講演「なぜ日本人技術者が海外ファッション業界で評価されるのか」概要 8 | 伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

伝統技術を現代のライフスタイルに合わせて発信するプロジェクト  ”ARLNATA” アルルナータ ディレクターの独り言

約11年に渡るヨーロッパの様々なステージのラグジュアリーブランドを経て日本に帰国し、衰退産業とも言われている日本の伝統技術を今の形で発信するためのプロジェクト”ARLNATA”アルルナータを主催しているディレクターの独り言です。
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講演「なぜ日本人技術者が海外ファッション業界で評価されるのか」概要8


. 最後に

日本であろうと世界であろうと、それぞれの企業やブランドが自分の個性を出そうと必死に努力することは当然であり、それぞれが無数に存在する企業(デザイナー)の中からなんとか抜きん出てやろうと日々悪戦苦闘しているのは言うまでもありませんし、毎日流されるニュースを見ているだけでも様々なアプローチでその特徴を打ち出そうと多くの人が今まさに挑戦しているのを強く感じます。このように個々人や個々の会社が努力することはもちろん必要なことなのですが、今の日本に必要なのは個性の有無、デザインの良し悪しや技術開発などの個で出来る努力だけではなく、日本人全体(ファッション業界の従事者のみならず一般の消費者を含む)としての意識の改革こそ必要ではないかと思うのです。日本ではもう服は売れない、ヨーロッパで売れないと注目されない、海外の市場を見ていかないと生き残れないなどの否定的・自虐的な意識があるのならば肯定的・前向きに変えていくこと。そして日本は素晴らしい技術者がいて、彼らによって素晴らしい作品がまさに今も作られているのだという事実を多くの人が認識し、そしてそれをいかに適切な手段で次に伝え、消費者に浸透させられるかを改めて考え直す時ではないでしょうか。(具体的な)日本の技術者や技術力のレベルの高さを業界人間のみだけでなく日本人全体で共有すること、それらが地に根付くということ、これが目指すべき次の段階だと強く思います。


日本の消費者は他の消費国とは違った次の段階にいます。もうブランドの名前だけで買うことはなく、自分自身が製品について心から納得をしないと消費しなくなっている人が多くなってきているのです。”売れないのではなくて簡単には買わなくなった”というのがより正しいのだと思います。それが証拠に、”売れない”と言われているその国でなぜ複数のヨーロッパの老舗ブランドが大々的に展示会を設け、コレクションをわざわざ東京で開くのでしょうか。それは日本はまだまだ大きなマーケットであり、そして何よりも日本人の消費行動が世界の先端を進んでおり、その将来の行動パターンに注視せざるを得ないからだと考えます。しかしながらその大きなマーケットの中でもヨーロッパブランドがまだまだ強いというのも事実で、彼らには歴史という誰にも覆すことができない揺るぎない優位性があり、それを知った上で我々の消費行動パターンを綿密に予見しながら巧妙なブランディングを仕掛け、多くの消費者が影響を受けているのです。それでは我々は何ができるのかというと、ヨーロッパにも対抗でき、かつ日本の大きな強みである”ものづくりの国”という武器を携えた上で、ヨーロッパ製品には見出しにくい魅力を消費者に訴え続けるという日本的なブランディング戦略を展開するのです。そしてその結果、「技術に対する見識が深く、製品の価値をラベルにとらわれずに判断する」を近い将来の日本人の消費行動にしようではありませんか。これは日本だからこそ可能であると信じています。その具体性については、業界に従事する各人が今まさに考え、そして実行していかなければならない喫緊の課題だと思うのです。


次回は 『あとがき』です



<参照用既出リンク>

はじめに
第1章 ファッションのグローバル化 
第2章 世界で活躍する日本人 
第3章 日本人の海外で評価される一般的な特性
第4章 3Dデザイナーの存在
第5章 ヨーロッパのファッション業界の実態、ものづくりに対する意識の違い
第6章 ”日本人が重宝されている”の否定的側面
第7章1項 日本アパレルの技術者育成への示唆1<海外での経験者を国内で積極的に採用する>
第7章2項 日本アパレルの技術者育成への示唆2<海外進出重視のビジネスモデルと並行し、国内マーケットの刷新を図る>
第7章3項 日本アパレルの技術者育成への示唆3<作り手と消費者との距離感を再考察する>

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