Liliです☆


昨日、金魚釣りで釣った出目金が死んでいました。

名前はミキ幹夫。

娘がつけた名前です。


小学生らしい?ネーミングセンス。

もう一匹の金魚の名前はキンタロウ。

まだら模様が特徴の不細工金魚。

娘が言うには女の子らしいです。


小学生の頃、ちょっとしたことが不思議な出来事に感じませんでしたか?


*********************************

通学路を歩いているとギラギラとしたお店があった。

いつも気になっていた。

なんなんだろう?このお店は?

その、お店の名前は

「スナック ひふみ」

スナック?ひふみ?

なんだろう?

スナックと言ってもお菓子屋さんぽくないし・・・


小学3年生の頃だった。

色々な事柄に興味があった。

本能的にわかることもあった。


男の人は女の人が好きになるんだよ。

男の人は女の人のおっぱいが見たいんだよ。

男の人は女の子も好きなんだよ。

笑いながら友達と話をしていた。

大人びたことを言っているつもりだった。


大人の準備が始まる年頃の私は、

「スナックひふみ」はいかがわしい場所なのかもしれない、

大人しか入ってはいけない場所だということが分かっていた。


ひふみの看板には電球がたくさんついており、

お店の周りにはタバコの吸い殻が何本も落ちていた。


ある土曜日の下校時「スナック ひふみ」の扉が少し開いてた。

そーっと中を覗こうとすると、テコテコっとマルチーズが出てきて、

私に向って「キャン!」と吠えた。

それに続いて、パンチパーマをあてたおばさんと髪の長いクルクルパーマの

おばちゃん姉さんが私を括目した。


ギラギラの店内。誰のサインかわからないような色紙あり、ベロア調のカウンターにある少し高めの椅子が置いてあった。

ひんやりとした店内からタバコの匂いと大人の香りが漂ってきた。


「あ、すんません。」

頭を下げてのぞき見したことを謝った。


「あんた、何年生?3年生くらいかな?」

長い髪のクルクルパーマおばちゃん姉さんは、

がりがりに痩せている胸をこちらに向けて気怠そうに言った。

昨日から飲んでいるお酒が抜けないでいるのだろう。


「は、はい。3年生です。」


「あんた、ここで宿題やっていく?おやつ食べる?」


私は思いもよらないことを言われたことで、頭の中が真っ白になりパニックになった。

「つ、ついまてん!ママがママが知らない人と話しちゃいかん!て言うもんで、だでもう帰ります!」


遠くでマルチーズがキャンキャン!私に向って鳴いているのを聞きながら、瞬きもしないで走っていた。

あそこは大人の領域だ。私はまだ入ってはいけない。何が悪いとかはないけど、あそこにいたらママがきっと私のことを嫌いになるんじゃないか?子供なのに大人の世界に誘われたことに戸惑いを隠せないでいた。

子供は子供の世界がある。不思議に思っていた場所からの突然の誘いは大人からだった。

まだ、大人にはなりたくない。

あの頃は大人の世界と子供の世界が分かれていた。

走りながら自分の子供の匂いがする世界に戻ろうと必死に走って逃げた。

走るのは得意じゃないのに歩きなれている通学路を走っていた。


家に帰って宿題をした。お手伝いをした。自分から進んで何でもやった。

いつもは言われなくちゃやらない。

悪いことを言われたわけでもないのに悪いことをしたような気分だった。


ある登校時に、スナック ひふみの前の道路でマルチーズが死んでいた。


がりがりのおばちゃん姉さん、きっと寂しがるんだろうな。

教えようかな。知らないんだろうな。

寝ているんだろうな。起きても、気怠そうにしているんだろうな。

だから、たぶん、気づいていない。


下校時、道路にはマルチーズはいなかった。


マルチーズの死んでいた側には

庭に咲いていたような花が供えられていた。