tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円安差益と経済成長と国際収支

2024年05月14日 14時29分45秒 | 経済

2024年度の上場企業の3月期決算が纏まって来たようです。

主要上場企業(TOPIX)の3月決算の数字がマスコミを賑わしていますが、3年連続の最高益という事で、却って今後が心配などと言う意見もあるようです。

SMBC日興証券の集計によりますと、前年度比で、売上高は6%の増加、営業利益は21%の増加、純利益は14%の増加と、まさに好調な増収・増益決算という事のようです。

製造業を始め商社などでも仕事そのものが順調だったという事が基本でしょうが、円安による為替差益が大きかった事で増益幅が大きかった事も指摘されています。

勿論、輸入が主要な業務であれば円安の場合は差損が出るわけですが、輸入原材料の価格上昇は価格転嫁がやり易くなったという事で多少救われている事もあるかもしれません。

日本の様に多様な輸出分野があり、また対外投資収益が大きい国は円安になりますと円建ての収益は円安になった分だけ増えるわけで、円安の方が経済が回り易いということが言えるでしょう。

ただこれは円建てだから言えることで、ドル建てにすれば円建てのGDPや賃金も、円安分だけ下がるわけです。

ですから、円安になって、利益が増えて、経済が上手く回るようになったという事はそれだけでは日本が得をしたことにはなりません。その円安を活用して国内経済を活発にして、経済成長率を引き上げないと、アベノミクス以来のように、世界の中での日本の一人当たりGDPのランキングは下がるばかりなのです。

ではどうするかといった選択は、強いて分ければ2本あります。1つは円安で利益が出たと喜んで、次に来る円高に備えて貯めておくという方法です。もう1つは、円安で増えた円建ての所得を日本経済の成長を高めるために活用して成長率を上げるという方法です。

現実は多分その中間のどこかになるのでしょうが、出来る事なら、成長率を上げることに沢山使った方がいいでしょう。

さて、設備投資、研究開発、海外投資、人材開発いろいろあります。政府は赤字国債で補助金を出してこれらを進めています。しかし上手く行きません。(理由はここをクリック

では今の日本経済が成長しない理由は何でしょうかと言えば、最大の理由は消費不振でしょう。消費不振の理由は「実質賃金マイナスでは好況は来ない」で書きました

出来るだけ早く実質賃金をプラスにしましょう。労使がその気になれば、賃上げはいつでも出来ます。

もう一つ、日本の生産性が低いことがありますが、その最大の原因は雇用者の4割近くが非正規だからではないでしょうか。非正規はきちんとした訓練を受けていません。ベテラン従業員に育っていないのです。日本の人材開発、産業人としての教育訓練の場は企業なのです。正規転換、教育訓練は必須だったのです。

経済成長のための投資は出来るだけ国内にしましょう。海外投資は海外の国々のGDPを増やしますが、日本のGDPを増やしてはくれません。

こうした積極政策には反対論があるかも知れません。そんな内需拡大中心の経済運営をやったら、賃金インフレになって、国際競争力を失う、資源のない日本は赤字国に転落する、赤字国になったら日本経済は成り立たない」という心配です。

内需拡大をやり過ぎれば、その通りです。アメリカの様に万年赤字国になったら、基軸通貨国でない日本経済は成り立たないでしょう。

従って、内需中心の経済成長追求の限度は国際収支を見て決めましょう。但し、差し当たってその心配はないでしょう。なぜなら、日本の労使は賢明ですから。


平均消費性向の上昇は続くか

2024年05月13日 12時28分47秒 | 経済

先週金曜日、総務省統計局から家計調査の家計収支編が発表になりました。あの日は「実質賃金マイナスでは好況は来ない」を書きました。この3月で実質賃金の対前年度月比が24カ月連続でマイナスになった事から2年間も連続は長すぎるという気持ちが強く、4月からの賃上げの効果への期待もあってでした。

今日、家計調査の勤労者世帯の世帯主の定期収入を見ましたら矢張り24カ月連続で対前年実質マイナスになっていました。

消費者物価の上昇のせいだという面もありますが、物価の上昇ばかりを言って、賃金上昇についての積極的な検討が不十分という状況が、今回の春闘で変わったのかどうか、4月分以降の統計の発表が気になるところです。

今春闘の賃上げが主要企業の満額回答も含め一段高になった事は、連合の発表でも出ていますが、5%を越えたと言っても、定昇込みですから平均賃金はそこまで上がりません。

消費者物価の方は、積年の積み残し分を引き上げるといったムードに、円安による輸入物価の転嫁意識、政府の補助金の終了など、どうも値上げムードが止まらないようです。

そうした中で、たよりは平均消費性向の上昇で少し明るい面が出てこないかという所です。

勿論実質賃金が上がらないのに、消費支出を増やせと言っても、勤労者世帯の方は、そんな能天気にはとてもなれませんと言われそうです。

然し2022年の経済成長率が高かったのは、実質賃金マイナスの中でもコロナも終息とのこともあり平均消費性向が年間を通じて高くなった結果です。

そして少しムードが変わり、23年24年の春闘での賃金要求も高くなり、経営側からも(円安の影響もありましたが)賃上げOKサインが出たという効果もあったように思えるところです。

という事で今年3月の平均消費性向ですが、下の図のように2月に続いて上昇(0.8ポイントですが)となっています。

 均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯)      

            資料:総務省「家計調査

GDP統計から言えば、個人消費支出はGDPの半分を占めていますから、個人消費が1%増えるという事はGDPを0.5ポイント(名目値)押し上げる事になります。

消費堅調という事で便乗値上げが起きるようなことが無ければこの0.5ポイントはそのまま実質成長率の上昇です。

今年度の政府経済見通しでは実質経済成長率は1.3%ですから、個人消費が伸びれば経済成長率には大きな効果があります。

それが日本経済の今後の賃上げ率上昇の可能性を大きくし、岸田さんの言う成長と分配の好循環につながる事にもなるのです。

日本の家計の平均消費性向は過日長期推移で見ましたように、長期不況の中で随分下がってきました。これが日本経済を低成長にしたという面も否定できないのです。

嘗ての日本の家計は、明日の賃金上昇を期待して、元気に消費をしてきました。三種の神器、3C、新3C等買いたいものもいろいろありました。経済成長期はその購買意欲が経済を成長させるのです。

今の日本経済はかつてのように実質10%もの成長をしなくてもいいのです。実質3%の安定成長でも大いに結構です。個人消費の活発化で経済循環が順調に回り始めれば、その程度は十分可能になるのではないでしょうか。

多分日銀の考えているのも、実質成長率3%、インフレ目標2%で、名目経済成長率5%といった日本経済ではないでしょうか。


狭い庭も花から実の季節へ

2024年05月11日 14時47分48秒 | 環境

毎年ゴールデンウィークは我が家の狭い庭が花の季節から実の季節に変容するならわしになっています。

花(鼻)の下が長く伸びきったチューリップを端から抜いて[ありがとう」と礼を言いながら市のごみ収集に出したりして殺風景になった花壇を耕し、畝を立ててコンポストから1年間の生ごみで出来た堆肥を埋め込みます、その作業が終わるとホームセンターに行ってキュウリ、ナス、ミニトマトの苗を用意し、天気予報で雨の日があればその前日に移植します。雨の日が無ければ水をやります。

こうしてゴールデンウィークが過ぎると花壇はミニ菜園になります。

今年は少し模様替えをし、キュウリは一昨年ごろまで穴を掘って生ごみを埋めていたところに植え、花壇の方は、ナスとミニトマトだけにしてみました。

キュウリは高く伸びますし、何年も生ごみを埋めてきたところですから肥料は沢山たまっているだろうと思ったからです。思い通りの結果になるかはまだわかりません。

という事で、例年は3本ずつだった苗が4本ずつになり、順調に育てば収穫の盛りには供給超過になるかなと考えましたが、たまにはそれもいいかという事にしました。

毎年繰返しているこの春・初夏の我が家の行事も昔は楽しく気軽にやっていましたが、この所は加齢とともに体力減耗で、息子たちが一家で来るゴールデンウィークでないと出来そうになくなって来ています。

ところで、狭い庭でも、土と太陽と水があれば、こうして人間がその発生以来積み上げてきた努力を実際に追体験として反芻する事が出来、自然はそうした拙い努力に対しても、それ相応の結果をきちんと出してくれるのです。

毎年やっていると失敗も成功もありますが、それぞれ考えてみればそれなりの理由があってのことです、大方は肥料や水遣り枝の伸ばし方の失敗や、葉の陰で見えないところに生った実が、気が付かない内に大きくなり過ぎ、お化けキュウリやお化けナスが出来てしまうといったことで、人間に原因があるのですが、そんなことも自然はやっぱり素直で正直と感心の材料にもなります。

自然と付き合えば、人間も自然と素直で正直になるのかもしれませんが、人間には植物や他の動物にはない高度な思考力などというものがありますから、それが複雑に絡んで不自然な事が起きるのかもしれません。

世の中の事も、それが自然か不自然かという眼で見れば、解り易くなるのではないかなどと考えたりします。

また余計な事を書きましたが、今年は3種類4本の苗が元気に育つように自然の力を当てにしながら頑張ろうと思っています。


実質賃金マイナスでは好況は来ない

2024年05月10日 14時39分55秒 | 経済

実質賃金が前年比マイナスという月が連続で24カ月になりました。円安でトヨタ自動車の利益が5兆円に届きそうだとか、主要商社の利益も7社中5社で歴代2位の好決算などと言われていますが、平均賃金がまる2年間も前年比実質マイナスでは好況感を感じろと言っても無理でしょう。

外国から来るお客さんは、ラーメンもスシも安くてうまい、お店も綺麗でみんな親切、日本は最高だねと言ってインバウンドは絶好調で、お役所はオーバーツーリズム(お客の来過ぎ)をどうしようかと心配だというのですが、何だか日本人は低収入を我慢して、外国人にサービスするのが仕事か、などと言いたくなる状況です。

日銀は、こういう状況は一時的で、その内、実質賃金もプラスになりますから、好況感も出て来ますというのですが、最近は、「その内」が来年になるのではなどという見方もあるようです。

このブログでも6月ごろには遅くとも実質賃金は黒字転換とみてきましたが、中小下請けの賃上げ状況などの情報が入ってくると、やっぱりもう少し賃上げが欲しかったかななどと考えたりしています。

それに加えて、アメリカのインフレがFRBの予想以上にタフで、なかなか収まらないという事でFRBが金利を下げる時期がどんどん遠くなると、円安がさらに進むのではないかといった国際投機資本の動きも心配です。

財務省では円安が進み過ぎると輸入インフレが起きる恐れがあるから為替介入をしてでも、円安の進行は止めると言っていますが、効果は限定的でしょう。

日銀が金利を上げれば円安は簡単に収まるでしょうが、金利が上がると借金だらけで対応の準備が出来ていない政府は困るでしょう。

当面、アメリカは強いドルの方が都合が良いといった状況も考えられますから、投機筋の思惑による円安の行き過ぎをいかに防ぐかが、財務省、日銀の腕の見せどころでしょう。

とはいえ、そうした短期的なテクニカルな解決策だけで為替が本格的に安定することはないでしょうから、経済政策の在り方の再検討も必要なのではないでしょうか。

アメリカでは賃金が上がって、サービス部門が元気ですが、住宅部門や財の生産部門が不振のようです。もともと無理感のあるインフレ目標2%を3%にすれば、多分動きやすくなるだろといった気がします。

賃金の上がらない日本では、労使が物価の上昇を勘案して賃金の引き上げ幅をも少し大きくして先ず実質賃金の上昇を実現し、その後でインフレ目標2%に改めて挑戦というのが、やり易く、国民も安心するシナリオではないかとった感じがします。

変動相場制の下では、国際投機資本の思惑で、為替レートの行き過ぎや乱高下は避けられないでしょう。

つまり経済政策を策定しても、為替レート次第で、実体経済の動きが計画通りいかないといったことが起きる可能性が大きいわけですから、経済計画の目標数値なども、柔軟に臨機に読み替え組み換えをして、政策当局や労使や国民が対応し易いように考えることが必要なのではないかという気がするところです。


政治に金がかかるのは当然と言いますが

2024年05月09日 15時46分17秒 | 政治

戦後のほとんどの時代に政権党であった自民党が、裏金問題で揺れています。

今迄は問題にしなくてもよかったのに、今回、はしなくも実態が明らかになってみると、国民にとっては、なんでそんなにお金が動くことになるのかよく解らないというのが本音でしょう。

政治問題に詳しい人はよく「政治はカネがかかるのです。だからこうした問題は避けられないという面もあるのです」などと解説してくれます。

そう言われてみれば、日本の国を動かすという大事な問題をやっているのだから、いろいろとカネがかかるのも当然なのかなどと納得してしまったりするのです。

然しテレビのニュースでやっているのを見ていますと、一般のサラリーマンが1年働いても頂けないような現金を税金も払わないで受けとって、さてどうしたものかと自分の机の引き出しにしまっていたとか、自分の書いた本が売れないから、政治活動のためのカネでそれを大量に買い取って知人に配ったなどといった事が起きているのです。

そんなことを聞いていますと、何だ、政治には金がかかるというけれど、政治家には随分カネが入るものだとビックリしたりします。

政党は英語では「パーティー」というのだそうで、だからではないでしょうが、自民党はパーティーが得意で、会費は5万円、10万円、20万円、それ以上とかで、出る飲食の質はだいぶ下がってきているなどといったことも聞きます。これでは政治にカネがかかるのではなくて、政治家をやっているとカネが入ってくるのかとますます解らなくなります。

今、与党の自民党と公明党で、パーティーに出た人で20万円以上出した人は名前を記録するがそれより少ない人は記録しないとか、いや10万円以上だ、いや5万円以上だなどと揉めているようですが、簡単な食事なら会費は寄付のようなものだから、皆確り記録しなければ義理が悪いのではないかなどと心配したりします。

そんなに金を集めて政治につかうのか、やっぱり政治にはカネがかかるのかと思ってよく考えますと、国会で法律を作ったり、日本中の行政をきちんとやるためのカネは、国民が税金で払っているはずだと気が付きます。

ならば、政治に金がかかるというのは何にかかるのかという事になり、いろいろ聞いてみますと一番カネがかかるのは選挙だという事のようです。

「私に投票して下さい」「わが党に投票してください」と選挙カーで回るのにそんなにカネが要るのかというと、それより、何時あるか解らない選挙に備えて、選挙区の人々の心つかんでおかなければならない、それが大変だ、という事のようです。

それなら「私は有権者の付託に応えてこんなに活動しています」といことを見せるのが一番で、それが政治家の仕事でしょう、おカネは何に使うのですか、という事になるのです。

結局、おカネが要るということは、政治に使うのではなく、おカネを使って自分の票田を耕すことに重点を置くというこれまでの習慣の結果でしょう。

政治というものにはカネがかかるという言葉の実態は、選挙に金がかかるという事だったのでしょう。

そして今、選挙民がおカネで耕されることに疑問を感じているのです。選挙民がおカネで耕されなくなれば、政治にはカネがかからなくなり、自民党議員も、国民のために立派な仕事をしなければならない事に気づき、日本の政治も一皮剥けるのではないでしょうか。