見せつけろ! コラボの真髄――「真夜中ぱんチ」8話レビュー&感想

©2024 KADOKAWA/P.A.WORKS/MAYOPAN PROJECT

電影の「真夜中ぱんチ」。8話では真夜中ぱんチが動画配信者のフェスに出演する。コラボが鍵とされるこの回、彼女達は一体何とコラボしたのだろう?

 

 

真夜中ぱんチ 第8話「参戦!TSUMA FES・極」

mayopan.jp

1.コラボの枠

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伝説の配信者・TSUMA氏の誘いで彼主催の大型イベント「TSUMAフェス」に参加することが決まったマヨぱん。登録者数100万人達成のための真咲の作戦第3段階「有名配信者達とのコラボ」にはうってつけの舞台……のはずだが前半のコラボステージでは今ひとつスベり気味。後半のオリジナルステージへ向けて気合を入れ直そうとしたその時、会場が停電に見舞われ……!?

 

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新しいステージの「真夜中ぱんチ」。8話はコラボが鍵となる回だ。主人公である真咲は動画チャンネル登録者数100万人達成のため有名配信者達とのコラボを考えていたが、その機会は思わぬ形で訪れることとなった。なんと「配神」と呼ばれたレジェンド配信者・TSUMA氏の主催するフェスに招かれたのだ。出演者は彼女達真夜中ぱんチ(マヨぱん)の他にも筋トレ系配信者やコスメ系配信者、シンガーに料理研究家、工事系配信者(?)などなど強烈なキャラクター性の持ち主が勢揃い。まさにコラボ相手に事欠かない大チャンス……だったのだが、前半のステージでの彼女達の活躍は今ひとつ精彩を欠いている。歌が得意な譜風はステージに圧倒されてしまって記憶が飛び、十景は女性ファンの多い配信者から望まぬ愛の告白を受け大ブーイング。料理が得意な苺子は麻婆豆腐のお題を間違えて杏仁豆腐を調理し、りぶに至っては出演コーナーが事実上他の配信者の謝罪会見になってしまってまるで目立てない。他の配信者との組み合わせの妙を発揮できていないこの状況は、端的に言ってコラボの失敗以外の何物でもあるまい。

 

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逆説的だが、フェスはコラボの恩恵を受けるのが難しいイベントである。多数の人間が出演する以上、目立てなければかえって埋没しあるいは引き立て役に終わってしまう。かといって目立てばいいわけでもないのは十景や謝罪会見状態のクイズコーナーが示した通り。ではその限界から、「枠」からマヨぱんはどう飛び出したのだろうか?

 

2.繋げ! 光と影のコラボレーション

多数の人間が参加するフェスでコラボの枠を飛び出す方法。それは思わぬトラブルから実現することとなる。後半ステージが始まろうとしたその時、なんと会場が突然停電に見舞われてしまったのだ。TSUMA氏はフェスを中止しようとするが、音も照明もない真っ暗闇では名だたる配信者達もお手上げだからこれは無理もないことだろう。……だが、今回のフェスには暗闇の中をこそ本来の住処とする外れ者達がいる。そう、ここで動けるのは真夜中ぱんチしかいない。

 

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マヨぱんは奔走する。真咲は停電の原因を探りりぶ達の歌を観客に届けようとし、りぶ達は彼女を信じて暗闇の中ステージで歌い始める。この時観客の、そして私達視聴者の関心はマヨぱんに釘付けだ。豪華な他の出演者(そしてそれを演じる豪華キャスト)に目を奪われる時間はいつの間にか終わっていて、物語の中心は間違いなく彼女達の一挙手一投足にある。これほど目立つ状態は他にあるまい。そしてステージの成否はフェスの成否そのものに直結していて、この時りぶ達はもはやTSUMAフェスと対等の存在だ。言うなれば歌っているマヨぱんはフフェスそのもの・・・・・・・とコラボしている。そう、フェスにおけるコラボの「枠」から抜け出す方法とは、出演者とではなくフェス自体とコラボすることであった。

 

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真咲の尽力で事件はなんとか解決、照明はりぶ達のステージを盛り上げる最高の演出となって復活する。続いてステージに現れる他の出演者はフェスを彩りはするがもはや脇役で、今回のイベントの主役の座は完全にりぶ達4人のものだ。真っ暗闇で動くりぶ達と光り輝くステージの「コラボ」は、これ以上ない成功を収めたと言っていいだろう。……ただ、そこには一人、脇役どころか引き立て役ですらない者が一人いる。そう、真咲である。

 

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真咲が犯人に放ったのは文字通り「真夜中ぱんチ」だし、そもそもこのグループ名は半分は彼女がかつて配信者を殴って炎上した過去に由来する。間違いなくマヨぱんの一員の真咲はしかし、裏方に徹しているため脚光を浴びることはない。りぶ達があまりにも眩しい光を浴びる姿を見て彼女の胸にちくりと走った違和感は寂しさか嫉妬か、それともはたまた別の何かか。少なくとも、彼女が見せた影がりぶ達の光と対になって印象を強めているのは確かだろう。夜にしか動けないヴァンパイアが光の中に、そして昼に動ける人間が影の中にいる状況はあまりに対照的だ。彼女達のコラボが本物だったからこそ、それは光と同じだけ影も浮き上がらせてしまったのだろう。

 

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真咲「……あれ?」

 

光が多いところでは影も強くなる。コラボの真髄は対等なところに生まれるものなのだ。

 

感想

以上、マヨぱん8話のレビューでした。前半と後半で具体的に何が変わったか考えるのに非常に悩みました。本文中でも触れてますが、いろいろな出演者に目移りしてたはずなのにいつの間にか視線がりぶ達に吸い寄せられてるからすごいですよね。あと気だるそうな十景が妙にツボで困ってしまいました。

 

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これ、スタッフには苺子達がワイヤーで吊り下げてることにして実際はりぶが能力で飛んでる(だから彼女1人で登場)……という理解でいいのかしらん。能力バレないかヒヤヒヤものだ。

 

dwa.hatenablog.com

なお、最新話の放送前には1つ前の話を見返してるんですが7話はそれでだいぶ見えるものが変わったので追記しました。ようやくちゃんと「枠」の話で捉えられたし、ふだんは避けて通っている「尊い」等の言葉でかえって自分を枠にはめてしまっているのも分かってとてもためになりました。うん、やっと素直に言える。7話はいい回だった!

 

 

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