光星学院 本当に強いです | 高校野球の壺

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1980年代から現在に至るまでの高校野球を自分なりに紹介しております。
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聖光学院の記事が滞っている間に、甲子園大会の日程はどんどん進み、昨日は大会終盤、準々決勝の二試合が行われました。

 今大会、一躍注目の的になった松井投手を擁する桐光学園東北勢最後の砦・光星学院が対戦しました。以前のブログでも話しましたが、本当に光星学院は「風格」が出てきました。そして、投打が非常に噛み合っているなと感じます。センバツから試合によって打線が投手を盛りたてる、逆に投手が打線を盛りたてるという相乗効果で勝ち星を重ねてきましたが、「本当に強いチーム」というのは、こういう戦い方が出来るチームだと思います。センバツの決勝でも大阪桐蔭・藤波投手に対して、力勝負で応じた戦いぶりは他のチームとは一線を画す内容だっただけに今大会も期待はしていましたが、これまでの戦いは見事としか言いようがないですね。

 昨日の試合は、桐光学園・松井投手の前に強打の光星打線も初回の天久選手の二塁打以降は6回までノーヒットに抑えられます。田村、北條の強打のコンビも松井投手にきりきり舞い、センバツで愛工大名電・濱田投手と対戦した時と同様に「完全に相手が上」という投球をされてしまいます。しかし、この状況を救ったのが、光星学院・金沢の好投でした。センバツ、夏の青森大会、そして今大会を通して「一番の出来」だったのではないかと思います。この大一番での金沢投手の好投(被安打3、四死球2、奪三振9)が味方打線にも勇気を与えました。終盤に三巡目の打席が回ってきた辺りから、光星学院が松井投手の球を捉え始めます。7回は北條、大杉の連打でノーアウトでランナー1,2塁となりますが、北條選手の三盗失敗などで無得点。しかし、続く8回には、ツーアウトながら1,3塁のチャンスで3番・田村が三遊間をしぶとく抜ける当たりで待望の先制点を奪います。更に続く4番・北條が左中間を抜くツーベースで2者が還り、2点を追加します。松井投手の球は確かに甘めにストライクゾーンに入って来ましたが、北條選手の球を捉えるポイントがとにかく良いですよね。少し外角寄りコースを踏み込んで左中間に上手く「運んだ」という感じでした。とにかくバットに当たれば長打コースという打撃はセンバツ時と変わりませんし、更に長打力に磨きがかかった印象を受けます。本来は中距離タイプの選手だと思うのですが、バットのヘッドが遅れ気味(残っている)に出てくるスイングの軌道とスピード、そして球を捉える位置の良さが長打連発の秘訣なのかなと思います。甲子園の大舞台であれだけ思い切りよく打てたら気持ち良いでしょうね。

 光星・金沢投手が9回を完封したのは公式戦で初めてかもしれませんね。序盤にアウトカウント間違えて、ツーアウトなのにピッチャーゴロをショートに送球(ゲッツーを狙ったのか)、北條選手がそのままファーストに投げ返してアウトにしたので事無きを得ましたが、やはり経験という面ではまだまだ(笑)ですが、監督の投手起用がセンバツから実に上手くいっている、本当に名監督だと思いますね。投打にダントツの戦力を誇る大阪桐蔭など全国の強豪と比べれば選手層が薄いのが今の光星学院の実情だと思います。それでも、これだけ強いチームが作れるのは監督の「腕」だと思います。選手の力を最大限に活かす采配、選手起用が出来る監督だなと思います。今大会も初戦の遊学館、次の神村学園と戦力的にはそれほど差が無いと思われるチームとの対戦でしたが、結果は光星の方が「上」でした。昨日の桐光学園戦も最終的には光星の方が「上」だと思える試合でした。

 大会序盤に好調だった東北勢も、聖光学院、秋田商、仙台育英が次々と敗れ、残すは光星学院のみとなりました。秋田商は仕方ないにしても、仙台育英は大会前に私が言っていた「貪欲に勝利を求める姿勢」が今回も今一歩足りなかったと思います。久々に8強、更にそれ以上に行けるチャンスだったし、その力もあっただけに非常に残念ですね。聖光に勝った浦和学院、更にその浦学に勝って久々に8強入りした理、それぞれタイプの違うチームではありますが、仙台育英と共通するのは甲子園常連校で選手の質、量ともに申し分なく、充実した戦力を持ちながら、最近の夏の甲子園では上位に食い込めていない点です。今大会、天理が久々に8強入りしましたが、浦学に勝っての8強入りですからね。昨日の大阪桐蔭戦ももう少し、善戦するかと思っていたのですが、良い所が無かったですね。藤波投手の出来がそれ程良くなかっただけに、もう少し頑張って欲しかった。個々の力は相当あるチームなんですがね。特に先発した山本投手は途中でマメが潰れてしまったようですが、かなり力のある投手だなと思いました。彼の調子が良ければ、大阪桐蔭打線でも、そうは打てなかったように思います。球速は140キロ前半~中盤ぐらいでしたが、腕がよく振れていて、打ちにくい球でした。天理は常勝時代の橋本監督に代わったことで形はどうであれ、「殻」を破りました。仙台育英も、そろそろ「3回戦の壁}を破って欲しいです。

 光星学院の準決勝の相手は、今日行われる「東海大甲府 vs 作新学院」の勝者となりました。どちらが勝っても、光星学院が勝つ可能性が高い相手だと思います。センバツ決勝の再現が現実味を帯びてきました。光星以上に大阪桐蔭の決勝進出は間違いないでしょう。その戦力は今大会でも図抜けており、雑誌である高校の監督が「全盛期のPL学園に匹敵する強さ」と表現していましたが、私もまさにそう思います。藤波投手のような素晴らしい投手を持っていると、今大会も出場した濱田投手を擁する愛工大名電のように攻撃よりも守備を固める方に気持ちが行ってしまう監督がほとんどです。攻撃の方は常に3,4点取れれば良いという作戦、選手起用をしがちなんですが、大阪桐蔭・西谷監督は違いますね。どんな試合でも「10点を取りに行く野球」をしてきます。だから、序盤でも安易に送りバントはしてきません。昨日の天理戦もそうでしたが、それが周囲からは「強気な攻め」と映るようですが、私は違うと思ってます。そこには「個々の選手の能力を最大限に引き出そう」という西谷監督の意図が窺えます。それは光星学院・仲井監督にも共通します。
 
 私は今の高校野球に「セーフティリード」という言葉は存在しないと思ってます。どんなに強いチームでも負けるときはあります。その可能性を最大限に低くしているのが西谷監督の野球だと思います。現に大阪大会決勝の履正社戦では9点をリードしながら8回に藤波投手が乱れて7失点する場面がありました。更に昨年の大阪大会決勝では東大阪大柏原に序盤でリードを奪いながら、終盤に逆転されて「まさかの敗退」を喫していています。一見、強気に見える攻めは、実は「弱気な攻め」でもあるのです。細心注意を払いながら、自チームの戦力を最大限活かす攻撃をすることで、「有り得ない」とも思える敗戦パターンの芽も事前に潰しているのです。逆に光星学院の場合は、選手個々の能力を最大限に引き出さないと全国では勝てないことを監督、選手が非常に理解しているチームだなと感じます。このチームも傍目から見れば「強気な攻め」が目立つチームだと思います。田村、北條の豪快な打撃だけに目を奪われがちですが、全体的には非常に謙虚な野球をするチームだと私は思います。守備を固め、攻撃ではコツコツと一点を取りに行くような野球が必ずしも謙虚な野球なのかという疑問が私にはあります。光星の選手、監督は自分達の力量を考えて「それでは負ける」という認識が出来ていると思われます。

 桐光学園が3回戦で対戦した沖縄・浦添商業松井対策で序盤から球を見極めて、当てにいくような打撃をしてきましたが、昨日の光星学院は普段通りに「振って」きました。これを謙虚と捉えるか、不遜(過信)と捉えるかで試合の見方が変わると思います。光星サイドからすれば、金沢投手に完封など端から期待はしていなかったと思います。城間投手との継投も考えながら、最小失点に抑えたいという思惑あったとしてもです。そうなると光星が勝つには松井投手から得点を奪うことを考えなくてはいけません。しかも、1点を奪いに行くのでは無く、数少ないチャンスの場面では複数点を取らなければ勝算は低いと考えていたはずです。浦添商は確かに松井投手の「奪三振ショー」は防ぎましたが、その分、攻撃力は半減したように思います。試合後半は三振を恐れずに振ったことで照屋選手のホームラン、宮里選手の2塁打が出たように思います。「紙一重の采配」ではありますが、桐光に勝つには一番可能性の高い作戦を光星は選択したと思います。やはり、北條選手の2塁打は効いたと思います。1点差なら好投を続けていた光星・金沢投手にプレッシャーがかかってが逆転されていたかもしれません。高校野球では度々あることです。それは投手だけの責任だとは私は思いません。実はその前の神村学園戦で「光星は負けるかも」と私は思っていました。神村学園の打力は相当高いと見ており、光星の投手陣では防ぎきれない可能性をあると思っていましたが、序盤の長打攻勢で5点をリードしたことが非常に大きかった。その貯金で久々に公式戦のマウンドに上がった金沢投手は楽に投げることが出来ました。「楽」に投げるということは、金沢投手本来の良さを引き出す効果があります。光星が1点をコツコツと取りに行く攻撃をしていたら、金沢投手も相当苦しい投球になっていたと思います。それは当然、リリーフした城間投手にも降りかかり、スコアも逆になっていた可能性あると思います。私が言っている「謙虚な野球」とは、自チームの戦力を過信せず、冷静に判断して、最も勝つ可能性の高い野球をすることです。そういう意味で光星学院は謙虚な野球をしていると思いますし、先に述べた大阪桐蔭も同様です。だからこそ、両チームとも勝ち進むことが出来るのだと思います。再び、この両チームが決勝で戦うことを期待しております。


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