビ技術者協会)は、2017年9月、IPライブプロダクション相互運用性を図るSMPTE ST 2110規格を承認した。
  ST 2110規格は、IPネットワークで伝送される多様な基本情報ストリームの運搬、同期、および記述をリアルタイムで指定する新しい企画標準で、ライブプロダクションから放送プレイアウトまで使用可能。従来のSDIをIPに置き換え、IPプロトコル(IP protocol)とインフラストラクチャーを活用する新たな放送オペレーションを可能にする。(8)
 ST 2110規格では、映像信号や音声信号、補助データ信号の3種類の信号を別々にパケット化して伝送することが可能になり、各信号間の同期が精確にとれる仕組みが加わる。そのため、キャプションや字幕、多様なテキスト情報、複数の言語音声の処理などのオペレーションが容易になった。
SDIからIPへ
 放送オペレーションでは、これまで、映像制作から伝送まで放送分野の独自規格、SDIで運用されてきた。しかし、映像の高精細化(HD/4K/8K化)にともなって、情報量が飛躍的に増え、HD(2K)の画素数は1920×1080px(pixel)、4Kでは3860×2160pxと4倍になり、8Kでは7680×4320pxとさらに4倍になる。
 画質を改善するために、画像走査方式はインターレース・スキャン方式から、プログレッシブ・スキャン方式に変わり、ビットレートは約倍になる。
 また動きの速い映像でも滑らかに表示できる高フレームレート化も進み、30pから60p、120pに向上し、色表現の画質に関わるビット深度(Bit Depth)も、8bitから10/12bitに高度化することで情報量は飛躍的に増加する。
 伝送容量は、SD(270Mbps)からHD/1080i(1.5GBps)、HD/60P(3Gbps)、4K/30P(6Gbps)、4K/60P(12Gbps)、8K/120P(144Bbps)と増大し、伝送性能が追い付かなくなった。
 これに対して、イーサーネットを利用したIP伝送では、2000年には10Gbpsだったが、光デジタルコヒーレント方式(coherent)が開発され2010年には100Gbps、現在では400Gbpsや600Gpsを実現し、800Gbpsの開発も進んでいる。
 SDIでは同軸ケーブル1本で、HD1チャンネルの映像伝送が基本だが、イーサーネットIP伝送では、伝送容量の拡大に伴って、光ケーブル1本でHD/1080iが60チャンネル、4K/30Pが15チャンネルが伝送可能で、映像・音声信号の他に、制御信号、同期信号、インカムなど中継オペレーションに関わるすべての信号の伝送が可能になる。
 SDIの機器間の接続は、機器間の同期をとるために外部同期信号が必要となるが、IP接続では、各機器は外部同期信号は不要で、スイッチングハブに接続するだけのシンプルな構成となり、機器やケーブルなどのシステムの簡素化が大幅に可能となった。
 さらに放送オペレーション上で重要なのは、SDI伝送では片方向通信で送信側と受信側が固定されるが、伝送は双方向通信で、リモート制作などの柔軟性の高いシステム構築が可能になる。

OBSの国際映像の配信
 OBSはすべての競技や開閉会式を含むイベントは4KUHD/HDRでライブ中継制作(開会式や一部の競技は8K制作も実施)を行い、4KUHD/HDRを中心に、HD、デジタル・フォーマットにダウンコンバートして配信する。配信サービスの中核は“VandA Package”と呼ばれ、SDIとIPでサービスする。
・UHD VandA Package(12G-SDI)  
映像:3840×2160 pixels 音声:5.4.1immersive audio BT2100-2/BT2020 ITU準拠
OBSの配信の中心になるUHD VandA Packageの信号フォーマットは4K UHD/HDR映像、immersive5.4.1 音声。81チャンネルの中継Feedと72チャンネルの素材Feedが行われる。
・HD VandA Package(SDI)(1.485G-SDI 50Hz/59.94Hz)
映像:1920×1080i 音声:5.4.1immersive audio or Stereo SMPTE292M準拠
 4K UHD をダウンコンバートしてHD映像もサービス、82チャンネルで配信される。音声はステレオsound。
・IP VandA Package
18Mbps/2.4Mbpsで動画配信。MCFサービスの主力配信チャンネル。
 デジタルプラットフォームやソーシャルメディアはIP VandA Packageを利用する。
・8Kライブ中継コンテンツ配信 8K 7680×4320 pixels
NHKはOBSと協力してセーヌ川開会式やコンコルド広場のアーバンスポーツ(ブレイキング、スケートボード、バスケットボール3×3、BMXフリースタイル)を8Kライブ中継。8KコンテンツはIBCで希望するMLHsに配
信される。

PoPs (Point of Presence)
OBSでは、IPデジタル配信を強化するために、世界中に5か所のアクセスポイント、PoPsを設置した。アクセスポイントはParis1&2, Frankfurt, Miami, Tokyoの5か所に設置される。放送用インターネット通信速度は100Gbps、Posの帯域幅は東京2020に比べて32%増加させ、広帯域、高速、低遅延、安定性などのコネクティビティを改善した。
 MRHsは、IBCで国際映像の分配と受けて自国に伝送するオペレーションを行わず、PoPSにアクセスして国際映像を安定的に受け取ることができ、IPリモートプロダクションも容易に行うことができる。

MDS(Multi-Distribution-Service Platform)
マルチチャンネル配信サービス(MDS)は、英語のコメントやグラフックスが入っている「完プロ」コンテンツを放送機関(RHBs)に配信するサービスで、13チャンネルが配信(12×Sorts Channel,1×Olympic News Channnel)される。MRHsはそのまま放送することが可能なコンテンツだ。ウオームアップエリアのアスリートの様子やミックスゾーンの選手インタビューも含まれる。衛星やCouldでサービスされる。
 フルターンキーソリューションのMDSは費用対効果が高く、MRHsの放送オペレーション・スタイルを一変させた。MRHsは大会開催地に送る機材や人員を最小限に抑えて、自局で放送オペレーションを行うことが可能になる。MDSを利用して、が開催都市のIBCに放送機器を設置せず、要員を派遣しないで五輪中継放送を実施するMRHsが急増している。
 東京2020でMDSに参加したMRHsは52(2012年ロンドンでは23)、198の国と地域でこの配信サービスを利用して五輪大会のライブ中継放送が行われた。MDSで配信されるコンテンツは、英語のコメント音声やグラフィック付きで、13チャンネル(12スポーツチャンネル+オリンピックニュースチャンネル)がサービスされた。

マルチチャンネル配信サービス(MDS)   出典 OBS

MCF(Multi-Clip-Feed)
 スロー映像素材、別線カメラ素材、b-roll素材(補足映像、風景、資料映像)Behind the scenes素材(選手団の競技場の到着、ウオームアップエリア、競技場の雰囲気等)、Mix Zoneインタビュー素材、ビューティカメラ素材、会見素材などをライブ配信する。中継番組やニュースで使用される放送機関向けの「素材フィード」である。
 Paris2024では28Feed、合計2350時間のMCFサービスが行われる。
 主要放送機関はMCFで配信される多様な映像素材を使用して独自の番組やニュースを制作する。

MCF(Multi-Clip-Feed)

Content+
 すべてのコンテンツは、クラウド・ベース(Coud-base portal)でMRHsにサービスする。競技ライブ中継素材やbihind-the-scenes素材、ショート・ストリー企画、ソーシャルメディア用素材などが配信される。

OVP(Olympic Video Player)
 オリンピックビデオプレーヤー(OVP)は、デジタルプラットフォーム、Websites、apps、Social Media向けの高度なマルチプラットフォームビデオプレーヤーである。
 すべての競技中継がHD画質でライブとオンデマンド配信が行われる。ハイライト素材もサービスされる。
 Rio 2016で夏季オリンピック大会では初めてサービスを開始した。
 OVPはユーザーが自由にカスタマイズ可能なホワイトラベルソリューションで映像素材を提供する。 MRHsはコンテンツをそのまま放送に使用することも可能で、独自のコンテンツや映像素材、ライブコメント、他のチャンネルなどを追加してサービスするかを自由に選択できる。
 Rio2016では14のMRHsがOVPプラットフォームをカスタマイズして放送に利用した。

Olympic News Channnel
 OBSがMix zoneのインタビュー素材、b-roll素材、Behind the scenes素材、競技のハイライト、アスリートや競技の企画ストーリー(コメント付き)をOBS Media Serverから配信し、MRHsはそれぞれのニュース・番組で使用する。


マクロン仏大統領とバッハIOC会長  出典 IOC Media
史上初のセーヌ川開会式は“夢”に終わるか 瀬戸際のピンチ
 今年4月、マクロン仏大統領は、安全上の脅威が生じた場合、開会式の会場をセーヌ川から、トロカデロ広場やスタッド・ド・フランスに変更する可能性があると述べ、「プランB」や「プランC」に初めて言及した。これまではセーヌ川の開会式を変更する可能性について触れなかった。
しかしウクライナ戦争やイスラエルのガザ侵攻で戦闘が激化、モスクワ劇場銃撃事件を起こしたイスラム過激派組織「イスラム国」はフランスでも過去数カ月の間に複数のテロを計画していたことが明らかになったとして、全土の警戒レベルを最高に引き上げた。
 “華麗”と“安全”の狭間でフランスの苦悩は開会式まで続く。

出典 Paris2024





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廣谷 徹  Hiroya Toru
国際メディアサービスシステム研究所(IMSSR)
代表
横浜市青葉区あざみ野3-1-7-101 〒225-0011
Tel   045-903-9685 Fax 045-903-9685
Mobile 080-5059-3261
e-mail thriya@r03.itscom.net imssr@a09.itscom.met
Media-closeup Report
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