Stelo☆ panero

変態ですがよろしくお願いします。更新は気分次第、気の向くままに。新題名は、エスペラント語で、星屑という意味だったり。

【風船魔導士 クオラ】 第十七時限目 アルギナ・アルカは薬草です⑤

2016-11-16 12:00:00 | 妄想小説

1)

 クオラは、落ち着くように深呼吸をして、風船魔法で作り出したカラオケマイクに向かった。


    「 聴いてください。【まぢかる☆ばるん ふわりん】OP、今日もふわりん。」 


 今、流行りのアニメ。【まぢかる☆ばるん ふわりん】のOP曲が、風船魔法で出したカラオケから流れ出す。無伴奏では、ジャ○アンよりも音痴なクオラは、ノリノリのイントロの中、熱唱した。すると、静かだったアルギナ・アルカが、コウモリの翼を忙しくはためかせ、曲に合わせて踊りだした。くるくると踊る様は、なんだか可愛らしいアルギナ・アルカだが、攻撃するにしても、焼くにしても、面倒くさいことになる、厄介な薬草なのだ。いくら見た目が、コウモリの翼が生えたダイコンとはいえ、油断は禁物である。曲が終盤に近付くころになると、踊り疲れたのか、ふらふらと安定なく漂いはじめて、ぽてんと床に落ちてしまった。

 

  「 あっ、落ちた。今のうち…。」

 

 クオラは、眠り込んで空から落ちたアルギナ・アルカを、持っていた包丁で輪切りにした。


  「 ふぅぅっ。なんとか、退治できたわね。」


 輪切りにされて息絶えたアルギナ・アルカが、ぽんっと音を立てて、しぼんだ緑とピンクの二つの風船に変化した。


  「 あっ、ラッキ~♪」


 クオラは、風船を拾い集め、ポシェットの中に入れ込むと、アルギナ・アルカが通せんぼをしていた、隠し部屋の更に奥に、廊下があることを発見した。


  「 廊下があるね。」


  「 行ってみましょ?」


 タフィが、奥に向かうよう提案したので、クオラは乗ることにした。


2)

 探索の風船魔法は、付属に半透明のマップが、施術者の前に展開される。

 クオラは、そのマップを見ながら、青い光点に向けて、暗がりの廊下を歩いている。


  「 ここ、みたいだけど…。行き止まりじゃない。」


 クオラは、ガーゴイルの像が鎮座する台座しかない場所を見ながら、ため息をついた。


  「 もしかしたら、何らかの仕掛けがあるのかも? 」


  「 えぇぇっ。そんな安直な…。」


 タフィの推理に、クオラは、盛大にバカにしながら、片手を像に預けて、重心をかけた。


  「 きゃぁっ!」


 すると、ぐるりと像が九十度回り、何やら重々しい音を立てて、台座がクオラとは逆方向にスライドをしていくと、床にぽっかりと台座の底よりも、少し狭いくらいの正方形の穴が開いた。

 支えを失ったクオラは、絶叫を残して、暗い穴の中に落ちていく。


  「 うにゃあああああああああっ!」


  「 く、くおらちゃああんっ!」


 どだだだだだだという階段を転がり落ちるような音がして、クオラは地下に落ちていった。


3)

 その部屋では、壁面の蝋燭が、ゆらゆらと揺らめいて、ほのかな灯りを作り出していた。

 アリエルは、気が付いたら、妙に薬草臭い、この部屋に監禁されていた。

 他にも部屋は幾つかあって、正気を失ったような悲鳴が、今日も聞こえてくる。


   「 この薬草の臭いは、どこかで嗅いだような…?」


 アリエルは、記憶を手繰ろうとするが、すぐには、思い出せない。


  「 部室?薬草園?それとも、よく行く近所の森かしら?」


 口に出してみるが、どの場所も違うように思えてならない。

 考えても、詮無きことと思い直して、なぜ、ここに居るのかを思い出してみる。


  「 たしか、部室に変な薬草が置いてて、顧問のせんせ…。」


 そこまで、記憶を手繰ってみて、アリエルは思い出した。


  「 そうだ、ここの臭いは…。」


 アリエルは、殺気を感じて、部屋の入口に視線を移すと、顧問の教諭が佇んでいる。


  「 ラファエロさん、思い出しちゃったみたいね。」


 職員室で語り掛けた口調と同じ口調で、教諭は笑顔を見せた。

 しかし、目は笑っていない。逆に、冷めきっていて、極地の極寒を思わせた。


  「 ひっ…!」


 恐怖に後ずさりをしてアリエルは、教諭から距離を取る。

 なぜなら、彼女の手にはナイフが握られていたからだ。


  「 こ、来ないでっ!」


 更にアリエルは距離を取ろうとするが、背中に障害を感じ、今以上、距離が取れない。

 もう、ダメだっ! アリエルは、大声で助けを呼んだ。


4)

 階段から転げ落ち、全身をしこたま打ち付けて、クオラはよろよろと起きあげると、魔法薬を幾つか取り出して、服用した。クオラの内側から、暖かなオレンジの光が放たれ、ステータスが全回復する。


  「 さすが、薬草部の魔法薬。よく効くわ。」


 魔法薬の効き目に、クオラが気を良くしていると、女の子の悲鳴が廊下に響いた。


  「 この声は、アリエルね。行くよ、タフィ。」


  「 了解。」


 クオラは、タフィを引き連れて、悲鳴が聞こえた方向へ駆けていった。


 【三日後につづく】

  


 



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