中学受験を目指す人にとって気になるものと言えば、塾のクラスと塾の成績(偏差値)ではないでしょうか?
春期講習も終わって、4月から新しいクラスになった人もいるでしょう。
6年生にとってはクラスももちろん大事なのですが、気になるのは志望校の偏差値ですね。
塾の偏差値表のA判定偏差値(日能研はR4偏差値)を取れるかどうかが勝負となります。
A判定偏差値さえ取れれば合格可能性80%以上(希学園は85%)、つまり確率で言うと5回受けたら4回受かるのです。
と思っていた時期が私にもありました。
大手塾に入社して2年目で6年生を担当するようになりました。
そうすると、保護者から問い合わせがあるわけです。
A判定ギリギリ取れたけどこれで80%合格できるのでしょうか?
A判定に1ポイント足りないんですが合格可能性はどれくらいでしょうか?
と。
そこでベテランの講師にいろいろ相談するのですが、人によって言うことがバラバラです。
・A判定ギリギリだとけっこう危ない
・感覚的には6割くらいの合格率
・学校による
・偏差値表がおかしい
・偏差値のことはわからない
偏差値の計算方法というのはある程度数学を勉強していないと理解出来ません。
統計学の基礎知識は必要だと思います。
文系の大学出身の先生はあまり詳しくないようですし、理系の大学出身の先生でも偏差値を求める公式を知っている人は数少ないと思います。
それでも成績表と偏差値表さえあれば計算は不要なので、わざわざ時間を掛けて勉強する必要はないのでしょう。
ベテランになると経験的にこれくらいの成績なら「いける」、これだと「危ない」、これじゃ「無理」という判断(勘)が出来るようになります。
私は入社3年目でコース統括に抜擢されたので、そこで初めてコース生全員の成績資料を管理するようになりました。
といっても、データにアクセスできるのは教室職員のみで、講師は教育相談資料として全員分をプリントアウトしてもらう形式でした。
それをすべてエクセルに手入力して、データベースを作っていました。
ものすごく手間が掛かるので、そんなことをしているコース統括は3人くらいしかいなかったと思います。
例えば、A判定(R4)偏差値60の学校を受験するとしましょう。
偏差値60を取っていたら、合格可能性は80%だと思っている人がほとんどだと思います。
それは勘違いです。
A判定なら合格可能性80%以上というのは真実です。
これは根拠があります。
毎年4月くらいに新しい偏差値表に切り替わると思いますが、これは今年の1月の入試結果を基にした最新のデータです。
今年の受験者をその偏差値で区切ってA判定とした場合に、80%以上が合格になるように調整しているのです。
ただし、偏差値60というのはあくまでもA判定の区分(RANGE)の最低値です。
偏差値60以上の全受験生の集団をA判定とした場合に、その80%以上が合格しているという意味になります。
A判定の受験生が100人いたら80人以上合格しましたということです。
来年度は特に大きな変化(塾生数の増減、志望校の募集人数の変更、入試制度の変更など)が無ければおそらく同じような結果になるだろうという予想偏差値なのです。
問題は、A判定の受験生100人受験したら20人近くは不合格になる可能性が高いということです。
ではどのような受験生が不合格になりやすいのでしょうか?
ほとんどの入試は学力のみのテストで、成績順に合格となります。
ということは、同じA判定であっても成績が高い人ほど合格しやすく、低い人ほど不合格になる可能性が高くなるわけです。
では、同じA判定でありながら最も成績が低い人とはどういう人かというと、A判定ギリギリの人であるということ誰でもわかる話です。
塾では新しい偏差値表が発表になる前に、予想偏差値を決定する会議が行われます。
会議に参加するのはコース統括とか学園長、副学園長クラスです。
偏差値自体はすでに結果に基づいて計算されたものがあるのですが、それをそのまま出すと誤差があったり、不都合があるので調整を掛けるのです。
そのときに持ち出し禁止の極秘資料を閲覧することが出来ます。
偏差値別の受験者数、合格者数、不合格者数、合格率などが学校別に表になったものが配られ、会議が終わると回収となります。
偏差値別の合格率
当然、偏差値がA判定ラインより上になると高くなります。
5ポイントくらい上だと100%という数値が並びます。
そこから下がってA判定に近づくにつれて不合格者が出始めます。
その偏差値の受験者数が少ないと、4人中3人合格(75%)なんていうこともあります。
その一つ下の偏差値で3人中3人合格(100%)と逆転することもあります。
受験者がいなくて、データなしという偏差値も出てきます。
A判定より下になると合格率は急に低くなります。
ですから偏差値別の合格率なんて出せるわけがないのです。
ではどこでA判定のラインを引くのかということなのですが、
偏差値の高い方から順に、受験者累計、合格者累計を求め、合格率を出していきます。
それが80%を下回る偏差値の一つ上をA判定偏差値とするのが一般的です。
合格者の偏りによって、合格率が一旦80%を切って、その下でまた80%を超えることもあります。
そんなときはどうするかというのを協議します。
難関レベル(偏差値40台)の学校だと合格率が塾全体で90%を超える学校も出てきます。
受験者数が少なすぎる場合は正確なデータが得られません。
そういう学校は偏差値表には載せなかったり、下の方でまとめてしまったりすることがよくあります。
しかし、コースの対象校や併願校になっていたり、それなりに歴史のある人気校の場合、あまり偏差値を低くし過ぎると文句が出たり、人気が下がったりするので、ある程度調整を掛けたりします。
つまり、少し高めに設定するということですね。
合格可能性は確率ではない
A判定の80%というのは「確率」ではありません。
5回のうち4回は合格ということではないのです。
より正確に表現すると、5人のうち4人が合格という意味になります。
つまり、A判定の受験生を無作為に5人抽出すると、平均して4人以上が合格するということです。
確率というのは、サイコロを振ったときに1の目が平均して6回に1回出るというものです。
ただし、サイコロはどの目も等確率に出るものであるという前提です。
期待値は3.5です。
ですが、受験生はみんな同じ学力というわけではありません。
期待値が異なるのです。
例えば、過去6ヶ月間の偏差値をそれぞれサイコロの目に対応させてみましょう。
1が出たら1ヶ月前、2が出たら2ヶ月前…の成績としてみましょう。
で、サイコロを振ってA判定偏差値以上の値になったら合格というゲームをしてみます。
どのような結果になるでしょうか?
成績上位の人なら何回振っても合格になるかもしれません。
中には3回に1回しか合格にならない人もいるかもしれません。
それでも、100人集めて一斉にサイコロを振ったら、だいたい80人くらいは合格になるということです。
つづく
算数塾NEOチャンネル コラボ企画
今回は声だけの出演です。
視聴数が伸びないと私のせいみたいな感じになるので、ぜひ見てください。
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