医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

従来の帯状疱疹ワクチンの有効性

2023年12月16日 | 感染症
最近50歳以上の人に対して、帯状疱疹ワクチンのコマーシャルをよく目にします。たくさん売れるように危機感をあおって「3人に1人はかかる」と言っていますが、私の周りを見回しても、そんなにいない印象なので、少しリサーチしてみました。

これは厚生労働省が公表している資料です。この中に宮崎県の110万人を調査した資料があります。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001165467.pdf
これによると、50歳以上の場合、罹患率は10年ごとに約7%です。

私が診ている患者からも「3人に1人がかかるのですか?」と尋ねられるので、私はこのデータから、「それは間違いです。○○さんは70歳なので、今後90歳まで生きるなら7%+7%の14%、つまり7人に1人の割合です。80歳まで生きるなら7%、14人に1人の割合です」と答えています。

「3人に1人がかかる」と言うのが誤りである原因は、「50歳以上の人を対象としているコマーシャルなのに、0歳児が今後の人生で罹患する確率を述べている」ことです。


50歳の人がこれまで帯状疱疹にかかるのを免れているのなら、その分を差し引かなければならないです。これはちょうど、2023年で男性の平均寿命は81歳ですが、これは0歳児の平均余命なので、50歳まで生き長らえた人のその後の平均余命は31年ではなく、33年である考え方に似ています。

最近は帯状疱疹の予防に対して効果が高い「不活化ワクチン」が売り出されていますが、1回約22,000円で2回接種しなければなりません。

ちなみに、従来の「弱毒生ワクチン」(ビケン)(約8000円1回のみ)でもある程度効果はあるという論文が先月発表されました。

Effectiveness of the live zoster vaccine during the 10 years following vaccination: real world cohort study using electronic health records.
BMJ 2023 Nov 8:383:e076321.doi: 10.1136/bmj-2023-076321.


接種後10年以上が経過した帯状疱疹の生ワクチンの有効性を評価する目的で、北カルフォルニアの2007年1月~2018年12月の電子記録を用いて50歳以上の150万人の「帯状疱疹の発症」、「帯状疱疹後神経痛」、「眼部帯状疱疹」、「帯状疱疹による入院の予防」を追跡しました。

150万人のうち34%が帯状疱疹生ワクチンの接種を受け、そのうち7万5,135人が帯状疱疹を発症し、このうち4,982人(7%)で帯状疱疹後神経痛、4,439人(6%)で眼部帯状疱疹を認め、556人(0.7%)が帯状疱疹により入院しまた。

「帯状疱疹の発症」に対する有効率は、1年目は67%、10~12年後は15%、「帯状疱疹後神経痛」に対する有効率は、1年目は83%、10~12年後は41%「眼部帯状疱疹に対する有効率」は、1年目は71%で5~8年後は29%、「帯状疱疹による入院に対する有効率」は、1年目は90%で5~8年後は53%でした。

追跡期間における全体のワクチン有効率は、帯状疱疹の発症に対しては46%、帯状疱疹後神経痛では62%、眼部帯状疱疹では45%、帯状疱疹による入院では66%でした。


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