黒川博行「悪逆」 | 世界文学登攀行

世界文学登攀行

世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。

ジャンルは警察小説というのだそうである。
第58回吉川英治文学賞受賞作品。

緊張感のある文章と、多くの謎を含みながら進行する展開に、思わず手に汗握りながら読み進めた。
実はこの作品は、元旦から読みはじめて、お正月休みを使って読んだのだけれど、ゆったりした気分でするこういう読書もいいものだなと思った。
600ぺージ弱ある大著だが、最後までわくわくしながら読み終わった。
実に面白かった。

リアリティや、軽妙なやりとり、特徴的な人物の登場、全編にみなぎる緊迫感など、作品に没頭させる仕掛けもたくさんあり、かなりレベルの高い作品だと思う。
読書のレビューサイトにもたくさん登録があることから、この作品にも、この著者にもファンが多くいるのだろう。

ただ、残念なこともあって。
前半にちりばめられた多くの謎は、伏線となって回収されるはずで、どういう種明かしになるのだろうと期待していたけれど、最後はそういう部分を全部ぶっ飛ばして、雑に終わってしまったかなというきらいはあった。
もしかして、途中でストーリーを変える必要でもあったのだろうか?というくらい、前半のあれはなんだったんだという気分になった。

あと、結局なんで犯人はそんな行動をしたのだろうかという部分が、全くよくわからない。特に最後の方の行動は、さすがに無理があるように思う。これも、最初描いていた構想をまとめきれなかったのかなと思ってしまうくらい、よくないなと思った。あと500ページくらい書いたっていいんだから、もうちょっと丁寧に話をまとめてほしかったなと残念に思う。

ネットで調べてみたら、連載時と単行本では結末が180度違うんだそうだ。
正直それは、どっちでもいいかなと思った。そこじゃない。

と、なんだか酷評しているみたいになってしまった。

望んでいた場所には連れて行ってもらえなかったけれど、読みごたえがあって、文章を読む楽しさは間違いなくあった。こんな分厚い本を最後まで読み通せたのは、著者の剛腕によるものであることは間違いない。

 

 

 

 

AD