▼ 炎症が起きるプロセス
皮膚や大腸の中などでの炎症。熱や充血、痛みは、さまざまな理由で起きます。
今まで紹介したのは、攻撃を受けた細胞が、SOSの信号を出し、それに気がついた好中球ちゃんやクロスケ、将軍たちが駆け付け、敵をやっつけるため、そこが戦場になり炎上すること。
みんなは、もともとはウイルスが細菌だったらしく、全員、自由に動き回ることができます。
今回紹介するのは、自ら動く免疫細胞ではなく、窒素、酸素、水素からできた物質です。
油アラキドン酸。可愛いイメージ画像でなくてごめんなさい。
▼ 物質による炎症の発生
大腸などの炎症は、物質である油アラキドン酸が原因でも起きます。
◎ 図
1)上は、血管の中を流れるすい臓で作られたハサミたと
下は、細胞と油性細胞膜の一部です。
2) 細胞がウイルス/細胞の侵入を受け、炎症が開始。
3)細胞の中から発信されたSOS信号が、血管内に入る
4) ハサミが細胞の中に入り、細胞膜の中のアラキドン酸を切り離す
5)アラキドン酸がプージンに変身。 U 型からV型へ
6)プージンが炎症を起こし外敵と戦う
▼ プージンは味方だけど、潰瘍性大腸炎/クローン病のときは、迷惑千万
炎症を起こしてばい菌やウイルスと闘う物質プージン。血管に入れば、痛みも起こす。からだの持ち主に、非常事態が起きていることを知らせるために。
でも、潰瘍性大腸炎/クローン病のように不要の炎症が起きてしまったら、プージンの働きを止める必要があります。
プージンは、油アラキドン酸の変身姿。ならば、変身前の油アラキドン酸の動きを封じ込めたらよい。
▼ 油アラキドン酸を封じ込める作戦
油アラキドン酸をどうしたらプージンに変身するのを食い止められるのか。考えられるのは、次の二つの作戦です。
作戦A: 細胞膜の中にいるアラキドン酸が、細胞膜の外へ出ていかないように、切り取り係のはさみの仕事を邪魔する。
作戦B: 細胞膜の中から細胞の中に移動したアラキドン酸の身柄を取り押させる。
▼ 油アラキドン酸を取り押さえるステロイド
薬ステロイドの働きは、作戦Aです。
薬ステロイドは、錠剤をでも、点滴注でも、血管の中に入って全身を流れます。大腸や関節や、打撲、ケガした場所で炎症が起きると、細胞からSOSの信号が出ると、細胞膜の中に入ります。アラキドン酸がハサミで切り取られる前に、薬ステロイドは、ふたつの間に身を入れて、ハサミの仕事を阻止します。
こうすれば、アラキドン酸は、細胞膜の外に出ることはありません。
▼ ハサミは逮捕し過ぎてはいけない
薬ステロイドもハサミも、血管の中を移動している。だったら、ハサミをさっさと逮捕すればよいとも考えられます。でも、勝手にどんどん逮捕してしまうと、血管の中にハサミがなくなってしまいます。
そんなことが起きてしまうと、困ったことが起きます。たとえば、背中におできがたとします。おでき細胞たちは、からだの持ち主にそのことを知らせるため痛みを起こしたい。でも、薬ステロイドが、ハサミを血管の中で摂り押させてしまっていれば、細胞膜の中の油アラキドン酸を切り離すハサミがない。
油アラキドン酸が細胞の中に入らないと、プージンに変身できない。すると、炎症も痛みも起こせない。
そうなると、ばい菌やウイルスの天下となり、おできは悪化していく。
炎症も痛みも必要です。からだを病気から守るために。