晴耕雨読、山

菜園・読書・山・写真…雑記

ずっしりと重い『昭和街場のはやり歌』

2024年04月24日 | 読書

昭和の時代に多く歌われてきた馴染みのメロディー。「歌は世につれ、世は歌につれ」という言葉もあるが、GHQと戦後日本をつくったと書く「炭坑節」からウクライナ戦争を読み解くという「カチューシャ」まで20曲ほどの歌を紹介。表層的な部分のさらに奥深く、著者は<時代の深層に潜む真相>にまで迫る。少し先輩だが同じ団塊世代であり、思想的な見方にも共感しつつ興味深く読み進めた。「希求と喪失の章」の『あゝ上野駅』は今や<人生の応援歌でなく失われた故郷への挽歌>と指摘。特急寝台列車「はくつる」「ゆうづる」を利用した自分自身も郷愁とともに納得。「祈念と失意の章」の美空ひばりが歌う『一本の鉛筆』は<昭和の歌姫がうたい遺した鎮魂の反戦歌>とみる。聴いた記憶はあるが、彼女の幼児期の戦争体験など反戦意識の背景の推論には再認識。一部反対のなかで出演した第1回広島平和音楽祭、前年からの病をおして15回目の舞台で熱唱などの経緯について頷かされた。そして、ウチナー(沖縄)からヤマト(本土)への反問歌とする『沖縄を返せ』は、今なお危険な基地や辺野古問題をあらためて思い起こさせる。歌詞の一部が2度にわたって変えられてきたこと。最後の「♪沖縄を返せ 沖縄を返せ」を「♪沖縄を返せ 沖縄へ(に)返せ」に。続いて冒頭の「♪民族の怒りに燃える島」を「♪県民の怒りに燃える島」と。本土復帰への内容が明らかになって歌われなくなった時期、悲惨な事件・事故など幾多の経緯を経て再び歌われてきた。<沖縄人にとっては、幾度となく見捨てられた「祖国」に対する終わることのない反問>であり<かって彼らが“復帰”を願った「祖国」の住民にとっては、終わることのない自問でなければならない>と結ぶ。ユーチューブで実際に聴き、耳の奥深くにその叫びを留めておかねばと思う。本のサブタイトルである「戦後日本の希みと躓きと祈りと災いと」が通奏低音となり、ずっしりと重く届いた本である。

        

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿