長谷川 「由香さん、少しは足の疲れ取れた?」


私 「うん!もう大丈夫!」


長谷川 「そろそろ戻ろうか。時間まだあるし俺んち一緒に戻るよね?」


私 「そだね。」



戻るよね? と聞かれると
まだ一緒にいたいと言われてる気がして

それだけで幸せな気持ちになった。



車を停めたパーキングまで、手を繋いで歩いた。



のぶくんは、車を発進させると

前を向いたまま言った。


長谷川 「桜井と、会って話す日を決めようと思うんだけど
      由香さんのいる前で、決めた方が
      由香さん不安にならなくて済むよね?
      あとで家に着いたら、目の前で電話するよ。」



また少し、複雑な気持ちになった。



私を不安にさせないように配慮してくれているのは嬉しい。


でも、できれば会って欲しくないのが本音だ。



私 「ありがとう。」



自分の本音も言いだせないまま

心の中では


何がありがとうなんだろ・・・。



とさえ思っていた。





それからは

家に着くまで特別な話はしなかった。




このまま、家になんか着かなければいいのに。



交差点に差し掛かるたびに

信号が赤に変わる事を、望んでいる自分がいた。




恋愛って


こんなに疲れるものなのかな・・・。




本当の恋愛をしてこなかった私は

「自分の知らなかった世界なんだ」と自分に言い聞かせる事で、

この疲労感の正体から、目を背けていたのかもしれない。





のぶくんの家に到着した。


買い物の荷物は、車に残したまま部屋に入り、

二人、ソファに腰をおろした。



のぶくんは、いつものようにドリンクを持ってくると言って一旦席を立った。


私は、微笑みながら返事をして

待っている間、何故かまたあの写真に目を移した。



千秋も映っているあの写真だ。




のぶくんが戻ってくる気配がして


慌てて視線を、部屋の出入り口に向けた。


部屋に入ってきたのぶくんと目が合い

また微笑んだ。




「おまたせ!」

のぶくんは優しい笑顔でそう言いながら


手に持ったドリンクを私に手渡した。





私 「ありがと!いただきまーす!」


なるべく明るい声を出した。



再びソファに腰をおろしたのぶくんは

ポケットから携帯を取り出して

こちらを向いた。



長谷川 「あんま遅い時間になる前に、桜井への電話しちゃうね!」


私は、口角を上げて

頷く事しかできなかった。


のぶくんも一度だけ頷いて

携帯の操作を始めた。



携帯の操作を終え、のぶくんが携帯を耳に当てたので

私の鼓動は少しだけ速くなる。





この電話で、今私といる事を伝えるのだろうか?


のぶくんが千秋に

今回の事をどのように話すのかもまだ分からない。

うまく言うからと言っていたけど、どんな話をするつもりなのか

全く見当がつかずにいた。






長谷川 「あー。お疲れさん。今電話いい?」


受話器の向こうから

あの甘ったるい千秋の声が聞こえて来た。




先程よりも脈動が激しくなる。

















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