PR、マーケティングの世界は大きく変わりつつあります。
かつては広告(ペイドメディア)を打つことで認知を広げるのが主流でしたが、今ではシェアードメディアやアーンドメディアの力が強くなっています。消費者自身が情報を拡散し、第三者の評価が信頼性を生む時代です。企業側が情報をコントロールできないからこそ、より消費者から信頼を得やすく、影響力のある情報となるのです。
では、ペイドメディアやオウンドメディアはもう意味がないのでしょうか?決してそうではありません。PESOモデルは、それぞれのメディアの強みを活かし、戦略的に組み合わせることで、企業の認知度や信頼性を最大化する考え方です。
本記事では、PESOモデルの基本概念から具体的な活用法まで詳しく解説します。
PESOモデルとは?

マーケティングにおいて、効果的な情報発信を実現するためには、「どのメディアをどう組み合わせるか」が重要になります。
まずはじめに、PESOモデルとは何か、PESOモデルの基本概念から、それぞれのメディアの特徴、トリプルメディアとの違いについて詳しく解説します。
PESOモデルの基本概念(ペイド、アーンド、シェアード、オウンド)
PESOモデルは、企業のマーケティング戦略において、ペイドメディア・オウンドメディア・アーンドメディア・シェアードメディアの4つを組み合わせる考え方です。各メディアの特性を理解し、適切に活用することで、より効果的な情報発信が可能になります。
ペイドメディア
企業が広告費を支払い、ターゲットに向けて情報を届ける手法です。リスティング広告やSNS広告、インフルエンサー広告などが該当し、即時的なリーチが可能です。しかし、広告の掲載をやめると効果が薄れるため、継続的な投資が必要になります。
オウンドメディア
企業が自ら運営し、自由に情報を発信できるメディアを指します。公式サイトやブログ、メルマガなどが含まれ、長期的なブランディングに役立ちます。ただし、認知拡大には時間がかかり、短期間での集客には向いていません。
アーンドメディア
口コミやレビュー、ニュース記事など、消費者や第三者の発信によってブランドが取り上げられるメディアです。広告よりも信頼性が高い一方で、企業側が完全にコントロールできないため、ネガティブな情報が拡散するリスクもあります。
シェアードメディア
SNSなどを通じてユーザーがコンテンツを共有・拡散するメディアを指します。TwitterのシェアやInstagramのリポストなどが該当し、広告費をかけずに情報が広がる可能性があります。しかし、炎上や誤情報の拡散といったリスクもあるため、慎重な運用が求められます。
PESOモデルが登場した背景
デジタルメディアの発展により、従来のマーケティング手法では消費者の信頼を獲得するのが難しくなっています。かつては、企業が広告費を投じてテレビCMや雑誌広告を活用するペイドメディアが主流でした。しかし、近年では消費者は企業が発信する情報よりも、第三者の評価や口コミ、SNS上での評判を重視するようになっています。
この変化によって、アーンドメディアやシェアードメディアの影響力が強まり、トリプルメディアではカバーしきれない情報流通の新しい流れが生まれました。こうした背景から、ペイド・オウンド・アーンド・シェアードメディアを統合的に活用するPESOモデルが登場し、企業のマーケティング戦略において不可欠なフレームワークとなりました。
例えば、最近ではテレビCMだけでなく、ストーリー性のある動画広告がSNS上で話題になるケースが増えています。これらの広告は、一方的に企業のメッセージを伝えるのではなく、視聴者が共感し、自発的にシェアしたくなるように設計されている点が特徴です。
トリプルメディアとの違い

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PESOモデルとトリプルメディアの最大の違いは、シェアードメディアの存在です。
トリプルメディアでは、企業がコントロールできるメディア(ペイドメディア、オウンドメディア)と、第三者の影響が強いメディア(アーンドメディア)の3つに分けられていました。しかし、SNSの発展により、企業と消費者の情報発信が交差する場面が増え、「消費者が企業の情報を拡散する」という新たなメディアが誕生しました。
PESOモデルの視点から見ると、この2つには次のような違いがあります。
• トリプルメディア:企業が主導する情報発信が中心
• PESOモデル:消費者の参加や拡散を前提とした情報戦略
例えば、企業がYouTubeでCMを公開し、それがSNSでバズれば、ペイドメディアとしての広告が、シェアードメディアとして拡散される流れが生まれます。このように、PESOモデ
ルでは、メディア間の境界がより曖昧になり、連携した戦略設計が必要になります。
PESOモデルの各メディアの特徴
PESOモデルを理解する上で重要なのが、ペイドメディア・アーンドメディア・オウンドメディア・シェアードメディアのそれぞれの役割と特性です。
どのメディアも単独では効果が限定的ですが、適切に組み合わせることで、マーケティング施策の効果を最大化できます。ここでは、それぞれのメディアの特徴と活用方法について解説します。
ペイドメディア

ペイドメディアは、企業が広告費を支払って情報を発信するメディアです。代表的なものとして、リスティング広告、SNS広告、バナー広告、インフルエンサー広告などがあります。最大の特徴は、短期間で大きなリーチを獲得できる即効性の高さです。
例えば、新商品の認知拡大を目的とする場合、SNS広告を活用すれば、ターゲット層に向けて迅速に情報を届けることが可能です。さらに、細かいターゲティングができるため、見込み客にダイレクトにアプローチできます。
一方で、広告を出稿し続けなければ効果が持続しないというデメリットもあります。ペイドメディアのみを頼りにすると、予算の消化が早く、長期的なブランド構築が難しくなります。そのため、オウンドメディアやアーンドメディアと連携させ、広告の効果を最大限に活かす戦略が必要です。
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アーンドメディア

アーンドメディアは、消費者やメディア、第三者によって企業やブランドが評価・発信されるメディアを指します。
具体的には、口コミ、レビュー、ニュース記事、SNSでの言及などが該当します。ペイドメディアと違い、企業が直接コントロールすることはできませんが、第三者からの評価が加わることで信頼性が高まるというメリットがあります。
たとえば、ある企業の商品が高評価の口コミを集め、SNSで拡散されれば、広告を打たなくても自発的に認知が広がります。また、メディアに取り上げられることで、企業のブランド価値が向上し、消費者の購買意欲を刺激することもできます。
しかし、アーンドメディアには企業側がコントロールできないリスクも伴います。ネガティブな口コミや批判的なレビューが拡散されると、ブランドイメージに悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、日頃から良質なコンテンツを提供し、消費者との信頼関係を築くことが重要です。
オウンドメディア

オウンドメディアは、企業が自ら運営・管理するメディアを指します。
代表的なものには、公式サイト、ブログ、メルマガ、YouTubeチャンネルなどがあります。最大の特徴は、企業が自由に情報を発信できるため、ブランディングやリード獲得に活用しやすいことです。
例えば、SEO対策を施したブログ記事を公開すれば、検索エンジン経由での流入が増え、継続的に見込み顧客を獲得できます。また、ホワイトペーパーやメールマガジンを活用することで、顧客との関係性を深めることも可能です。
ただし、オウンドメディアは成果が出るまでに時間がかかるというデメリットもあります。短期間での集客には向いておらず、効果を実感するまでに数ヶ月から数年かかることもあります。そのため、ペイドメディアやアーンドメディアと連携し、認知拡大と信頼獲得の両面からアプローチすることが重要です。
シェアードメディア

シェアードメディアは、SNS上で消費者が情報を共有・拡散するメディアを指します。
Twitterのリツイート、Instagramのリポスト、TikTokでの拡散などが代表的な例です。PESOモデルにおいて、このシェアードメディアが重要視されるようになったのは、企業が発信した情報を消費者が自主的に広めることで、大きな影響力を持つようになったためです。
たとえば、ユーモアや共感を生む広告キャンペーンがSNSで拡散されれば、企業の認知度は一気に向上します。また、消費者同士の口コミがシェアされることで、オウンドメディアやペイドメディアにはない影響力を発揮します。
しかし、シェアードメディアには炎上やネガティブな情報の拡散といったリスクもあります。企業が意図しない形で話題になるケースもあり、一度広がった情報は回収が困難です。そのため、戦略的に拡散を促しつつ、リスク管理も徹底することが求められます。
PESOモデルを活用する際のポイント・注意点

PESOモデルを効果的に活用するためには、各メディアの特性を理解し、それらを適切に組み合わせることが重要です。
単独のメディアに依存すると、コストがかかりすぎたり、拡散力が不十分になったりするリスクがあります。そのため、ペイドメディア・オウンドメディア・アーンドメディア・シェアードメディアをバランスよく組み合わせる戦略が求められます。
また、PESOモデルを成功させるためには、予算の配分やターゲット層に応じた戦略設計、適切なKPIの設定も不可欠です。以下に、具体的なポイントを解説します。
メディアの得意不得意を組み合わせることが重要
PESOモデルでは、各メディアが持つ強みと弱みを理解し、目的に応じて適切に活用することが求められます。
例えば、新商品の認知度を向上させたい場合、ペイドメディアを活用して短期間でターゲットにリーチし、その後オウンドメディアで詳細な情報を提供するのが効果的です。同時に、アーンドメディアやシェアードメディアを活用し、口コミやレビューを通じて自然な形での拡散を狙うことで、信頼性の向上につながります。
また、予算内でどのメディアにどれだけ投資すべきかを考えることも重要です。それぞれのメディアには得意分野と不得意分野があるので、どのくらいの予算をかけられるのかによってどのメディアを使うのかが決まってきます。
例えば、広告予算が限られている場合、オウンドメディアとアーンドメディアを中心に戦略を組み、ペイドメディアは最低限の補助として活用するといった工夫が求められます。
PRプランナーの存在が不可欠
PESOモデルを実践する際、メディア全体を俯瞰し、戦略的に活用できるPRプランナーの存在が欠かせません。 PRプランナーは、ペイド・オウンド・アーンド・シェアードメディアをどのように組み合わせるかを考え、各施策を効果的に連携させる役割を担います。
それぞれのチャネルを知っていても、企業の目的や経営状況によってどのようにそれぞれのメディアを掛け合わせるのか判断し、戦略を立てることが一番重要だからです。
特に、PESOモデルはメディア同士の連携が重要なため、戦略の全体像を把握し、適切な指標管理ができるPR担当者を置くことで成功率が大きく向上します。
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顧客ファネルに合わせた活用
顧客は、ブランドや商品を知り、興味を持ち、比較検討し、最終的に購入するまでにさまざまな情報を受け取ります。そのため、PESOモデルを活用する際には、顧客の購買プロセス(顧客ファネル)に合わせたメディア戦略を設計することが重要です。
例えば、次のような流れが考えられます。
- 認知フェーズ(ブランドや商品を知ってもらう)
• ペイドメディアを活用し、ターゲット層に向けた広告を展開
• シェアードメディアで話題性を作り、SNSでの拡散を促す - 興味・検討フェーズ(商品・サービスへの関心を深める)
• オウンドメディアで詳細な情報を提供(ブログ記事・ホワイトペーパー・ウェビナーなど)
• アーンドメディアで第三者のレビューや口コミを活用し、信頼性を強化 - 購入フェーズ(コンバージョンにつなげる)
• ペイドメディアのリターゲティング広告で検討中のユーザーを再アプローチ
• オウンドメディアの導線を最適化し、購入や問い合わせへスムーズに誘導 - ロイヤルティ・拡散フェーズ(リピーター・ブランドアンバサダー化)
• シェアードメディアを通じて、ユーザーが自発的に情報を発信する仕組みを作る
• アーンドメディアで、ユーザーの声を活用したコンテンツを展開
まとめ:メディアによって特性が異なり、単独では成果が出ない

PESOモデルは、企業のマーケティング活動において理想的なメディア活用の形ですが、その運用には課題も多く存在します。
ペイドメディアのコスト、オウンドメディアの長期的視点、アーンドメディアの信頼獲得、シェアードメディアの炎上リスクなど、それぞれのメディアに特性があり、単独での活用では成果が限定的になりがちです。
特に、限られたリソースの中でこれらを最適に組み合わせ、効果を最大化するには、戦略的な設計と運用スキルが求められます。中小企業にとって、これらすべてを自社でカバーするのは現実的に難しく、プロのサポートを受けながら運用するのが合理的な選択肢となるでしょう。
シェイプウィンでは、SNS・SEO・PRを統合したマーケティング支援を行っています。PESOモデルの活用に課題を感じている企業は、ぜひ一度ご相談ください。