職場の施設で、今日利用者のおじいちゃんが亡くなった…。

大正生まれで、困ったことをたくさんするおじいちゃんだった。

去年、施設内で新型コロナのクラスター感染が起きた時は、このおじいちゃんが原因だったと思う。

陽性反応が出て、居室で過ごすようにお願いしているのに、何度も何度もホールに出てくる。

あまりにも言うことを聞いてくれないので部屋のカギを外から閉めたら、中で歩行器を扉にぶつけて大騒ぎした。

自分も頭にきて、力ずくでこのおじいちゃんを押さえようとして取っ組み合いになった…。

まあ、そんな大騒ぎも思い出すと懐かしくなる…。

決められた時間に1日1本吸っていた煙草は、3日前まで吸っていた。

この仕事に就いてから、これまでに何人も困らされた利用者さんがいた。

このおじいちゃんも、そんな中の一人だ…。

困らされた思い出がたくさんあるけど…、亡くなってしまうと寂しいものだ…。

葬儀屋さんがご遺体を運び出す時に、最後にその顔を見ると、本当に笑っているような顔に見えた。

これまでに多くの方を送って来たが、あんな表情を見たのは初めてだ。

困らされて、喧嘩のようになることもあったのに…。

何も言わなくなって最後にあんな笑った顔を見せられると、今までの困らされた出来事が全部良い思い出に変わるものだ。

本当に…、あんな最後の表情を見たのは、初めてだった…。

 

 

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