「無給医」とは、無給で働く医者のこと。
私は純然たる「無給医」の経験はない。
無給医には大別すると以下の3タイプがある。
1. 「無給でも、良い環境のもとで深く勉強したいから」
2. 「4年間の大学院生期間」
3. 「医局に有給職のポストがないため」
無給医は労働時間は超長時間になるが、無給でも薄給でもやっていけるという社会的な事情があった。
もちろん、「アルバイトで生活ができるから無給でいい」という論理は100%誤っているが、当時の若い医師が有給のポストが得られないなら止むを得ない・・・とそう考えて無給医に甘んじていた。
2000年に医師の研修医制度が発足して以降様変わりしたが、それ以前は医師の多数は大学医学部の医局に所属した。
医局は教授をトップとするピラミッド型の構造で、給与や階級、身分などはおおむね年功序列。有給のポストは各医局で10名程度であり、大きな医局だと50名もの医師が無給で所属していた。無給医たちは各々地域の病院に派遣され、生活費を得ていた。
問題の根本には、大学病院にはそもそも多くの医師を有給で雇う経済的余裕がなかったことがある。大学病院は自ら好んで無給医のシステムを取っていたわけではないが、このようなシステムで地域の医療が維持されてきたことは確かである。
大学病院でなくては学べない高度かつ先進的医学的知識、技術もあり、研究も可能である。この環境は若手の医師にとっては魅力があった。
現在、国は「医師の働き方改革」を進めている。時代の推移を感じるが、それでも医師には過酷な労働条件が残されたままである。
「医師の働き方改革」には医師の労働条件を軽減すれば良いというものではない。それだけを追求すれば地域医療が崩壊する。