敵の根城を前にして

 

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目指す森の中に見える敵の目線は、地に這うように低い。明らかに待ち構えているのが分かる。それが数体。想像するよりも数は少ないようだ。既に窮地に陥っている今の状況下で見る景色だったために、敵の数が多く見えていたのだろう。
森の木々は、暗黒世界においては全て同じなのか、ゴレムスでも木々の間を問題なく通り抜けられるほどに立つ木の間は空いている。シーザーたちのようなグレイトドラゴンほどの大きな魔物が存在するこの世界では、必然と森林の造りも大きくなる必要があるのかも知れない。ゴレムスでも問題なくと言うことは同時に、バザックスほどの恐竜のような魔物にも森に入ることは問題ないということだ。
追われるリュカたちは森の中へ逃げ込み、とにかく身を隠すつもりでいたが、たとえ森に入り込もうとそれは叶わないのかも知れない。プックルがリュカを背に乗せて先頭を駆け、次にゴレムスができうる限りの速さで、肩にしがみつくビアンカとポピーを連れて走る。ゴレムスの足に追いすがろうとするバザックスの群れを、宙に飛ぶアンクルが、ピエールが、なけなしの魔力を使い、倒すことを目的とせずとにかく妨害する。ティミーも呪文で応戦をと試みるが、つい先ほど仲間二人を蘇生したばかり、その前には仲間全員に行き渡る回復呪文ベホマラーを唱えた彼には、魔力の余力がほとんどなかった。アンクルの片腕に収まり、大人しく連れられるがままとなっている。
森の中へと入り込んでも、後ろを追ってくるバザックスらはそのまま駆けて来るだろうと思われた。しかし魔物らは森の中へ入る手前で、足を止めた。ぴたりと止めた敵の動きを感じ、アンクルは用心深くも飛ぶ速度を落とし、後ろを見遣った。バザックスの群れはまるで森の出口を塞ぐように、横一列に並び立ち、静かにリュカたちの様子を窺い始めた。はっきりとした境界線があるのだろうかと思うほどに、バザックスの群れは森の中へは入り込もうとはしない。アンクルは魔物の世界にも動物と似たような、縄張りの習性を持つものがいることを知っている。元来、動物だったものにはその傾向は強いはずだと、これ以上バザックスの群れが森の中へと追ってくることはないだろうと、前へと目を向けた。
動物のような縄張り意識があるのだとしたら、この先の森の中ではバザックスとは異なる魔物が縄狩り意識を持っていると言うことだ。それが、遠くからでも見えていた森の中に棲む魔物の目の正体だ。
森の木々の上ではなく、地に這うような下に、魔物の目の光が見えていた。先頭を行くプックルが急停止する。すぐ目の前に、森に潜む魔物の群れが迫っていた。のろのろと動くように見えたのは、それが元は亀という生き物だったからだろう。草地をがさがさと移動する大きな十体ほどの亀の姿に、プックルの背に乗るリュカは、亀の群れを回り込んでしまえばこの敵とも戦わずに済むのではないかと、暗い森の中に視線を巡らせた。プックルの速さで駆け抜けてしまえば、追いつかれることもないに違いない。
そんなリュカの甘い考えを打ち破るように、暗い森の中に眩しい閃光が走った。進路も退路も塞ぐかのように、森の中を雷が落ちた。バリバリと激しい音を立てて落ちた雷に打たれた近くの木が真っ二つに割れ、裂け目から火を上げて燃え始める。燃える炎の明かりに照らされ、仲間たち皆も敵の様子を一様に知った。雷を落としたのはティミーではない。目の前で鋭い目を向ける、プックルよりは一回り程小さな亀、ガメゴンロードだ。
森の草地に蠢くガメゴンロードの群れが、待ち構えていた敵の群れがようやく来たと言わんばかりに、思うままに稲妻を落とし始めた。絶えず轟音が鳴り響く状況に気がおかしくなってしまいそうだと、直撃を避けるための本能で、リュカもプックルもできうる限りで地面に這いつくばる。宙に飛んでいたアンクルもまた、両腕にティミーとピエールを抱き込んだまま地面に伏せ、己の身で二人の仲間を守る。最も身体の巨大なゴレムス自身は、この稲妻を避けようもないと、己の身は諦め、代わりにビアンカとポピーをその巨人の身体で囲い守る。
稲妻の音が鳴り止んだと同時に、ガメゴンロードは思いの外の速さを以て、地に伏せるリュカに忍び寄っていた。リュカは未だ、自身の右腕の傷を治しておらず、流れる血は手先にまで及び、剣を握る手がぬめっていた。敵の攻撃に備えるためにと剣を振り上げようとした時に、その痛みに改めて自身がまだ腕の怪我を治していないことに気付いた。
動きの鈍いリュカを庇うように、プックルが敵に立ち向かう。目の前までに迫ってきていたガメゴンロードの顔に、大口を開けてがぶりと噛みつく。速さにおいて、あくまでも亀という生き物のガメゴンロードはプックルには遠く及ばない。しかし敵が先ほどまで放っていた稲妻の影響が残り、プックルの身体が一瞬痙攣を起こす。力の抜けたプックルを振り払ったガメゴンロードは、硬い甲羅の中に首も身体も納めてしまい、そうなればプックルの攻撃も敵に届かない。
プックルが敵の前に立っていた隙に、リュカは己の腕の怪我の処置をした。しかし残りの魔力は僅かで、ホイミの呪文でどうにか出血を止めるのに成功したまでだ。痛みは残るが、仕方がないとその右手に父の剣を握り込む。しかしやはり思うように力が入らない。己の身体の中を何度も、稲妻が起こした電気が流れて行った影響も残り、腕に痺れがある。痛みが紛れる持ち方をと、その場しのぎで今は剣を逆手に持つ。
雷の気配が止んだと同時に、ピエールはアンクルの身体から抜け出していた。敵が甲羅からその長い首を出している内にと、ピエールは地面から跳ね上がるようにドラゴンキラーでの一撃を食らわせる。首から血を噴き出した敵を見て、確実に仕留めたと思ったピエールだったが、他の敵からの攻撃を受け、地面の上を吹き飛ばされた。
ピエールが仕留めたと見ていたガメゴンロードを、アンクルがその目にしていた。他の敵への攻撃をと、右手に槍を構えようとしていた彼だが、ピエールが倒したはずのガメゴンロードの首が妙な光に包まれているのを目にして、その動きを思わず止めた。首の傷があっという間に回復していく。きれいさっぱりと傷跡もなくなってしまった敵の姿に、アンクルは身震いした。
「この亀……ベホマが使えんのかよ」
未だアンクルの守りの中にいたティミーはその言葉を聞き、驚いたように目の前の亀を見た。何事もなかったかのようにじろりと睨んでくるガメゴンロードの姿に、味方が危機の中に在る今の状況に、ティミーは身震いしながらもどうにか剣を構えた。
「これくらいなら……なんとか……」
味方は皆が皆、残りの魔力がほとんど尽きかけている。敵に対してできることは限られている。残り少ない魔力でこの場を切り抜けるためにと、ティミーは敵の回復力を止めることを選んだ。呪文封じのマホトーンを敵全てにと、ティミーは天空の剣を手にしたままの手で呪文を放った。
群れとなって行動するガメゴンロード十体に、マホトーンの呪文は行き渡った。しかしその内の数体が、彼の呪文の効果を受け付けなかった。受け付けないどころか、跳ね返したのだ。瞬時に跳ね返された呪文封じの効果がそのまま、ティミーに返ってくる。喉の奥に突然綿を詰められるような苦しさに、ティミー自身もまた呪文を使うことが出来なくなってしまった。
ティミーの放った呪文の効果に、ゴレムスに今も守られているポピーが気づいた。ポピーはその手に敵へ浴びせる呪文の準備をしていた。明らかに守備力の強いガメゴンロードという亀の魔物を相手に、補助呪文ルカナンを唱えようとしていた。しかし敵数体はその身に呪文反射の効果を帯びているのだと分かり、呪文の詠唱を止めた。主に呪文を使用して敵との戦いに参じる自分や母は今、敵に対してできることはないと、ポピーはまだ雷の轟音に耳をおかしくしながらも、見える景色に何をすべきか考えを巡らせる。
その隣でビアンカはすかさずティミーに向かってバイキルトの呪文を放った。彼女もまた、残りの魔力は少ない。そして敵の何体かが、その身体に呪文反射の効果を帯びているとあっては、味方に助力する以外にできることはないと、偶然最も近くにいた息子の力を強めた。
逆手に持つ剣を右手に構え、左手にはドラゴンの杖を前に出し構える。亀の見た目の割には素早い動きを見せるガメゴンロードに、リュカは自ら攻撃を仕掛けるが、敵は固い甲羅を盾に攻撃を防いでくる。正面の敵に集中することも許されない。後ろからも敵の顔が迫り、鋭い角でリュカの身体を突いて来ようとするのだ。ここで致命傷を与えられては、回復する余力がないと、リュカはどうにも慎重にならざるを得ない。
「お父さん! 敵は呪文を使うわ!」
敵が群れとなって襲い掛かってきている今の状況で、味方が互いにいる位置もまた声が届くほどには近い。ゴレムスに守られながらも声を張り上げるポピーの言葉に、リュカは己がすべきことの一つに気付く。
敵に強力な攻撃をしかけることを、リュカは性に合わないと感じている。それ故に己が使うことのできる風の呪文はいくらか性に合っているとも理解している。何にしても、リュカの使うことのできる呪文に、敵となる者を打ち負かし、倒してやろうという攻撃性はほとんど込められていない。だからこそこれは己に使える呪文なのだろうと、リュカは普段は使うことのほとんどない呪文マホキテの効果をその身に纏った。
リュカの横から大口を開けて噛みつこうとしていたガメゴンロードに、宙からアンクルが槍を突き出した。甲羅の中に引っ込めようとしていた首は間に合わず、アンクルの突き出したデーモンスピアの先が頭を掠めると、敵の頭に生えている鋭い角が一つ折れた。
咄嗟に向き直ったリュカもまた、同じ敵に対し剣を振り上げた。甲羅の中に引っ込められる前にと逆手に持つ刃で切り上げた首から血が噴き出し、攻撃を受けた敵が低い悲鳴を上げて痛みに暴れる。ここで甲羅に潜って徹底的に防御態勢に入るかと思ったリュカだが、敵から呪文発動の気配が瞬時に漂い、思わず身構えた。治しきれていない右手の傷が疼き、無意識に顔をしかめる。
敵の放つ呪文は攻撃性のあるものかと思ったリュカだが、何故だか己の右手の痛みがふわりと治まるのを感じた。マホキテの呪文を身体に帯び、敵の放った呪文と等価の魔力を貰う態勢は整っている。目の前の敵は変わらずこさえた傷に呻き、その目は「そんなはずはない」と言うような驚きさえも帯びているようだった。リュカはしっかりと戻った右手の感覚に、敵から魔力をも受け取ったのを感じた。一体何が起こったのか分からないまま、リュカは全身の痛みや怪我がすっかり治った状態に素直に甘んじるように、右手の剣をいつも通りに握り直した。
「ピエール! その敵よ!」
今度はビアンカがゴレムスの守りの中で指示を飛ばす。彼女ら二人は集中して、敵の様子を窺っていた。十体いるガメゴンロードの内、呪文反射の効果を帯びているものいないもの、それらを見分けるために、ビアンカは効果を帯びていないもの、ポピーは効果を帯びているものを、それぞれ見極めていたのだ。マホカンタの呪文を使うことのできる二人には、目に見える呪文反射の膜ではなく、集中して敵を見据えることで敵の状態を知ることができた。
ちょうどピエールが対峙していた敵だ。盾で敵の頭突きの直撃を免れたピエールだが、身体は地面に叩きつけられ、草地に転がった。しかし転んでもただでは起きない彼は、地面に寝転がりながらも敵に向かって剣を持つ手を伸ばした。ビアンカの言わんとしていることは理解していた。ピエールの手からマホトラの呪文が放たれ、亀の敵の身体へとその呪文は入り込んでいく。そして見事にお土産を持ち帰り、ピエールの魔力が微々たるものながらも回復した。
リュカはマホカンタの効果が見える敵と、ピエールはマホカンタの効果が見えない敵と、それぞれ対峙する敵が分かれた。先に倒してしまいたい敵はこちらだと言うように、主にリュカの元へプックルとアンクルが加勢する。ガメゴンロードは呪文能力にも長け、ベホマやマホカンタを使いこなすにも関わらず、その効果の応用にまでは頭が回らなかったようだった。己の身に備わっている回復の術はただ己を回復する時に使うという目的だけが、ガメゴンロードの頭の中には占めていた。
アンクルは敢えて、急所を狙わない。宙から何度も飛びかかり、ガメゴンロードの口を狙う。敵の直接の攻撃力を削ぐのと同時に、決して一撃で仕留めようとはしない目的をそこに見せる。リュカとピエールの意図を知ってからは、アンクルは本来の悪魔のような顔つきで敵を利用してやろうと力を振るった。
傷ついた身体を癒そうと、敵がベホマの呪文を唱えるその瞬間に、プックルは素早く後ろへ引っ込み、代わりにリュカの身体を前に突き出す。今はリュカの魔力を回復させるのが優先だと、プックルは己の傷を癒すことを後回しにして、この状況を大事にする。その度に、リュカはもう必要のない回復呪文を受けつつ、ちゃっかりと魔力を回復していく。
ピエールは緑スライムに弾んで亀の甲羅の上に飛び乗り、一体に絞り、根こそぎ魔力を吸い取ってしまおうと、甲羅に張り付いたまま呪文を唱え続けようとした。しかしそうはさせないと、他の敵が仲間の甲羅に乗り上げて攻撃を仕掛けてくる。
それを阻止するのは、同じく亀の甲羅の上に飛び乗って来たティミーだ。ピエールの魔力を回復することを優先するように、ティミーはあくまでも敵の攻撃を退けることを考える。天空の盾でガメゴンロードの噛みつきを受け流し、天空の剣で斬りつけることで敵が前に出ることを逡巡させる。バイキルトの力を得た天空の剣の威力は、亀が甲羅から出て来たくなくなるほどの鋭さを見せる。
ティミーにも自負がある。いつもゴレムスに守られてばかりで勇者を名乗れるかと、たとえ魔力が底をついても自分は戦うことができるのだと意気込みつつ、同時に決してピエールの足手まといにはならないように慎重に、敵の動きを観察する。己の振るう天空の剣が、受ける光もないのに煌めく。竜神の加護を受けているこの唯一無二の武器に宿る力を、ティミーは今、剣の柄を通じて感じ取っていた。背後にティミーの助力を感じつつ、亀の甲羅を踏み踏み移動しながら、ピエールはビアンカの指示を横目に仰ぐようにして、着実に敵の魔力を吸い取り自分のものへと変えて行く。
この暗黒世界に棲み、高度な呪文を使用することもでき、防御にも優れ、群れでの行動もできる自負さえあるガメゴンロードにとって、リュカたちの生かさず殺さずの戦いは、それまで自身らでも気づいていなかった自尊心を大いに傷つけられるようで、思わずの怒りに歯ぎしりを見せていた。自尊心などを持ち合わせていても、大亀は自身が傷つけられれば反射的にその傷を癒そうと回復呪文を唱えてしまうのだ。その時その身に呪文反射の膜を帯びていようとも、傷を治そうとする本能にどうしても逆らうことができない。痛みから逃れたい、死にたくないという本能が強いのだろう。そのようなリュカたちの戦いに怒りを知らず蓄積していたガメゴンロードは、このままではただただいいように魔力を吸い取られるだけだと、反旗を翻す。
森の中の空気が一瞬にして張りつめたのを、リュカたちは皆一様に感じた。ピリピリと、暗闇の中に黄色い電気が走り、その予兆を表した。しかし敵の群れの中に入り込んでいるリュカたちに向かって今、稲妻を放ってしまえば、それは敵の群れにも降り注ぐことになってしまう。それでも尚、稲妻を浴びせてやると言った意地を敵の顔つきに見て、リュカたちは瞬時呆然とその場に佇んでしまった。
ガメゴンロードの起こす稲妻は唐突に、森の中に起こった。敵の放つ雷撃は空から落ちて来るものではない。遥か頭上にまで伸びる木々が、広々と感覚を開けて立つその間から、黄色の光が生み出され集まり、集中的にリュカたちを襲う。しかし同時に、その稲妻は敵の群れにも襲い掛かる。
電撃を浴び、気が遠のきそうになるのをどうにか堪える。咄嗟に近くにいるリュカとプックルを守ろうとしたアンクルが、十体のガメゴンロードが一斉に起こした電撃の余りの激しさに堪え切れず、翼を止めて宙から落ちた。それを見ても、リュカもプックルもまだ、森の中を走る強烈な稲妻の攻撃に微塵も動くことができない。少しでも気を抜けば自らが、アンクルの隣に横たわることになる。
ゴレムスの身体ががくんと力を失ったのが、ビアンカにもポピーにも分かった。しかしゴレムスを回復する術を持たない彼女らにはどうすることもできない。一体雷撃はいつになったら止むのかと思うほど、森の中は眩しく光り続けている。ゴレムスが屈むようにして二人を腕に守ろうとするが、絶えず放たれる雷撃の攻撃に、ゴレムスの背中や後頭部であったであろう部分が、ボロボロと地へ落ちて行くのを見て、ビアンカは顔を歪め、目の奥を熱くしながら必死に賢者の石を握り祈った。どうにか命だけは、消してはならない。その隣でポピーはただ、気を失わないように心を保つことしかできないでいる。
敵の甲羅の上に乗り戦っていたピエールとティミーは変わらず、敵の背に立っていた。当然のようにピエールがティミーを守ろうとしたところを、ティミーが遮った。自分は雷をも味方にする者なのだと言うように、ティミーは天空の盾を掲げて落とされる稲妻をも受け止める。ピエールは天空の盾の傘にはいり、稲妻の直撃を避ける。竜神の加護を受けている盾の力か、はたまたティミー自身の勇者としての秘めたる力か、直撃すれば身体の中を走る猛烈な電気の力で卒倒しそうな威力だったが、それだけは避けることができた。
群れを成して行動する敵の放つ稲妻は、放たれる時も同時だが、止む時も同時だった。その止み間を、ティミーは盾を持つ左腕を痺れさせながらも待っていた。ピエールは相当に、敵から魔力を吸い取ったはずだ。父もまた、プックルとアンクルの助けの中で、魔力を貰っているに違いない。稲妻が一時に止んだ直後にティミーが目にしたリュカは、プックルを濃紫色のマントで庇うように伏せていたが、それまでに完全に傷を癒していたために思いの外余裕のある顔つきで立ち上がったのだ。
リュカが飛び起きるように地面に立ち上がり、敵の甲羅の上に立つティミーと目が合う。リュカが両手を前に出した瞬間に、ティミーは天空の剣を高々と天に掲げた。それまでの稲妻の電気を剣に溜めていたのかと思うような煌めきを放ち、天空の剣が神々しい光を辺りに解き放った。凍てつく波動が敵の群れに、十体の甲羅が固まるその場所に行き渡り、敵の身体を包んでいた呪文反射の効果を取り去って行く。
地に立つリュカが、敵の足元を狙うようにして、バギクロスの呪文を放った。強烈な風の勢いに地に生える草ごと吹き飛ばし、大きな亀の身体が地面から浮き上がる。その甲羅の上で慌てるピエールを誘導するように、ティミーが彼と共に駆け、甲羅の上から下の草地へと飛び降りた。重量ある亀だが、寧ろ一体になって固まっていたことで、暴風の影響を揃って食らってしまった。次々と浮き上がる己の身体をどうすることもできず、リュカは呪文の向きを調整するようにして、敵の亀の身体を全てひっくり返した。
手足をじたばたさせ、狼狽している今が好機だと、プックルが電気に痺れる身体に気合いを入れるように一声激しく吠えると、まるで防御を為さなくなった腹を見せる亀の魔物に飛びかかった。仲間の動きに触発されるように、ティミーもピエールもまた敵の群れにかかって行く。しかしまだ受けた稲妻の攻撃による影響が濃く、皆一様に動きは鈍い。
リュカは草地に倒れていたアンクルに駆け寄った。命はある。何の防御もなしに稲妻を浴び続けていたアンクルがこうして辛うじて心臓を動かしているのは、絶えず賢者の石に祈り続けていたビアンカの癒しによるものだった。賢者の石の力は決して絶大なものではない。しかも今は、その効果を弱めてしまっている。それでも今のアンクルにとっては、微々たる癒しの力でもどうにか稲妻の連撃に堪えることができたようだ。
リュカがアンクルにベホマの呪文を唱えると、彼はすぐさま草地の上に飛び起きるように立ち上がった。魔物の仲間たちは皆、常に頭のどこかで“戦い”がちらついているのかも知れないと、立ち上がったアンクルの素早い動きにリュカはそうと感じる。
「アンクル、待って」
「ああ? 何だよ、こいつらを退治しないとなんないだろ」
リュカとアンクルが一つ言葉を交わしているその時に、プックルとティミーとピエールが異変を知らせた。腹を見せた亀に攻撃をと、草地にひっくり返ったガメゴンロードの腹に乗り攻撃を始めていたプックルらが、爪も牙も、剣も、敵の身体に通らなくなったと、その音に知らせて来る。耳に響く硬質な音は、あらゆる攻撃を防ぐのだと言わんばかりに、直接の攻撃をまるで受け付けない。
「完全防御呪文だわ……。お父さん! 今は何をしても無駄になっちゃう!」
初めて目にするその呪文を、ポピーは呪文書に知っていた。直接攻撃も呪文による攻撃も、何もかもを受け付けない身体にしてしまうというアストロンという呪文を、ガメゴンロードの群れは一斉に唱えていたのだ。見れば、ガメゴンロードの身体は鋼鉄の塊となり、直接攻撃を加えようとすればむしろこちらの武器が損なわれてしまうのだと、ポピーはその危険を知らせていた。鋼鉄の守りの中に入り込んだガメゴンロードは攻撃することもできないようで、ただ鉄壁の守りをその身に帯び、ひたすら敵の攻撃から完全に身を守り続けている。
「この呪文はいつ解けるか分からないはずなの。だから……どうしたらいいのかな……」
焦り、悩む仕草を見せるポピーに、リュカは気が抜けたように笑って、落ち着いて一つ息をついた。
「どうしたらいいのかなんて、決まってるよ」
「どうするの、お父さん」
「逃げよう」
リュカに迷いはない。これ以上ない好機だと、リュカは自ら動けなくなった敵を前に逃げ道を考え始めた。森の外に出ようとすれば、バザックスの群れが再び襲い掛かって来るに違いない。下手に道を逸れても、この森の中ではあらゆる場所で敵に遭遇する危険がある。とにかく、母が囚われ、敵の居するエビルマウンテンへと近づくしかない。
「またあんな激しいカミナリ落とされてもたまんねぇからな」
「魔力を溜めることもできましたし、報酬もあったということでしょうか」
「がうがうっ」
「よし。そうと決まれば……ほら、ゴレムス、今は大丈夫だから集中して治すんだ」
リュカがそう言うと、ゴレムスは非常に激しくボロついていた自身の身体を瞑想の力を以て治し始めた。敵の稲妻の攻撃をひたすら背中に受けていたゴレムスは、もはや上半身が崩れ落ちるほどの損傷を受けていた。瞑想の力を以て損傷を治すにも時間がかかると、ゴレムスは戦いの場から完全に離れるように集中して自身の傷に向き合う。ここでゴレムスの損傷は完全に治しておきたいと思うリュカだが、目の前の鉄の塊となった敵の群れがいつ再び硬化を解くか知れない。
暗い森の中で鉄の塊となり、全く動かなくなった敵の姿を見ていると、リュカの表情は自然と曇った。自ら呪文を唱え、己の身体を鉄の塊に変えてしまうなど、本当に最終手段だったのだろう。身体をひっくり返されたまま鉄の塊と化してしまったガメゴンロードは、たとえこの状態のまま硬化を解いたとしても、その瞬間に敵からの攻撃を受けることになるのは目に見えている。
その時、リュカは敵の目が鉄の塊となっても尚、動くのを見た。敵は鉄の塊の中にありながらも、意識もあり、こちらの様子を窺っているのだ。それはまるで、リュカ自身が石の呪いの中に閉じ込められた中でも、外の景色を見続けていたあの八年の時のようだと、彼は思わず敵に対して憐憫の表情さえ見せた。
「……ゴレムスの傷が治ったら、行こう」
「リュカ、この先、まだかなりあるわよね」
「……あの、私の魔力はもう、あんまりなくって……」
「ああ、分かってるよ。分かってる……」
不安を素直に吐露する娘の頭をリュカは安心させるように静かに撫でた。ポピーの被る風の帽子の脇を飾る羽が、リュカの手に合わせて僅かに揺れる。
「でも行くしかないんだ。もう後戻りなんて、できないんだもんね」
そう言うティミーもまた、魔力は底を尽きかけている。しかし彼はその状態でも、己は勇者なのだからと内心で自らを鼓舞するように、言葉を口にする声にも張りを持たせている。前に進むしかないと決めてしまっているティミーはある意味で、誰よりも強い。その強さはまだ少年という純粋さの中にあるのだろうと思うと、リュカはその意味でティミーよりは弱いのかも知れないと思ってしまう。しかしその代わりに、リュカには彼らの親であるという強みがある。自らが進む強さは劣れども、彼らを守らねばならないという強さに関しては負けるはずがない。
「がうっ」
プックルが低く一声吠えた。見れば、鉄の塊となっていたガメゴンロードの内、一体がその身体から仄かな光を放ち始めた。鉄の硬化はそれほど長い時間留めているものではないようだ。地面にひっくり返され、腹を見せている大亀がすぐさまリュカたちに襲い掛かって来るとも思えないが、敵には雷を起こすという特技がある。どうやら鉄の塊になっても意識があり、こちらの様子を窺い続けている敵と考えれば、硬化が解かれた瞬間に稲妻を起こすことも不可能ではないだろう。
「ゴレムス、どうだい? 治せたかな」
リュカがゴレムスの足元に立ち、その足に手を当てると、ゴレムスは出せない声の代わりにすっとその場に立ち上がることで、意思表示をした。アンクルがゴレムスの背中にまで飛び上がり、酷く崩れていた仲間の背中がほぼ完全に修復されていることを確かめると、「きれいに治るもんだな!」と言って仲間の大きな背中をバシリと叩いた。
「じゃあ、行こうか」
リュカはそう言うと、エビルマウンテンの麓に広がる森の中を、緩やかに上がって行く山道を登るように再び歩み始めた。硬化が解かれようとしているガメゴンロードはあくまでも亀の動きで、リュカたちが足早に立ち去ってしまえば恐らく追いついては来られない。そもそもひっくり返った身体を立て直すのにも時間がかかるだろう。
見上げる木々の景色は大きく、暗黒の空を覆う木々の葉は遥か頭上にある。人間にしては大きな森の中、既に敵の気配は嫌でも感じている。まだまだ先の道のりは長い。



その敵は初め、森の中に立つ巨大な木かと思われた。ゆらりと動いた時には、森の中を風が通ったのかと思った。ガメゴンロードの群れとの戦いからしばらく歩き進んだところで、リュカたちは当然のように新たな敵と遭遇した。
見上げるその巨人は、ゴレムスと同等に大きい。見上げて巨人の顔を見ようとしても、リュカたち人間からはその表情を見ることもできない。ただ巨大な木々が立つこの森の中で、同じように巨大な体躯をしている巨人ギガンテスがあちこちに、まるで巨大な木々が歩くようにふらふらと徘徊していた。
敵のぼんやりとした一つ目はすぐにゴレムスの姿を捉える。敵の片手には、森に立つ木の太い枝を折り、そのまま武器として持つ巨大な棍棒が握られている。途轍もない大きさだ。この巨大棍棒で一度でも殴られれば、それだけで身体ごと潰されてしまうだろう。
はっきりとした目つきになることなどないのだろう。魔界の森に棲みつくギガンテスは虚ろなままの一つ目をゴレムスに留め、緩慢とした動きで棍棒を振り上げた。それだけで辺りに風が起き、森の暗い葉が枝が揺れた。
ゴレムスの腕にはいつものごとく、守られるビアンカとポピーがいる。この巨人ギガンテスと対峙するに当たっては、むしろゴレムスの腕に守られることは危険が伴うと気づいた時には、遅かった。
ゴレムスは二人をとにかく守るべく、身を丸めるようにして彼女たちを内側に匿った。ギガンテスの大きく振るった棍棒が、ゴレムスの背中上部に激突する。今までに食らったことのないほどの衝撃を受け、ゴレムスの腕に匿われていた二人は耐えられず宙へと投げ出された。地面に落ちる直前のところで、アンクルが滑り込むように二人をどうにか拾う。
ゴレムスの背中からボロリと、大きな石の塊が地面へ落ちた。敵の一度の攻撃で、ゴレムスの損傷は著しいものとなったのが誰にも分かった。しかしゴレムスは己の動きを鈍くはしない。彼は動ける限りは常と変わらず、敵に拳を突き出し、蹴りを繰り出すことができる。敵に負けじと、ゴレムスはすぐに反撃に転じていた。ビアンカとポピーが腕から離れたことで自由になった拳で、ギガンテスの腹を殴り上げた。
頭上で行われる巨人同士の戦いに、リュカたちはただ敵の足に踏み潰されないようにと敵の動きに注視する。幸運にも、ギガンテスの動きは鈍く、確かな注意を払っていればその攻撃を避けることはできる。ただ、それができるのも、敵が少ない状況であればこそだ。
大きな木々が立つ森の中、巨人ギガンテスの気配はそこかしこに感じられた。広い森の中でこの場所は、ギガンテスら巨人の棲みつく場所に違いなかった。見上げる木々の陰から、次々とギガンテスが姿を現す。森の中を響かせるような戦いの音に気付き、魔物としての本能に従うように棍棒を片手に、獲物を探すように一つ目を辺りにうろうろと彷徨わせる。それらが真っ先に捉えるのは、もちろんゴレムスだ。いつもは仲間たち皆を守ってくれる巨大なゴレムスの身体が今は仇となってしまう状況を、リュカたちにはどうすることもできない。
ギガンテスの群れが一様にゴレムスに向かっていく状況は、それだけで絶望的だ。敵の巨人の一撃で背中の上部を大きく損傷してしまうゴレムスが、あちこちから集まってくるギガンテスの群れに対抗できるはずがない。
ゴレムスがビッグボウガンを構える。照準を敵の一つ目に合わせる。敵の攻撃力を削ぐために、敵の視界を奪ってしまうのは常套手段だ。ゴレムスも決して動きの速い方ではないが、ギガンテスよりは勝っているようで、敵の妨害を受ける前に素早く引き金を引いた。敵の目に命中することはなかったが、矢は敵の頬に突き立った。束の間、ギガンテスは何が起こったのか分からないように瞬きをしていたが、痛覚が鈍いながらもじわじわと襲ってくる痛みに、地に響くような大声を上げる。その声が尚の事、敵の群れの戦闘本能を呼び覚ましてしまう。
敵の行動が鈍いのを幸いにと、リュカはこの間にゴレムスの身体を守るためにスカラの呪文を何度もかけていた。敵の巨人の棍棒での攻撃もこれでいくらかは防げるはずだと、次には己が攻撃をと剣と杖を両手に構える。
しかしリュカの施した防御呪文を一度で打ち破ってしまうような衝撃が、ゴレムスの頭部に落とされた。魔界に古より棲みつくギガンテスの攻撃は、その昔から不変のものだが、それと言うのもそれで十分だったからなのだろう。技巧を凝らす必要もなく、ただ巨大な棍棒を片手に振るうだけで、辺りに存在するものは全て粉砕されてしまう。寧ろ、何よりも破壊的なその一撃こそが、魔界という世界にはふさわしいとでも言うように、ギガンテスの痛恨の一撃は何物をも潰してしまうのだ。
ゴレムスの頭部が、首から落ち、リュカたちの立つ場所目がけて落ちて来る。リュカは大事な仲間の頭部だけが迫ってくるのを目にして、ゴレムスの目にまだ光があるのを見た。彼は決して死んでいない。人間などの生き物とは根本的に異なる存在なのだと知らせてくれたと、変わらず光を湛える二つの目に、動揺しかけた気持ちを平常に取り戻した。
「リュカ! オレは行くぞ!」
「頼む、アンクル」
この巨人の群れに正面から攻撃できるのはもはやアンクルしかいない。デーモンスピアを片手に宙に飛びあがったアンクルは、ゴレムスがそうしようとしていたように、敵の目を狙いに行く。ただ敵の眼前を飛ぶために、一度敵の手に捕まえられてしまえば、アンクルほどの大きな魔物でも握りつぶされかねない。
「お父さん! ゴレムスが……ゴレムスが……!」
近くにごろりと転がるゴレムスの頭部を前に、ティミーが取り乱す。その両手が思わず蘇生呪文を構えるが、もう彼にはザオリクを唱えられるほどの魔力が残されていない。たとえティミーがザオリクを唱えようとしたところで、ゴレムスはまだその身体に命を宿しているために、呪文は無効に終わる。
「大丈夫だ、ティミー。ゴレムスは生きてる。ただ……」
ゴレムスは頭部を地に落としても尚、片膝を地に着くだけで立った体勢を保っている。しかしそれが寧ろ、敵の目に留まってしまうのは避けようもない。今はゴレムスの身体が誰よりも巨大なことが弱点となってしまっている。それを小さなリュカたちが隠すこともできない。左手に構えるドラゴンの杖の力を頼ろうにも、杖自らの意思なのか、リュカの心の奥底にある不安を読み取っているのか、杖の力は発動しない。
黒竜となりギガンテスの群れに対抗するのは、恐らく得策ではない。今のリュカたちは、リュカとピエールを除いてほとんどが魔力の底を尽いているような状況だ。その中でリュカが黒竜に身を変じてしまえば、仲間たちが傷を負った際に回復する役はピエールに集中する。誰一人欠けることは許されない状況で、尚且つゴレムスに勝るとも劣らぬ巨大な敵に囲まれる場所で、リュカが回復役を抜けるわけには行かない。ましてや今、蘇生の術を持っているのはリュカしかいないのだ。
「お父さん! 私も力になれるわ!」
リュカの立つ場所へ駆けて来たポピーが、震えを抑えて、右手に抜き身の剣を逆手に持っている。ストロスの杖はベルト脇に差し込んだまま、ただただ恐ろしい巨大な敵を相手にするのだと、誘惑の剣を構えていた。
「同士討ちを狙うの」
誘惑の剣の刃には毒が仕込まれており、その毒は斬りつける相手の精神を混乱させる作用が期待される。魔力がほとんど底を尽いているポピーは己のできることをと、可愛らしい顔に似合わない狡猾とも言えるような手段をリュカに持ち掛けたのだ。ギガンテスの身体は決して鋼鉄でも石でも土でもなく、それはリュカたち人間と同様に有機物で出来ており、痛みは感じるもののその痛覚は非常に鈍いのは先ほどの反応に見えた。ポピーの持つ誘惑の剣に少々傷つけられようが、敵の巨人らは恐らくその痛みにも気づかないに違いない。
「ピエール、ポピーを頼む」
「承知しました」
まるでリュカから指示を受けることを予期していたかのような素早い反応に、ポピーは驚くのと同時に、その顔には戦いの只中に参じる恐怖を改めて感じるような引きつった笑みが浮かんでいた。
「リュカ!」
娘を危険の中へと飛び込ませようとするリュカに、ビアンカは思わず声を上げる。しかし彼女自身も、今のこの状況では誰もが無理をしなくてはならないことを理解している。リュカに文句を言おうとも、意見を言おうとも、とにかく今はこの巨人の群れから抜け出さなくてはならない。
「ビアンカは僕と、辺りを見ていてくれ。みんなも僕らも、うっかり敵に踏まれないようにしなくちゃならない」
そう言いながらもリュカは、手から呪文を放つ。ゴレムスを守れるのはリュカだけだ。スカラの呪文でゴレムスの身体を守り、彼自身が己の損傷を回復する時間を稼がなくてはならない。ゴレムスが瞑想に集中できるようにと、敵の目を逸らすべく明後日の方にバギの呪文を投げ、森の木々を揺らす。さほど賢いようには見えない敵にはこれさえも効果的で、リュカの遥か頭上にあるギガンテスの目線は揺れる木々の間を彷徨うように向かう。動き自体は鈍いために、その行動だけでもかなりの時間を稼ぐことができた。
巨人の足元を、ピエールに護衛されたポピーが駆ける。自身が敵のど真ん中に飛び込むことが殆どないポピーだが、今は傍にピエールがついているためにどうにか平静を保っていられる。己のすべきことは、ギガンテスと言う見上げるような巨人を倒すことではない。ただ、その足元を誘惑の剣で少し斬りつけ、敵を混乱させ、その恐ろしい攻撃力をこちらへ向かわせないようにすることだ。
近くに見るギガンテスの足の大きさに震えが生じるポピーだが、右手に力を込めると、逆手に持つ誘惑の剣で敵の踵に斬りつけた。敵の巨体に対して損傷を与えるほどには至らないが、それでも敵は足元で起こった異変には気づいたように、遥か上からその一つ目をぐるりと足元へ向けて来る。そのまま踏み潰されてはたまらないと、ピエールがすぐさまポピーに逃げる場所を指示する。辺りはうろつく巨人の足が、まるで森の木々のように乱立している。その中でも広く空いている場所を示し、己も共に移動する。そして次の獲物を見定める。
誘惑の剣に塗りこめられている毒が敵に対して効果を発揮するのは、高い確率とは言えない。敵の目から逃れるように、うっかり大足に踏まれないように、素早く移動しつつなるべく多くの敵の混乱を狙う必要がある。
「ピエール! 前に避けろ!」
ギガンテスの正面から攻撃を仕掛けているのはアンクルだ。彼は危険を承知で敵の目の前に飛び込み、視界を奪うべくその一つ目に槍先を向けている。目を突かれた一体の敵が、悍ましい叫び声を上げて両膝を折り、地に着いた。リュカの声に従い、ポピーを連れてすぐさまその場を離れたピエールは、思いがけない敵の両膝の攻撃から難を逃れた。敵に攻撃の意図がなくとも、あまりにも体格差のある敵が相手では、ちょっとした動作が命取りになる。
ポピーの誘惑の剣が斬りつけた敵も一体、精神に混乱を来し、予期できない動きをし始めた。その動きをリュカとビアンカは揃って見つめる。敵が敵に、手にした棍棒を振り回し始める。敵同士が殴り合うその只中に身を置くべきではないと、うっかりその中に入り込んでしまったピエールに再び叫ぶ。
「がうっ!」
己のことが後回しになっていた。それを知らせてくれたのはプックルだ。プックルは一声吠えると同時に、リュカをビアンカごと突き飛ばした。逃げ遅れた彼の赤い尾だけが、巨人の大きな足に踏まれた。甲高い声で一声叫ぶが、プックルはすぐさま巨人の足と地面との間から尻尾を引き抜き、血に濡れた尾を地面に垂れる。痛みに牙を剥き出しにしているが、その青い瞳は冷静に周りをよく見ている。
ビアンカが回復をと、賢者の石に祈る。プックルの尾の傷は徐々に治るが、宙から叩き落されたアンクルの酷い怪我は治しきれない。ギガンテスの巨体の間を鬱陶しい虫さながらに飛び回っていたところを、容赦なく叩き落されたのだ。地に弾み、再び飛び上がろうとするアンクルだが、羽の損傷が酷く飛ぶことができなくなった。
「……お父さん、あれって……もしかして……」
魔力も底を尽き、一人で下手に動くこともできないティミーが、暗い森の上空に感じたくもない気配を感じ取ってしまった。地上にばかり気を取られていたリュカは、同じように隣に立つビアンカと共にティミーの視線を追うと、そこには数体の死の鳥が応戦をと言わんばかりにこちらに向かってくるのが嫌でも分かった。今のこの場で、死の呪文を操るホークブリザードの群れに襲われれば、ビアンカもポピーも魔力の無い状況で呪文を跳ね返すこともできず、この森の中でリュカたちは全滅を免れない。
スカラの防御呪文でしばらくの間守られていたゴレムスの損傷が、回復していた。有機的に損傷を治す術を身に着けたゴレムスの頭部は、今や元の通りに新たに生み出され、二つの目はしっかりとリュカを見つめている。ギガンテスが振り上げる棍棒での攻撃にも、己の手でいくらか防ぐことができるようになった。しかし今のこの状況で、仲間たちが劣勢であることには変わりない。ゴレムスの身体を守るために呪文で魔力を消費し、リュカの残りの魔力も心許ない。
ポピーが息を切らしながら、ピエールの護衛と共に敵の足元を駆け回っていた。多くの敵に毒をと、誘惑の剣を振るっている。その効果は覿面で、見上げるような巨人たちは互いに同士討ちをそこここで始めている。確実に敵の攻撃力を削いでいるのは明らかだが、空からの新たな脅威に対抗する術が、今のリュカたちにはない。
ギガンテスの動きがまばらになるその中で、リュカは森の中に開ける一本の広い道を見つけた。敵同士が混戦している今ならば、ゴレムスを連れて森の中を奥深くへと進むことができると、彼に呼びかけようとしたその時、背後から伸びる巨人の大きな手に気付いた。
すかさず振り返り、手にしていた剣を振り上げる。ギガンテスの手を深く斬りつけ、敵は雄たけびを上げて手を引っ込める。棍棒を持たない手を伸ばしてきたのは、リュカと言う人間をその手に捕まえようとしていたからだろう。棍棒と言う武器を手にしているにもかかかわらず、武器を持たない手でも何かを捕まえようとするその行動は、まるで赤ん坊に近い。本能のままに生きるその姿は、身体さえ小さければもしかしたら愛くるしいと感じるのかも知れない。しかし彼らは、この魔界と言う世界で魔物として生まれ、人間とは異なる巨体でその力を振るうしかない。それを敵として、リュカたち人間は向かうしかないのが現実だ。
背後から襲いかかろうとしていたギガンテスに、ゴレムスが立つ。その間にも、リュカが見い出していた開けた道は、混戦するギガンテスの群れの動きに閉ざされてしまった。空からはホークブリザードの群れが近づいてくる。リュカの脳裏にはっきりと浮かび上がった文字は、この場からの完全な撤退だ。彼の脳裏には今、救いを求めるようにあの青白い光が浮かび上がる巨大水車のある町の景色が広がっている。
皆を連れて、ルーラで逃げるには、仲間たちの立つ場所が互いに離れ過ぎている。一つところに集まらねばならない。アンクルの傷は力の盾の力を使い、癒えているようだ。彼に、皆をこの場へ連れて来てもらわねばならない。しなければならないことは分かっている。
「ピエール!」
悲鳴に近い声が、リュカの隣に響いた。叫ぶビアンカの視線が捉えたのは、ポピーを庇い、巨人の足の下敷きになったピエールの姿だ。そのすぐ傍でポピーが、唖然とした様子で立ち尽くしている。涙さえ出ない。ただ動かなくなったピエールを静かに見ているだけだ。
仲間の命を救えるのは今、自分しかいない。リュカは考える前に行動していた。駆ける先に、倒れたピエールがいる。彼の魂がこの世を広く彷徨い始める前に、すぐに、生き返らせなくてはならない。しかしここでザオラルの呪文を唱えれば、敵から逃げるための呪文ルーラを唱える余裕はなくなる。
巨人の手が、ピエールの倒れるすぐ傍に立つポピーを狙う。リュカの横を疾風の如く通り過ぎていくプックル。彼がポピーの前に立ちはだかるようにして、その身で彼女を守る。迫るギガンテスの大きな手に飛びかかるプックルの身が宙に翻る。大きな敵の手を炎の爪で薙ぎ、巨人は鈍い痛みに手を引くが、代わりに大きな足を出してくる。
踏んでしまおうとする巨人の足の軌道を逸らしたのは、アンクルの突き出した槍だ。間に合わないと感じた彼は咄嗟に槍を投げつけ、その槍は巨人の足首に深く刺さった。敵が鈍痛に思わず足を上げ、その間にプックルはポピーの身体を押しのけてその場から逃れる。
リュカはその只中に飛び込むようにして、倒れるピエールに呪文を唱える。相変わらずと感じるのは、ピエールの魂がこの世に一度では戻ってこないことだ。まだ自ら生きる力が弱いのかと、リュカは内心でピエールを叱咤しながら、もう一度ザオラルの呪文を唱える。緑スライムの目がうっすらと開くのを見つつも、リュカは己の魔力が底を尽いたのを嫌でも感じた。
「お父さん! あいつらがこっちに……!」
ティミーの身体はゴレムスの足元に寄っていた。同じように、ビアンカもまた、息子の隣で周囲に視線を巡らせながら立っている。ゴレムスは辺りにいる巨人に対抗するために、右手でボウガンの矢を数本放ち、左の拳は敵からの攻撃を防ぐ盾代わりに前に出す。そうしながらも一つ所にまとまらなくてはならないと思ったのか、ビアンカがそのような指示を出したのか、ゴレムスはリュカたちのいるところへと近づいてきた。
ゴレムスの後ろから迫るのは、ティミーが口にしていた数体のホークブリザードだ。明らかにリュカたちと言う敵を見つけ、今にも攻撃を仕掛けようとしているのが、その直線的な飛び方に分かる。青い巨大鳥の攻撃など、一つも食らうわけには行かないと思えば、今すべきことはただ一つ、この場から逃げることだ。しかし、移動呪文を使うリュカもポピーも、魔力の底を尽いた。
ゴレムスが必死にギガンテスの巨体に対抗している。その足元で、蘇生したピエールが剣を振るいながら、イオの呪文で敵の目を眩ませ、プックルが飛びかかり、アンクルは再び槍を手にして敵と戦おうとし、為す術ないポピーを守ろうとしている。リュカ自身も戦いに加わるべきだと理解している。しかしその目はゴレムスの足元に寄る妻と息子を見ていた。
ホークブリザードが遥か高くにまで伸びる木々の上から、飛び込んできた。呪文の気配。それをいち早く察知したのはビアンカだった。
ティミーは敵の死の呪文さえ弾き返してやるのだと言うように、天空の盾を構え、母を守ろうとしていた。天空の盾に籠る破邪の効果を力強く信じ、その効果を以て敵のザラキの呪文をも跳ね返してやるのだと、ティミーは天空の盾を母と己の身の前に突き出した。しかしその両足が、身体が僅かに震えていることに、ティミー自身も意識しないような恐怖が現れていた。彼の脳裏には、彼らしからぬ悍ましい想像がちらついていた。
巨人の群れの中で、味方が皆、潰され、倒れている。見るも無残な光景が目の前に広がるが、己にはどうしようもない。それを見ているのは果たして生きている自分なのか、もう死んでしまい、魂だけとなった自分なのか、はたまた自分ではない何者かの視界なのか。全滅した家族も仲間も、そのうちこの暗い魔界の一部となり、長い時間をかけて森の外に見て来た毒の沼地となり果ててしまう。天空の剣を手に持ち、盾を敵に構え、鎧兜に身を守る勇者はここで倒れる。いくら世界を救う者として生まれた勇者でも、一人のちっぽけな人間に過ぎなかったのだと、この魔界で思い知らされる。本来、ティミーの頭に巡るはずの夢や願いが、意識もしていない恐怖に押しつぶされようとしている。天空の盾に帯びるはずの竜神の力が足りない。死の呪文が目前に迫る。
ティミーの身を守るように、ビアンカはほとんど本能的に息子の身体に覆いかぶさった。成長したティミーの身体が全て、ビアンカの女の身で隠れるわけではない。しかし敵の呪文から息子を守るのは自分だと、ビアンカは他の誰にもこの役目はできないのだと言うように、ある種の自信を以てティミーを守る。
リュカの目に映ったのは、ビアンカの身体から一切の力が抜ける場面だった。開いていた目はゆっくりと閉じられ、ティミーの身体を庇うべく覆いかぶさった身体は、そのまま重力に任せて息子の身体を覆っている。命を投げ出した後でも彼を守るのだという意思を、意地を、義務を、見せられた。恐らく彼女は考えるよりも先に、子供を守ろうとしただけだ。
リュカが辛うじて己を見失わなかったのは、ティミーを思ったからだった。ぐったりとした母の様子に、ティミーは現実を知ったに違いない。その表情が怯え切っており、現実を認めたくないのだと、その場から身を起こしもしない。後ろで自身に覆いかぶさる母の様子を確かめることもしない。ただ己の肩から前に投げ出された母の左腕を、頼りなく掴んでいる。そのような息子の様子を目の当たりにして、父であるリュカが己を失うわけには行かない。
この場から離れなくてはならないことだけは分かっている。ホークブリザードが再び死の呪文を浴びせようと、高みからリュカたちを見据えている。リュカはこの状況で、何故か周りの景色が酷く冷静に見えていた。その代わり、音と言う音が何も聞こえなかった。ただ周囲全ての景色が手に取るように分かった。聴力に残しておくべき力を全て視力に替えたようなものだったのかも知れない。
その中でリュカの視界に色濃く残るのは、ポピーの被る帽子だった。逃げる手段が残されていた。
ポピーに叫び、呼びかける。その瞬間、リュカの身体にも死の気配が色濃く漂った。死の呪文を浴びたのだと分かった。視界に映ったのは、ポピーを守ろうとその大きな身で彼女を包んだアンクルが、地面に力なく倒れた姿だ。彼も死の呪文の餌食となった。ここで己が呪文に食われるわけには行かないと、リュカは怒りを込めて己の身体を食らおうとする死に抗った。
涙も流せないポピーがこちらを見ている。リュカに救いを求めている。半ばアンクルの身体の下敷きになっているような状況だが、彼女はその重みを感じる余裕もなく、ただ怯えた目でリュカを見つめ、ただ信じている。すぐ後ろには、大きな仲間の気配がある。その足元には今も息子と、彼をその身で守る母がいる。ポピーの傍には、倒れたアンクルの代わりにと彼女を守ろうとするプックルとピエールの姿がある。今、仲間たちは皆、一つ所に集まっている。
ギガンテスの振るう棍棒が頭上から落されるのを、ゴレムスが拳で力強く払った。そのすぐ下でリュカは駆け、力を一切失ったアンクルの巨体に潰されかけるポピーの元へ飛び込んだ。
ポピーの身を常に案じているような、彼女の頭を守る風の帽子を、リュカは左手に掴んだ。ラインハットのコリンズから、ポピー自身はヘンリーからもらったのだと主張していたが、それを思うと、やはり友は自身よりも余程現実的で、逃避的だと感じた。
“おい、リュカ! とっとと逃げるぞ!”風の帽子を宙に放り投げると同時に、彼のそんな声が聞こえたような気がして、それだけで思わずリュカは本能的に助かったのだという安堵に気が遠くなるのを感じた。
風の帽子に宿る魔力がリュカたちをまとめて包み込む。青い帽子の脇を飾る一対の白い羽が羽ばたき、向かうべき場所を目指して飛行を始める。ギガンテスの振るう棍棒の軌道をすれすれのところで避け、大きく開かれるホークブリザードの嘴から吐き出される冷気の中を掻い潜り、リュカたちは巨体のゴレムスを中心に一体となって、エビルマウンテンの麓に広がる森の上へと飛び出た。
リュカの視界はまだ奇妙なほどに明瞭に広がっていた。その代わりやはり音はまだ全く聞こえない。森から飛び上がったそこには、エビルマウンテンの黒々とした山の景色が思ったよりも近くに見えていた。リュカの目に、エビルマウンテンの山々を背景に聳え立つ、敵の居城の威容が映る。禍々しい像が並ぶそこが、敵の潜む城の入口。冷たい青白い炎にも見える光が、並ぶ悪魔の像と共に見え、その中心に一つだけ、リュカを誘うが如くの赤い炎がゆらゆらと揺れていた。挑発的にも見えるその動きに、リュカは思わず歯ぎしりをする。己の口の中に起こる歯ぎしりの音だけが、リュカの脳の中に響いた。
その時、エビルマウンテンの山の頂近くに、涼やかな青白い光の筋が、空に向かって伸びるのを見た。その光景に、ジャハンナの町に流れる水の清かさを思い出し、リュカの視界がぼやけだす。みるみる離れるエビルマウンテンの景色と共に、リュカの耳には空中を高速で移動するために起こる風の音が響いた。エビルマウンテンの山の頂から寄せる聖なる祈りが、リュカを危険から遠ざけるように響いたように感じた。リュカはぼんやりとした視界の中に敵の根城の光景を焼きつけようと必死に両目を開いていた。目的の場所はもう目前だった。そして目を閉じ、敵の居城の威容を、脳裏に一枚絵としてはっきりと残した。

Comment

  1. ケアル より:

    bibi様。

    魔界は戦闘描写がたくさんあって読み手側もハラハラドキドキで目が離せないです、わくわく(アーニャ)であります!

    ガメゴンロード戦、こやつはゲーム初見プレーヤーはマホカンタがかかってるなんて知る余地もないので、妻のベギラゴンかメラゾーマ、娘のイオナズンをぶっ放して…「……⁉」になるんですよね、あわやパーティ全滅になりかねないダメージに慌てます。
    稲妻連発とベホマはずるいやつです。
    そんな中のアストロン、無駄行動と言ってもいいですよね不思議であります(笑い)

    ギガンテス戦、いやいやいやゲームではパーティもレベルがそれなりにあり上級呪文や攻撃力も高いので、ギガンテスなんてごり押しで倒せるんですが、MP切れのbibiワールドパーティ…いや無理でしょ、ビアンカはもう戦闘に加われないし…。
    ギガンテスの踏みつけ強化攻撃の描写おみごとです、逃げ回りながらの攻撃描写が目に浮かびますよ、それとギガンテスの痛恨の一撃、さすがのゴレムスも危なくなりますね。
    ドラゴンクエスト大辞典で調べてみたらギガンテスの攻撃力、すんごく高い設定になっているんですね、URL貼り付けますね。

    https://wikiwiki.jp/dqdic3rd/%E3%80%90%E3%82%AE%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%B9%E3%80%91

    bibiワールドで、みなごろしを使わなかったですね、まだ後の描写になりそうですか?
    もう全滅しかけてるのにbibi様、容赦なくまたしてもホークブリザードを繰り出して来るなんて、もう…無理でしょ!bibi様ここでパーティ全滅=小説終了させるのかと、一瞬頭を過りましたよ(汗)
    やはりジャハンナに戻ることになりましたか…ルーラも使えないのにどうするのかとハラハラしましたよ…風の帽子がありましたね、またしてもヘンリーに助けられました(笑み)
    ビアンカとアンクルが死んでしまったまま…MP切れのリュカとティミー…どうやって生き返すんでしょうか…教会?
    パトリシアがいてくれたら、馬車に乗り逃走できたのかも?
    スラりんがいたらニフラムでギガンテス離脱できたかも?
    色々と考えると楽しいです。

    次回はジャハンナ、これからの描写の予想がつきません、おそらく…まずはビアンカとアンクルをどうにかして生き返して…う~ん…。
    次話早めにお願い致します。
    あ!今築きましたティミーとポピーエルフのお守り装備してましたよね、だからティミーザラキで死ななかった描写に?
    次話お願い致します。

    • bibi より:

      ケアル 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      魔界編はどうにも戦いばかりで、私が息切れを起こしているような状態です(笑) 書いている途中で、今ってどういう状況だっけ?と混乱することもしばしば……。一気に書き上げたいところなんですが、取れる時間が細切れになったりするので、まとまりがつかなかったりで書き直したりで余計に時間がかかったり。もっと頭もクリアにしてすらすらと書けるようになりたいもんです。

      ガメゴンロードは群れで来られるとなかなかヤバイ奴です。稲妻を連続で浴びると一気に窮地に追い込まれたり、油断できない敵です。群れで来たからと呪文で攻撃しようとすれば跳ね返してくるし。見た目よりも強いじゃないかと、ある種裏切られる敵な気がします。アストロンって唱える時が難しいですよね。待ち伏せされたら一巻の終わりのような気もします(汗)

      ギガンテスはとんでもなく強いというイメージで。ちょうど年末年始にかけて進撃の巨人を見てしまった影響もあるのか、巨人に対するイメージが湧きやすく、当初思っていたよりも動いてくれました。ただ、大きいだけに動きは鈍いと。これで動きが素早かったら勝ち目はないですね。痛恨の一撃はゲーム内でも何度も食らったことがあります……あれは恐ろしいですね。一撃で画面の色が変わりますから。
      みなごろしを使われたら全滅免れずですね……。ちょっと使ってほしくないなぁ、なんて。

      小説終了……そうか、その手が……、いや、もうちょっと頑張ります(笑) でもこの手で終了させようと思ってもマスタードラゴンが無理強いしてくるでしょうから、終わらせられないかな。あの竜神め。

      ここは風の帽子で切り抜けようと考えていました。ただ、いつものことながらざっくりとした予定なので、どうしようかと考えながら書いていたら、こんなお話になりました。いつも行き当たりばったりで……次のお話もこれから細かく練る予定です。こんなんで最後まで書けるのかどうか、不安ですがどうにか頑張りたいと思います。

      そうですね、仲間にしている魔物によって色々と行動が変わるから、それを考えるのも楽しいですよね。やっぱりスラりんを連れて来るべきだったか、と密かに思っているのはここだけの話にしておいてください(笑)

      ザラキで子供たちが助かったのは単にビアンカとアンクルが庇ったから、と考えていましたが、エルフのお守りかぁ、それもいいですね~。(考えてなかった……)

      次話はジャハンナの町でのお話になりそうです。ちょっと戦いから離れて、考える時となるかな。

  2. ベホマン より:

    bibi様
    魔物の恐ろしさを、改めて感じさせられました。
    ガメゴンロードの常時マホカンタ稲妻地獄、ギガンテスの
    痛恨地獄、ザラキ(神官さん宜しく)の雨など…
    勝ち目がないような戦いばかりでもう本当に熱くなります…やはり一時退却でしたか…ここに来てヘンリー(コリンズ)の風の帽子が役に立ちましたね。
    あれ?これってエビルマウンテンに行った判定になります?ルーラで戻るのも、流石にそうでないと大変ですよね、(いままでの苦労が水の泡)
    ここで地上に戻るとか?ないか…
    そうそう、私北海道に住んでいるのですが、
    昨日(2024/04/20)に、帯広のばんえい競馬で、ドラゴンクエストウォークとコラボしたレースが開催されたんです。
    見に行けなかった…悔しい。
    長文になってしまいましたが、これからも楽しみにさせていただきます。それでは。

    • bibi より:

      ベホマン様

      コメントをどうもありがとうございます。
      数話、戦いのお話が続きましたが、ここで一度休憩に入ることになりました。一時撤退。限界でしたね、色々と。
      魔物との戦闘は攻略本を見ながら書いていたりします。どんな特技があったかしらと本を見て確認しないと忘れてるんですよね~。まあ、魔物の特性を全て書き切ることはできませんが。なるべく描写しておきたいなぁとは思っています。
      町に戻ったはいいけど、この後のことは何となくしか考えていません。でもなんとなーくは考えています。細かい所をどうしようかなと、これから練って行きます。まあ、私の頭で考える程度のものなので、大した話にはならんと思います(笑)
      北海道でそのようなレースが・・・いいですねぇ。今もドラクエというゲームが生きているなぁと感じられそうです。話に音楽にキャラクターにと、これほど揃ったゲームもなかなかないと思うので、これからも色んな形で生き続けて欲しいなと思います。

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