路線バス運転士になった元ウェディングプランナーの乗務日誌

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路線バス運転士こーくんのブログ

神戸市営バスの事故。意識したいハインリッヒの法則。

ここ数日、神戸市で市営バスが交差点に突っ込み多数の死傷者を出した事故が話題になっています。

事実、このブログのアクセス数も事故があった2019年4月21日は普段の3倍、翌22日は4倍と、世間の関心を感じ取ることができます。ただ、このブログのアクセス数が突出するときは、そのほとんどがバスに関する事故が発生したときなので、それはそれで心が痛みます。

今回の事故で亡くなられた方のご冥福と、負傷された方のお見舞いを申し上げます。

さて、気になる原因ですが、一部では「アクセルとブレーキの踏み間違いが原因か?」「前方不注意だった?」などと報道されています。この記事を書いている4月28日の段階では事故原因について明確な警察発表はないのですが、私自身もこの2点が極めて濃厚(どちらかと言えば、アクセルとブレーキの踏み間違い)であると思っています。

ちなみに、バスのオートマチック車も基本的には乗用車と操作性は何ら変わりません。乗用車でも「有段変則のトルコン式」「無段変速のCVT式」などミッションに種類はありますが、アクセルを踏めば自動で変速しながら速度は上がり、離せば速度は落ちていきます。

唯一異なるのは、後ドアを開けているときは動力がカットされる機能が搭載されている点です。これは保安基準によって設置が義務付けられているのですが、これが事故に関係しているとは考えにくいと思います。

【関連記事】「新ワンマンバス構造要件」で定められたバスの扉を開閉するためのシステムが運転士に不評な話

ハインリッヒの法則

今回の事故、私が注目しているのは「過去に事故件数は13件」という点です。

1986年に採用された運転手は15年の定年退職後、再任用職員として週4日間勤務。02年~18年に人身3件、物損10件の事故があった。運転手に瑕疵のない事故も一部含まれており、精査するという。同局は「事故の数は担当する路線の交通状況が大きく影響する」などとし、再任用した判断に問題はなかったとの認識を示した。

神戸新聞NEXT 2019.4.25

このニュースを聞いたときに真っ先に思ったのが、「1件の重大事故の背景には、29件の軽微な事故があり、さらに300件のヒヤリハットが存在する『ハインリッヒの法則』」です。「1:29:300の法則」とも呼ばれるこの理論は広く用いられていますのでご存知の方も多いかもしれません。

と言うのも、運転士に瑕疵(かし=過失のこと)のない事故もあり、担当路線の交通状況が大きく影響する。と説明されても「過去16年間で事故が13件って、ちょっと多すぎない?」と言うのが私の率直な感想です。

今報じられている信号の見落としにしても、アクセルとブレーキの踏み間違いも重大なヒヤリハットです。そこに、過去の事故件数を聞くと、どうしても重大事故に至った因果関係を考えてしまいます。

一方、「だったら、再雇用を止められなかったのか?」という意見も出てくるでしょう。しかし、現実問題として「事故件数が多いから再雇用をお断りする」と言う判断ができるほど、事業者に人員の余裕はないと思います。

以前から書いているように、法令上限ギリギリまで勤務をしなければ回らないのが今のバス業界です。最近は運転士がいないので減便や欠便とする事業者もいるほどです。事実、私の営業所でも運転士を統括する運行管理者(通称、運管)の仕事の大半が人の穴埋めに割かれており、今回の事故を周知するところまで手が回っていません。(それはそれで問題なのですが…)

このようなバス業界から再び悲しい事故を防ぐためには、賃上げ、運転士増、運転士の若返り、過重労働の削減、さらには運転士としての適正が微妙な方は配置転換するなどの対策が必要だと思いますが、少子高齢化、定年、収入などの課題も残ります。

また、衝突・追突防止装置などのハード面についても、すぐに解決できる話ではないので、事業者としては頭が痛いところだと思います。

いずれにせよ、 たった一つの事故で、自分だけでなく関わる人すべての人生が大きく変わる仕事に従事していることを改めて痛感した次第です。

さしあたり、バス停停車中や、交差点で長時間停車するときはニュートラル(N)に加え、パーキングブレーキを作動させるなどの安全対策を自主的に行うようにするとともに、ヒヤリハットを防ぐために指差し確認の徹底や、冷静な運転を今まで以上に心がけるようにしましたが、この記事を見ている同業の方がおられましたら「お互い、ご安全に…」

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