特典会芸人になってしまったおたくの半生を振り返りました。最後にお知らせがあります。 | おたるつ

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モノホンのおたくにジャンルは関係ねえはずだ!
ってわけで、おたくのるつぼ。略しておたるつ

コロナが明けたかといえばまだまだなご時世だが、“推し活”業界では感染対策をしつつ、オフラインのふれあい(特典会など)も復活してきた。


わたしは特典会に渾身のネタを仕込んだり、思いついた悪ふざけで遊んでしまう。
オフラインの撮影会なら衣装やポーズ(またはポーズの解釈)、オンラインならサインの宛名やメッセージなど。
推しにすら「おもしろいよね。いろいろ考えてくれるのなんで?」と特典会芸人の不可思議な行動を疑問視されている。それはそう。


ぶっちゃけ恥ずかしい。恥ずかしいけどブチ楽しい。
 

仲間内にも一体どうしてそんなおもしろいことを思いつくんだ!? という人が多くいて、その境地に至った経緯はそれぞれだと思う。
個人的にそろそろリリイベシーズン(CD発売に向けて行う最大3カ月+4日続く予約・購入会・リリースイベント)を迎えることもあり、
どうしてこうなってしまったのかを振り返りたい。


■ 隣に立つのが無理だった

とんでもなく顔のいい推しに出会った。
それまでの現場にはほぼなかった“接触”(握手会や撮影会などのふれあい)がある。
無理。
とにかく顔面が芸術作品で、容姿も年齢も市場価値の低い自分が隣に並ぶのが苦行だった。
撮ったツーショを見ても同じ人間だとは思えない。

この美しい推しが人間とするならば? わたし…え、豚? 
しかも全然しゃべれない。何を言っていいかわからない。何を言っても恥ずかしい。
若くて美しかったら「○○くんダイスキ〜」と言いながら隣でハートがつくれるのだろうか。
いやそれ本当にちょっとマジで無理なんですけど。
でも写真が撮りたい。近くで顔が見たい。

今日もかっこよかったです楽しかったですと伝えたい。


そうした機会を何度か経て、わたしは豚ではなく牧場主になった。



 

いやー、ウケた。笑顔の写真が撮れた。
設定を汲んで表情をつくってくれ、楽しそうでおもしろい写真を見返してはニコニコした。
こうして、ネタに走ることでイケメンと写真を撮る恥ずかしさを別の方向にぶん投げることに成功した。

話せない問題も何かしら用意してくことで推しサイドから話してくれることも多くなり、回数を重ねていくうちに多少話せるようになっていった。

だんだん周りに変な人が増え、特典会芸人たちはイベントを週末仮装大会と呼んで楽しんだ。
環境の変化で太ってしまっていたわたしは、イケメンと変な写真を撮っているうちに自然に7キロやせた。
推しよ、豚から人間に戻してくれてありがとう。


■ おのれのスマホに宝物はあるか

前述の推しがいたグループは解散し、新たな現場に通っていた。
そこはイベントがめちゃくちゃ多い。

全部なんてとても行けないが、平均すると週3はイベントに行った。
仕事を定時で上がって駅までの車の中か、どこかのトイレで服を着替える。

仮装などしている暇はない(たまにしてたけど)。


推しの衣装は基本的に変わらない。立ち位置も一緒。表情指定もNG。

ポーズはピースかハートの2種類。
これに変化を持たせようというのは、推しサイドに多大なる工夫を強いていると思う。


だがしかし、おたくはおたくの写真を査定する。
ツーショの距離が遠いから嫌われてる、近ければ寄り過ぎキモイ、テンプレ顔、顔背けられてる、文句言ってかわいい顔させてる。
そして枚数マウント。
これ現場変わってもどこにでもいて、人の写真にあーだこーだ言う。

軽蔑と憤怒を込めて「画像警察」と呼んでいる。
画像警察に何か言われるのが嫌でSNSに画像上げるのやめちゃうと、

「誰これかっこいい」「楽しそう」「わたしも行ってみたい」ってなるチャンスがなくなる。

画像警察は営業妨害ですよ。
本当にNGな写真なら運営が言うからおたくが言わなくていいんですよ。
 

話がそれた。
リリイベに入れば衣装が変わったり日替わりポーズが追加される。

けど直前で準備できなかったり、そもそも毎日イベントがある。1日に何回もある。

体も心も財布も行くだけで精一杯だった。
もうツーショの顔とかどうでもいい。同じ同じ同じ。推しもわたしも疲れてる。
CDを予約して推しの隣に立ち、写真を撮って帰るロボット同然。


そんな頃、初めて行く土地へ遠征があった。

そこで出会ったひとりの女子高生が、特典会への考えを変えてくれた。

会場で声を掛けたのは、引き取りに来れない僻地で数枚買うCDの送料が惜しかったから。
よし、この予約用紙を地元の人にもらってもらおうと、女子高生に声を掛けた。


「これもしよかったら一緒に引き取って友達にあげてもらえませんか」
「え、いいんですか!? CDもらっちゃっていいんですか!? 学校で配ります!」


まぶしい。
女子高生は田舎の最低時給700円くらいのバイト代を貯めて買った(妄想)1枚の特典券を握りしめて(完全に妄想)

生まれて初めて生で見た憧れのアイドルとツーショットを撮った(本当の話)。


キャーキャー言いながら戻ってきて、撮った写真を見せてくれた。


メンバーのなんてことない表情。疲れさえ見える。

もっといい顔してあげればいいのにと思った。
なんならピントも甘くて、女子高生が画面が割れたiPhoneで拡大したアイドルの顔は

ぼんやりしていた。
あとで話したら、その場にいた友達数人は同じことを思っていた。


ところが、女子高生は

「もうっ…、宝物にします!!」

と言って、iPhoneを胸に抱きしめた。


ガツンときた。
わたしのスマホに何百とある推しとの写真。
その中に宝物は何枚あるだろうか。
こんなに大事に思える1枚があるだろうか。


仲間内の誰かが撮った写真があれだったら、なんてことない1枚になったと思う。
「遠くまで来たんだからもっといい顔しろよ」と文句を言ったかもしれない。
でもあの女子高生にとっては宝物なのだ。
「あれ泣きそうになったんだけど」
「わたしも。いや、ちょっと泣いたし」
「もっと1枚1枚大事にしよう」

次の会場へ向かう道中だったか、友達とそんな話をした。


■ 全部宝物にしたい

どうしたら1枚1枚を宝物にできるのだろうか。
特典列に並ぶ立場のおたくが悩むのだから、並ばれるほうに「1回1回大事にしてほしい」と

期待するのはさらに難しいだろう。
こちらが思いを込めるだけでは「わたしのXXXX円なんだと思ってんの!?」と空回りすることもあったし、推しも撮影スタッフもその1枚撮る瞬間と前後数十秒に数千円が発生している自覚はいちいちないだろう。
じゃあ何をどう提供してもらったら金額に見合った価値が生まれるのかって、払ってるこっちが聞かれても分からない。
写真を撮る特典に関しては最低限、ピントは合わせてほしいが。

結局、自分が最大限楽しめるように、その機会を無駄にしないように準備することを選んだ。
ライブが終わってから列に並んでいる間、伝えたいことをメモに入力して覚える。
何かひとつ、その日良かったところを伝えようと思って見るライブは集中力も上がっていい。
電話系特典会はカンニングができる。
話したいことをメモに書いて見ながら話し、時間配分を見るためストップウォッチも使う。
ビデオ通話系なら背景も飾るし、服も選ぶし、文字を書いて見せるスケッチブックも作った。
思いついたポーズや、友達の特典会の写真でいいと思ったものはスマホにメモする。
ポーズは撮る前に練習する。
ネットサイン会の宛名も暇な時に検索したり、思いついたらすぐにメモ。

ネットサインて、普通にやったら絶対おもしろくない。そうゆうものだと思っている。
サインがもらえて名前を呼んでもらえてうれしいのは最初だけで、サインは何個もいらない。
サインするものが変わる場合は複数あってもいいかな。
接触がある推し活というのはコミュニケーションのゲームだから、相互コミュニケーションができなければ意味がないのだ。
幸い、今参加しているのは宛名が10文字まで指定できるから10文字めいっぱい使って考える。
それでメンバーが笑ってくれたり、コメントしやすかったらそれでいい。うれしい。

何人かの推しを見送ってなお、わたしはまだ特典会で写真を撮っている。
先日、推しにある特典会で撮った写真が狙い通り以上の出来で大満足だったいう話をした。
「どうゆう写真撮りたいかすぐ分かったもん!」と自慢げだった。


これが初めてツーショ撮った時6枚全部同じ顔してた人物…!?
あの時は「新規じゃなかったら病んでた!」と言いながらスマホをぶん投げた。

嘘です。スマホは投げてません。


推しはわたしの謎の全力投球を「なんで?」と聞きつつも、フルスイングで応えてくれる。
ちょっと構えているのを感じたり、何か言わないと!という顔をしている時もあって、申し訳なさも少しある。
わたしなりに推しのことを考えて、お題や伝え方を研究しているので許してほしい。頑張る。

特典会でふざけるのって、ただただ迷惑かけてるだけの場合もあるから修業が必要よね…。

気を付けて修業に励みたいと思います。


そして願わくば、推しやメンバーにも特典会を楽しんでもらいたい。

「こんなことやるためにやってるんじゃない」と思うこともあると思う。

わたしは特典会が好きで楽しいけど、推しは本当はやりたくないんじゃないかという不安は見に覚えがある人も少なくないだろう。

笑ってほしい。楽しんでほしい。一緒に楽しいひとときを思い出にしたい。

推されている今を喜んでいてほしい。

一緒に宝物をつくりたい。

ちゃんと今、わたしのスマホは宝物であふれている。
そんでもって、あの女子高生が宝物だと抱きしめたように、推しがあちこちの写真フォルダで誰かの宝物になったらいいなと思っている。

残念ながら今の現場では特典会で撮った写真をSNSに上げることができない。
しかし友達に見せれば口をそろえて「名画」と言う。
ぜひね、名画を撮って宝物にしていただきたいんですよ。
ネットサインも宛名10文字漢字OKで抽選しません。時間かけて全員やりますよ。
そんな機会を最後に紹介して、この壮大なステマブログを締めたいと思います。

7月20日 浅草の人力車男子ユニット「東京力車」新曲
三波春夫×ヒャダインによる新歌謡ポップス第2弾!!

「Sole!~おまんた囃子~」

 

リリイベ情報はこちらに随時更新されていくはず。

 

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