ひとくちにフランス語と言っても、実際には下記のような4種類に分けられることをご存知ですか?

宝石赤français soutenu
   フランセ ストゥニュ
  上品な言い回しのフランス語のことで、français littéraire(文語)を含む。
宝石赤français courant
   フランセ クラン
   日常語
宝石赤français familier
   フランセ ファミリエ
   口語
宝石赤français argotique (argot) / vulgaire / grossier
   フランセ アルゴティック (アルゴ) / ヴュルゲール / グロスィエ
   業界用語、俗語


このように日本語で説明をつけると、
「えっ、日常語と口語って一緒じゃないの?」という疑問を抱きがちですが、
フランス語においてその区別は大変明確で、例えば
「女性」と言いたい時、
  courant クラン日常語)では femme ファム
  familier ファミリエ口語)では nana ナナ となります。
ちなみにこれをSoutenuストゥニュ上品な言い回しで表すなら
  dame ダム, madame マダムで、
vulgaire / grossier俗語) なら
  meuf ムフ, gonzesse ゴンゼス, morue モリュとなる訳です。

soutenuストゥニュ(上品な言い回し)を使いこなせる人はフランス社会でも稀な存在で、それだけで一目おかれることもしばしばです。実際、友達同士や家族内でまで常にsoutenuストゥニュを使うことは余りなく、現在では貴族社会においても、親しい間柄における日常会話はほぼcourantクラン日常語)もしくはfamilierファミリエ口語)で行われています。さらに若者同士や仕事仲間内では、argotアルゴ業界用語)やvulgaireヴュルゲール俗語)が用いられることもしばしばです。

しかし日本でフランス語を学ぶ限り、なかなかfamilierファミリエ口語)やargotアルゴ俗語)を学ぶ機会がないのもまた事実。日本ではそれなりにフランス語を勉強してきたつもりでも、実際フランスに留学してみると、フランス人同士が話している会話が分からなくてがっかりしたり、フランス映画がなかなか分かるようにならなくてフランス語を諦めたくなったりした経験がある人も少なくないのではないでしょうか?

それは、フランス映画に描かれるような、実際の日常会話が、familierファミリエ口語)やargotアルゴ業界用語)、vulgaireヴュルゲール俗語)に溢れているからです!

こうした表現を、実際の映画の場面ではどのように用いられているのか、例を用いてご紹介していくのがこのブログの目的です。

フランス語には興味がないけれど、フランス映画なら好き!という方にも楽しんで読んで頂けるよう、フランス語の解説というよりも、原語の言葉遣いの観点から映画をご紹介する記事を書いていく予定なので、ぜひお付き合い頂ければ幸いです。

ところで、現代フランス社会において soutenuストゥニュを使いこなす人は稀だと言いましたが、それだけに、soutenuストゥニュで話さなければならない相手(仕事先の上司など)に手紙を書くのは、フランス人にとっても一大事!しかも、日本語でいう「拝啓―敬具」「前略―草々」のような決まりごとがフランス語にも存在するので、文頭から文末まで気が抜けません。

そんな様子を見事に描いているのが、映画『プチ・ニコラ』の一場面です。これについては、『プチ・ニコラ』の項で詳述するので、是非ご一読ください。


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