環境が悪いのにイノベーションなんかおきるわけが無い | 20年前のお値段です

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現在の私たちが常識だと思っていることがかつては全く違っていたなんてことがよくあります。
そんな昔と今の常識の違いについて思ったことを書いていきます。



パナソニックのスマートテレビを民放各局でもう押し合わせて,CM拒否をしたという事件がちょっとした話題です。

テレビ局が新型テレビのCMを拒否するのは馬鹿馬鹿しいとは思いますが、営利企業なんですから結局のところは彼らの勝手です。

お好きなように自分で自分の首を絞めれば良いとしか思えません。

実際このエピソード自体はどうでも良いです。問題はテレビ局のお偉いさんたちが何を守りたくて、こんな暴挙に出たのかということじゃないでしょうか。

ネット上の意見ではおおむね既得権益がらみで、テレビ局を批判している意見が多いですが、どうもそういうことではないような気がする。

なぜなら、こんなことをしたら、ネット上の住民から猛反発を受けるに決まっているし、いくらなんでもそれくらいのことすらわからないほど浮世離れしているということもないでしょう。


一般的には日本企業が、パラダイムを変更しかねないような、破壊的イノベーションを採用するのに消極的だってことは、ほとんど常識として語られています。
そしてたいていの場合、批判する側はその原因を企業風土や国民性に責めを負わせて、日本人は変わらなければいけないといった道徳的な結論を導き出します。

話の筋は通っているし、現在の日本企業の体たらくを思えばそのとおりといいたくなるけど、やっぱりそれは違うといいたい。

企業風土ではなくて、やっぱり環境が悪いんだと思う。

日本社会はここ15年間ずうっとデフレが続いてきていて、投資に対するリターンが期待しにくかった。

そりゃあ1億円の開発費を投じて作り上げた新製品が爆発的に売れて、100億円の利益が見込めるなら、どんな企業だって投資をすると思う。
ところが、それほどのブームが発生するような空気がこれまでの社会にありましたか?

経営者だってわかってると思う。販売した製品が爆発的に売れるような熱気みたいなものが今の社会に無いっていうことくらい。

たとえばゲームだってそうでしょ。ほんの15,6年前は新作ゲームが発売される前なんて、テレビCMをがんがん打って、時には特番をやったり、他業種とメディアミックスで大いに盛り上げていた。
今はそんな派手な宣伝なんてちっとも見かけない。

当時は宣伝費なんか湯水のように使っていたんだろう。何故そんなことができたかといえば、それだけ金をかけても十分おつりがくるだけの売り上げが見込めたから。

どこまで厳密に計算していたかは知らないが、「これだけ派手に宣伝して、売れないって事はないだろ」程度の楽観的な感覚や、そう思わせる世の中の熱気があったんだと思う。

とにかく売れると思うから思い切り金もかけるし、新規参入も増えるわけです。基本的に経営者なんてのは金が大好きだから、金儲けのにおいがすればほっといたって、参入します。
逆に今みたいに不景気が延々と続いている状態じゃ、下手に金をかけられない。利益を生むどころか投資した額の回収すらおぼつかないわけで、誰も彼も様子見ばかりでちっとも新規参入をしない。

日本企業がイノベーションを起こさないとか、新分野に手を出さないとかいったって、こんな不景気な世の中じゃ儲かる気がしないでしょう。
今の世の中で、巨額の開発費を投じて宣伝費もガンガンかけて新製品を市場に投入したとして、目論見どおりに売れるだろうか。無理ですよ。

どう考えても売れる気がしない。ましてや経営者ならそんな博打みたいなことはとてもじゃないができないでしょう。

だったらある程度の利益が確実に見込める製品を、生産数も調整しながら市場に出していくのが賢いやり方です。

要するに環境を改善しないで、やれイノベーションだの新産業創出だのと、企業のしりをたたいても無駄なんです。逆に環境さえ改善すれば、頬って置いてもイノベーションが生まれる。

ガラパゴスと揶揄される携帯電話だってそうでしょ。デフレだったから各企業も最小限の投資しかしなかったために国境の壁を敗れなかったわけで、もし世の中の景気がよくて、出せば売れる!巨額の開発費をかけても余裕で利益を出せる環境だったらどうだったんだろう。
儲かりそうだという環境があれば、経営者は儲け話を見逃すはずがないから、新規参入が相次いで、各企業がしのぎをけずるなんてことになったんじゃないだろうか。

多くの会社が市場競争を繰り広げることによって、自然にイノベーションが起こったかも知れない。もしかしたら10年早くスマートフォン的な物が生まれたなんてこともあったかもしれない。

そう考えると日本のデフレって、もしかしたら世界的損失なんじゃないかな。デフレに陥ってからの年月で、日本でうまれたのに育つことなく消えてしまった技術っていっぱいあったように思う。
環境が悪いために花開くことなく消え去っていった製品たちも、もっと早くデフレを脱却していれば世界を変えるほどのものに育っていたかもしれない。

そう考えるとデフレが15年も続いてきたことって、日本にとってどころか世界にとっても、かなりもったいないことだったんじゃないでしょうか。



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