みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

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2024-05-19 18:13:04 | お知らせ

ブログ短編0581「何か好い」を再公開しました。

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1458「不死身」

2024-05-18 18:07:43 | ブログ短編

 この男、不死身(ふじみ)の身体(からだ)を持っていた。見た目は若造(わかぞう)だが、もう千年以上(いじょう)生きている。彼は転々(てんてん)としながら暮(く)らしていた。歳(とし)を取らないので同じ場所(ばしょ)に落ち着いてしまうと、まずいことになるからだ。ここ数年は都会(とかい)にいて占(うらな)いの仕事(しごと)をしていた。人間(にんげん)の悩(なや)みは何百年たっても同じみたいだ。
 そんな彼の前に一人の若(わか)い女が現れた。彼女は人を捜(さが)していると…。彼は、人捜しなら他(ほか)をあたった方がいいと断(ことわ)った。しかし彼女はどうしても引き下がらない。彼女は、
「これは、あたしの感(かん)なんです。あなたなら見つけられるはずです」
 彼は困(こま)った顔で女を見つめた。ふと、この顔…どこかで見たような…。彼女は続(つづ)けた。
「名前(なまえ)は真之助(しんのすけ)といいます。歳は、あなたぐらいかなぁ。それと…顔は分からないんです」
 彼は驚(おどろ)いた。真之助は昔(むかし)の自分(じぶん)の名(な)だ。この女は…何者(なにもの)なんだ? 彼は探(さぐ)るように、
「そんなざっくりでは捜しようがないですね。だから占いで…ということですか?」
「まぁ…。その人は京都(きょうと)に住(す)んでいたんです。もうずいぶん前に…。これは先祖(せんぞ)から託(たく)されたことなんです。祖母(そぼ)も母(はは)もずっと捜していました。今度は、私の番(ばん)なんです」
 彼ははっきりと思い出した。平安(へいあん)の頃(ころ)、京の都(みやこ)で恋(こい)に落(お)ちた女に似(に)ている。
 彼女は続けた。「私、その人と添(そ)いとげて…赤ちゃんを授(さず)からないといけないんです」
「バカなことを…。そいつはとっくに死(し)んでる。そんなことは止(や)めるべきだ」
「いやです。私の身体がそれを求(もと)めているんです。これは我(わ)が一族(いちぞく)の使命(しめい)なんです」
<つぶやき>もし先祖からこんなことを託されたら…。どうしたらいいんだ? 困るよね。
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0003「怪事件ファイル」

2024-05-14 17:56:46 | 短編物語

 「蜘蛛の糸」3
 どれほど時間がたったのか、太陽が西の山に隠れようとしていた。二人は茂みや藪の中を探し回り、へとへとに疲れ果てていた。
「日が沈む前に見つけないと」山田は西の空を見てつぶやいた。
「ねえ! 本当にあるんですか?」東側の斜面を探していたいちごが叫んだ。
「ええ、どこかにあるはずなんですが」山田は自信なげに答えるしかなかった。
「まったく、何で私がこんなことしなきゃいけないのよ」いちごは汚れた服を気にしながらつぶやいた。いちごの髪にはクモの巣がはりつき、顔や手は泥だらけになっていた。
 その時、穴の前でおとなしく座っていたアリスが異様な声で鳴き始めた。その鳴き声に混じって、がさごそと何かが這い出してくるような無気味な音が聞こえはじめた。
「まずい!」山田はそう叫ぶと祠に駆け寄った。そして、祠を元の位置に戻して穴を塞いだ。アリスは山田のそばで、鋭い唸り声を繰り返した。
「どうしたんですか!」そのただならぬ様子を見ていちごが叫んだ。
「そこにいて下さい!」山田はそう言うとリュックから御札を取り出して、何やら呪文を唱え始めた。そして、その御札を祠に貼り付けた。すると無気味な音が消え、アリスもおとなしくなった。山田はいちごに向かって、「急いで見つけて下さい。お願いします」
「そんなこと言われても…」いちごはそう言いながらも、あたりを手当たり次第に探し回ってみた。でも、どんなにあせってみてもなかなか見つからなかった。なかばあきらめかけていたとき、ドンという音とともに地面が揺れるのを感じた。驚いたいちごが顔をあげると、山田が押さえていた祠が大きく揺れていた。何かが穴の中から突き上げているようだ。山田は必死になって祠を押さえ、アリスもさっきよりも大きな声で唸りだした。
「山田さん!」いちごはそう叫ぶと、足場の悪い斜面を降りて行った。
「来るな!」山田はいちごに叫んだ。「もう間に合いません。早く逃げて下さい!」
「そんなことできるわけないでしょう」そう言った途端に、いちごは足を滑らせて転んでしまった。ちょうど日が沈む時の最後の明かりが、あたりを一瞬、明るく照らし出した。
 その明かりを反射したのか、いちごは下草の中に光るものを見つけた。手を伸ばして草をかき分けてみると、そこには探していた封印石が光り輝いていた。
「あった!」いちごは嬉しさのあまりそう叫ぶと、斜面を転がるように駈け降りていった。
 廃屋の中で疲れ切った顔の二人が、囲炉裏の灯(ひ)を囲んで簡単な食事をとっていた。
「あれは、何だったんですか?」いちごは食事の手を止めて訊いた。
「さあ、何だったんでしょう」山田はあいまいに答えた。「この村の伝説では、昔、この辺りに大蜘蛛がいたそうです。たびたび作物が荒らされたり、村人が襲われたりして困っていた。そんな時、村に偉い修験者がやって来て、あの塚に大蜘蛛を封じ込めたそうです」
「その伝説とあの被害者と、どういう関係があるの?」
「たぶん、被害者が封印石を動かしたんでしょう。それで狙われたんだと思います」
「そんなバカな。でも、係長にどう報告するのよ。こんなこと、信じてもらえないわ」
 山田は微笑んで、横で寝ているアリスの頭をなでた。雲里村は暗闇に包まれていた。
<つぶやき>事件解決。でも、二人には次の怪事件が待っていた。それは、次の機会に…。
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1457「食らう」

2024-05-10 17:57:44 | ブログ短編

 これは京(きょう)の都(みやこ)でのお話しだ。京ではいにしえから魑魅魍魎(ちみもうりょう)が闊歩(かっぽ)していたという。中でも、人を食(く)らう鬼(おに)は人々から恐(おそ)れられていた。それは、現代(げんだい)になっても――。
 夜、京の街(まち)を歩いている男がいた。少し離(はな)れたところに別(べつ)の人影(ひとかげ)が…。男は、どうやらそれに気づいているようだ。男は人通りのない路地(ろじ)へ入って行く。そこは街灯(がいとう)もなく薄暗(うすぐら)かった。しばらく歩くと、男は立ち止まって振(ふ)り返った。後をつけていた人影は女だった。突然(とつぜん)のことに、女は身(み)を隠(かく)す間(ま)もなく立ちつくした。
 男は言った。「誰(だれ)だ? 俺(おれ)に何か用(よう)でもあるのか?」
 女はどうするか迷(まよ)っているようだ。男は女に近づきながら、
「俺のことを知ってるのか? 忘(わす)れろ、その方が身のためだ」
 女は意(い)を決(けっ)してバッグからナイフを取り出した。そして、男めがけて突(つ)き進(すす)んだ。
 女が目を開(あ)けると、ナイフは男の手の中に握(にぎ)られていた。女はナイフを引き抜(ぬ)こうとしたがびくともしない。男はナイフを強(つよ)く握りしめた。どういうわけか、男の手から血(ち)が流(なが)れることはなかった。女がナイフから手を放(はな)すと、男はそれを路地の暗(くら)がりに放(ほう)り投(な)げた。
「どういうつもりだ?」男は女を見つめて呟(つぶや)いた。「めんどくせぇなぁ…」
 男の顔が赤黒(あかぐろ)くなって、頭から二つの角(つの)が現(あらわ)れた。そして、男の身体(からだ)が大きくなっていく。女は恐怖(きょうふ)で身動(みうご)きもできなくなっていた。大きな太(ふと)い手が女の身体をつかみあげると、大きな口の中へ押(お)し込んだ。後(あと)には何も残(のこ)らなかった。
<つぶやき>女は鬼の存在(そんざい)を知ってしまったようです。どうして一人で立ち向(む)かったのか?
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0006「いつか、あの場所で…」

2024-05-06 17:55:23 | 連載物語

 「大空に舞え、鯉のぼり」3
「こらっ!」突然、ゆかりが叫んだ。「高太郎、何してんの」窓から高太郎君が顔を出す。「さっきから、こそこそこそこそ」
「いいだろ別に何してても…。そっちこそ何してんだよ」
 窓越しに言葉が飛び交う。
「私たちはいま大事な話をしてるの。邪魔しないでね」
「どうだか…。迷惑かけてるんじゃないの」
「そっちこそ、覗いてたくせに」
「…誰が覗くか。お前さ、その性格なおした方がいいよ。ちょっとはその子見習って…」
「その子って? 誰のことかなぁ?」
「誰って…。ほら、その、隣にいる…」
「あんたさ、さくらのこと好きなんでしょう」
<えっ? そんな!>私は慌てて…、「私は違うから、そんなこと…」なに言ってるんだろう、私…。
「さくら、ほんとにこんなんでいいの? こいつ性格悪いよ」
<もう、ゆかりったら…。>
「お前に言われたくないよ。だいたいな、昔っからそうなんだよなぁ。いつも人に責任押しつけて。作じいの柿、盗んだときだって…」作じい? どっかのおじいさん?
「えっ、何のこと? 忘れちゃった」ゆかり、何したんだろう?
「なんにも知らない俺に、これあげるって言って柿、渡しただろ。俺が盗んだって思われて、作じいにむちゃくちゃ怒られたんだからな」
「あんたが鈍くさいからよ」
<それ違うよ、盗んじゃだめ。>
「ねえ、さくら。いいこと教えてあげる」
<えっ?> 私、ついていけない。
「高太郎ね、木から下りられなくなってビーィビーィ泣いたことあるの。可笑しいでしょう」
<えっ、そうなんだ。>
「なに言ってるんだよ。あれは、お前が下りられなくなったから、助けに行ってやったんだろう。忘れたのかよ」優しいとこもあるんだ。
「あれ、そうだったっけ? でも、情けないよなぁ。下見て足がすくんじゃって…」
「お前が、あんなとこまで登るからだろ」そんなに高かったのかな?
「まったく、都合の悪いことはいつも忘れるんだよなぁ」
 この二人、仲が良いのかな? 悪いのかな? いつも喧嘩ばかりしている。でも、二人とも楽しそうだ。相手のことが分かっているから、何でも言い合えるのかな? 私もこんな風になれるといいなぁ。二人の話には割り込めない。私はただ笑って見ているだけ。
<つぶやき>幼なじみっていいですよね。何でも言えるし。でも、近すぎるとかえって…。
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