構造解析【CAE 静的応力】 Fusion 360 シミュレーション入門・基礎

Autodesk Fusion 360でのCAE(コンピュータ支援エンジニアリング)機能についての詳細な説明とデモンストレーションを含んでいます。初めにCAEの簡単な紹介があり、3Dデジタルモデル上で実世界の条件をシミュレートし、物理プロトタイプを作成する前に設計の機能性と性能をテストして検証する用途に焦点を当てています。

主な内容は、Autodesk Fusion 360を使用して構造解析を設定し実行する手順についてのガイドです。これには3Dモデルの作成、材料と条件の定義、負荷の適用、シミュレーションの実行が含まれます。メッシュ生成、結果の解釈、解析結果に基づいて材料の特性や設計寸法を変更するなどのさまざまな側面が説明されており、設計の最適化に向けた実践的な工学アプリケーションが示されています。

ドキュメントは、指定された条件下での構造強度を評価するためのCAEツールの使用について結論づけており、材料の種類や幾何学的形状の変更が設計の安全性や耐久性にどのように影響するかを示しています。

CAEの手順を順番

Autodesk Fusion 360でのCAE(コンピュータ支援エンジニアリング)プロセスを実施する手順を以下にまとめます:

3Dモデルの作成:

Fusion 360で新しいデザインを開始し、必要な形状をスケッチします。
スケッチを基に形状を押し出して3Dモデルを生成します。例えば、板に穴を開ける場合、板を押し出した後、穴の位置に円をスケッチして押し出しを使用して穴を作成します。
材料の設定:

シミュレーションタブに移動し、「新規スタディ」を選択します。
作成した3Dモデルに材料特性を割り当てます。Fusion 360では多くのプリセット材料が利用可能で、必要に応じてカスタム材料も設定できます。
境界条件と荷重の適用:

モデルに固定条件を設定して、解析中にモデルが所定の位置に固定されるようにします。
荷重を適用します。力の大きさ、方向、適用点を指定して、モデルにどのように力が作用するかを定義します。
メッシュの生成:

解析の精度と計算時間に影響を与えるメッシュを生成します。メッシュはモデルを小さな要素に分割し、それぞれの要素で物理的挙動を計算します。
メッシュの細かさは、解析の精度を高めるために調整可能です。
シミュレーションの実行:

すべての設定が完了したら、シミュレーションを実行します。このプロセスでは、コンピュータが設定に基づいてモデルの応力、変形、その他の物理的特性を計算します。
結果の解析と評価:

シミュレーションが完了すると、応力、変形量、安全率などの結果を評価できます。
結果に基づいて、モデルの設計を改善するための追加的な変更を行うことができます。例えば、材料を変更する、厚みを増やすなどの設計変更が含まれます。
反復処理:

必要に応じて、設計変更を反映させた新たなシミュレーションを複数回実行し、目的の性能を満たすまで反復処理を行います。
これらの手順を通じて、設計の早い段階で問題を特定し、最適な製品設計に繋げることができます。

 

線形性解析について教えてください

線形性解析は、構造解析の基本的なタイプの一つで、特に材料の応力と歪みが比例関係にある状況に適用されます。この解析は、材料の挙動がその弾性限界内にあり、応力が歪みに対して直線的に増加する場合(フックの法則に従う場合)に有効です。以下は、線形性解析の特徴と基本的なプロセスです。

特徴
比例性: 応力と歪みが直線的な関係にあり、一定の比例係数(ヤング率)で説明されます。
独立性: 個々の荷重成分や境界条件の影響が互いに独立しており、それぞれの影響を個別に評価し、後で合算することができます(重ね合わせの原理)。
弾性限界内: 材料がその弾性限界内で働くことを前提としているため、永久的な変形は発生しないとされます。
解析プロセス
モデルの作成: 解析対象の3Dモデルを作成し、適切なジオメトリと寸法を確定します。
材料特性の割り当て: 材料のヤング率、ポアソン比など、必要な物理的特性をモデルに割り当てます。
境界条件の設定: 解析する際の支持条件や固定条件を設定します。
外力の適用: 応力や荷重の適用方法と方向を定義します。
メッシュ化: 解析の精度を決定するメッシュ(ネットワーク)をモデルに適用します。メッシュは、小さな要素にモデルを分割し、それぞれの要素で応力と歪みを計算します。
シミュレーション実行: 上記の設定に基づいてシミュレーションを実行し、応力分布や変形を計算します。
結果の評価: 応力や変形の結果を評価し、設計の安全性や機能性を確認します。必要に応じて設計の改善を行います。
応用
線形性解析は、建築構造、機械部品、航空宇宙部品など、多岐にわたる分野で広く利用されています。特に、新しい設計の初期段階で問題を特定し、素早く修正するために有効です。また、比較的応答が予測しやすいため、初期の設計検討には非常に有効な手法です。

荷重による梁のたわみをCAE解析したい場合は非線形性解析ですか?

荷重による梁のたわみをCAE解析する際に、線形性解析と非線形性解析のどちらを使用するかは、梁のたわみの大きさや荷重の特性により異なります。以下の基準で判断することができます。

線形性解析の使用
小さな変形:梁の変形が小さく、材料が弾性範囲内である場合、線形性解析が適用されます。この場合、荷重と変形は比例関係にあり、梁の形状が初期形状から大きく変わらないと仮定されます。
負荷条件:均一かつ連続的に増加する荷重(例えば、一様に分布する荷重や中央に集中荷重をかける場合)でも、応力と歪みが比例する状況であれば線形解析が可能です。
非線形性解析の使用
大きな変形:梁が大きくたわむ場合、その形状の変化により荷重の影響が変わる可能性があります(幾何学的非線形性)。このような場合、非線形解析が必要です。
材料の非線形性:梁の材料が塑性変形を起こす場合や、荷重により材料特性が変化する場合(例えば、ヤング率が応力に依存する場合)には、非線形解析が適切です。
境界条件の非線形性:荷重の適用方法が複雑で、荷重が変形によって変化する場合(例えば、プレロードや摩擦による影響がある場合)にも非線形解析を行う必要があります。
実用的な判断基準
初期評価:梁の設計初期段階では、線形解析を用いて基本的な挙動を評価することが一般的です。これにより、設計が概ね適切かどうかを迅速に判断できます。
詳細評価:設計を最終確定する前に、特に重要な構造や安全が求められる部分では、非線形解析を行い、より正確な挙動の予測や最適化を目指します。
したがって、梁のたわみのCAE解析を行う場合、荷重の大きさ、変形の程度、材料特性、および具体的な設計要求に基づいて線形性か非線形性かを選択します。

降伏応力と最大引張応力の違いとCAEの際に選択する基準を教えてください

降伏応力と最大引張応力は材料の力学特性を表す重要なパラメータで、CAE解析において材料の設定や安全性評価に用いられます。これら二つの概念の違いとCAEでの選択基準について説明します。

降伏応力(Yield Stress)
降伏応力は、材料が弾性から塑性へ移行する境界の応力です。この応力値を超えると、材料は永久的な変形を起こし始め、荷重を取り除いても元に戻らない状態になります。降伏応力は、材料が耐えることができる最大の応力ではなく、材料が安全に使用できる限界と考えられます。

最大引張応力(Ultimate Tensile Stress, UTS)
最大引張応力は、材料が破断する直前の最大応力を指します。この応力値に達すると、材料は最終的に破壊し、完全に機能を失います。最大引張応力は、材料が一点で支持することができる最大の力の指標とされます。

CAEでの選択基準
CAE解析を行う際、降伏応力と最大引張応力のどちらを基準とするかは、解析の目的と材料の用途によって異なります。

降伏応力を基準にする場合:

材料が弾性範囲内でのみ使用される場合、すなわち永久変形を全く許容しない場合には降伏応力を使用します。
一般的に機械や建築構造物など、安全性が重要視される分野で選択されることが多いです。
降伏応力は、安全率を計算する際にもよく用いられ、設計の安全性を確保するために重要です。
最大引張応力を基準にする場合:

材料の最終的な破壊限界を評価したい場合や、一時的な過負荷がかかる用途で使用されます。
破壊力学の研究や、破壊前に材料がどの程度の力に耐えうるかを知るために用いられます。
特に、疲労や衝撃試験など、繰り返し荷重や急激な荷重がかかる環境での材料評価に役立ちます。
安全率の設定
CAE解析では、これらの応力値を基に安全率(Safety Factor)を設定します。安全率は、設計された最大荷重に対して材料がどれだけの余裕を持って耐えられるかを示す指標です。例えば、降伏応力を基に安全率を計算する場合、許容応力 = 降伏応力 / 安全率となります。この値は、設計荷重よりも大きくなければなりません。

これらの選択と設定は、製品の用途、安全要求、および運用環境に基づいて慎重に行われるべきです。また、解析結果に基づいて設計の改善を行い、最適な安全性と性能を確保することが重要です。

有限要素法のメッシュの形の違いによる解析精度について教えてください

有限要素法(FEM)におけるメッシュの形状は、解析の精度や計算効率に大きな影響を与えます。メッシュの形状には様々なタイプがあり、それぞれの形状は異なる解析要件やジオメトリーの複雑さに応じて選択されます。主要なメッシュの形状には以下のようなものがあります。

1. 三角形(2次元)/四面体(3次元)
特徴: 三角形は2次元解析に、四面体は3次元解析に使用されます。最も一般的なメッシュ形状で、ほとんどのジオメトリーに適応しやすいです。
利点: 複雑な形状や不規則な領域にフィットしやすく、メッシュ生成が比較的簡単です。
欠点: 四面体メッシュは比較的要素数が多くなるため、大規模な解析では計算時間とメモリ使用量が増大します。精度は六面体メッシュに劣る場合があります。
2. 四角形(2次元)/六面体(3次元)
特徴: 四角形は2次元解析に、六面体は3次元解析に使用されます。規則的な形状に適しており、高い計算精度を実現します。
利点: 高精度な解析が可能で、特に応力集中の評価や高い応力勾配が存在する場合に有効です。また、要素数を減らすことができるため、計算リソースを節約できます。
欠点: 複雑なジオメトリーに対してメッシュを生成することが難しく、メッシュ作成の手間が増える可能性があります。
影響
解析精度: 六面体メッシュは応力や変形の計算においてより一様な結果を提供し、特に構造物の応力解析において高い精度を求められる場合に推奨されます。一方、四面体メッシュは設定や調整が容易で、複雑な形状に対応可能ですが、同じメッシュ密度では六面体に比べて精度が落ちることがあります。
計算速度: 六面体メッシュは計算効率が良いですが、メッシュの生成が困難な場合があります。四面体メッシュは生成が簡単で、複雑なモデルに迅速に適用できますが、計算負荷が高くなることがあります。
結論
適切なメッシュ形状の選択は、解析の目的、対象となるジオメトリーの複雑さ、必要な精度、および計算資源の制限に基づいて行うべきです。一般的に、六面体メッシュは精度が高く推奨される場合が多いですが、四面体メッシュはその柔軟性から多くの状況で利用されます。

ドキュメントを参考に前回のCAE結果を残したまま新しくCAEを始める方法を教えてください

ドキュメントに基づいて、Autodesk Fusion 360において前回のCAE(コンピュータ支援エンジニアリング)結果を残したまま新しいCAE解析を開始する方法を説明します。この手法は「スタディのクローン作成」と呼ばれ、既存の解析設定を維持しつつ、新たな変更や異なる条件を試すことができます。以下がその手順です:

1. 既存スタディの選択
Autodesk Fusion 360を開き、対象のプロジェクトをロードします。
CAEモードに切り替えて、既に完了している解析スタディを選択します。
2. スタディのクローン作成
解析スタディを右クリックし、コンテキストメニューから「クローン作成」または「Duplicate Study」を選択します。
これにより、選択したスタディの全ての設定(材料特性、境界条件、荷重設定など)が新しいスタディに複製されます。
3. 新しいスタディの設定
新しく作成されたクローンスタディがプロジェクト内に表示されます。このスタディを開き、必要に応じて設定を変更します。
材料設定の変更: 材料プロパティを変更したい場合、材料設定を開いて新しい材料を選択または編集します。
境界条件の調整: 必要に応じて支持条件や固定条件を変更します。
荷重の追加または変更: 新しい荷重を適用するか、既存の荷重設定を調整します。
4. メッシュの再生成
変更がジオメトリーに影響を与える場合は、メッシュを再生成する必要があります。メッシュ設定に移動し、メッシュを更新してください。
5. 解析の実行
全ての設定が完了したら、解析を実行します。解析が完了すると、新しい条件下での結果を確認できます。
6. 結果の比較
旧スタディと新スタディの結果を比較することで、変更点が解析結果にどのような影響を与えたかを評価できます。
このプロセスを通じて、元のデータを保持したまま新たなパラメータでの解析が可能となり、設計の反復的な改善と最適化が行えます。また、異なる条件下での解析結果を直接比較することで、より深い洞察を得ることができます。

材料のAISIとはなんですか?

AISIは「American Iron and Steel Institute」(アメリカ鉄鋼協会)の略称で、鋼の分類と命名規則を設定している組織の一つです。AISIは、鉄鋼製品の規格を定めるために数多くの標準を提供しており、特に工業用鋼材の分類に広く使用されています。

AISIの材料分類システム
AISIの材料分類システムでは、炭素鋼、合金鋼、ツール鋼、ステンレス鋼などが含まれます。このシステムは、主に以下のような形式で表されます:

炭素鋼: 炭素含有量に基づいて分類され、一般的には「10XX」という形式で命名されます。例えば、AISI 1020は約0.20%の炭素を含む低炭素鋼です。
合金鋼: 各種の合金元素(クロム、ニッケル、モリブデンなど)を添加して特定の特性を持たせた鋼で、「41XX」や「43XX」などの形式で分類されます。例えば、AISI 4140は耐摩耗性と靭性が高いクロム・モリブデン鋼です。
ツール鋼: 工具製造に使用される鋼で、耐熱性や硬さが特に重要です。例えば、「T1」や「D2」などがあります。
ステンレス鋼: 「3XX」や「4XX」シリーズなど、クロムやニッケルを大量に含む鋼種で、耐腐食性に優れています。例えば、AISI 304は18%クロムと8%ニッケルを含むオーステナイト系ステンレス鋼です。
用途
AISIの鋼材は、その化学組成と物理的特性によって、さまざまな工業用途に適用されます。自動車産業、航空宇宙、建設、製造業など、幅広い分野で使われています。

組織としてのAISI
AISI自体は、業界の標準を設定し、研究を推進し、教育プログラムを提供することで、アメリカの鉄鋼業界を支援しています。彼らの設定する標準は、国際的にも広く受け入れられており、グローバルな製品と製造の標準化に寄与しています。