今、米の価格が大変なことになっています。下をご覧ください。
https://www.nhk.or.jp/shutoken/articles/101/020/03より
お米がめっちゃ値上がりしているじゃないですか!米の値段が昨年の2倍弱です。
2024年夏以降、米不足、米の値上がりが起きています。「令和の米騒動」と言われています。
なぜ、こんなことになったんでしょうか。
政府の説明によると「2023年→2024年の米の収穫量は18万トン増えている。しかし、2024年末時点で21万トン減っている。これは、流通過程で誰かが買い占めて、市場に流していないからだ」というものだ。
いわゆる「消えた21万トン」というやつですね。
政府は21万トン分の備蓄米(大災害などに備えて政府が保存している米)放出、すなわち市場で売ることを決めました。
米の価格は確実に下がるはずです。だから、備蓄米放出が発表された時点(2025年2月)で「買い占めている誰か」も米を売り払うはずです。
いや~、良かった、良かった。これにて一件落着ですね。
いえ、そうはならなかったのだ。備蓄米放出が決まったのに米の価格は上がり続けている。
ど、どうしてなんでしょう?
つまり、政府の見解とは違って、流通過程において米が隠されてはいなかったということですね。
そういうことだ。下をグラフを見て。何が分かる?青線が米の生産量、赤が需要(買われる量)だ。
令和6年産米の需給状況|農林水産省発表 - ライスピア米蔵【㈲盛実米穀】 より
米の需要は年々確実に減っています。大体、毎年10万トンずつ減ってきているということですね。
あれ、令和5年、6年(2023年、2024年)は需要が生産量を上回っていますよ。
はい。ここが令和の米騒動の根本原因です。米が市場に停滞しているのではなく、米自体が不足しているのです。なぜ、需要が増大しているのか?なぜ、生産量が低下しているのか?の両面から考えなければなりません。
需要が増大しているのは、「インバウンド」(日本に来ている外国人の観光客)が米を食べるという説がありますね。農林水産省は約3万トンくらいインバウンド需要とのことです。
しかし、3万トンは消費量の0.4%に過ぎません。価格にほとんど関係ないでしょう。生産面でいえば、政府は2023年→2024年で、米の収穫が増えていると言いますが、猛暑などの影響で米の品質が悪く、主食としては使えず、せんべいなどの加工用や、飼料に回されたものも多いということです。
そうですね。しかし、根本的な原因は「減反政策」にあります。減反政策によって米の生産量を減らしすぎたことが米不足の原因です。減反政策とは何ですか?
はい。米の需要が減ってきています。そこで、主食用のコメから飼料用米や麦、大豆などに転作した農家に補助金を給付することで、コメの生産量を減らして、米価を市場で決まる水準より高く維持してきたのです。1970年に開始されました。
今でも続いていますか?
2018年に廃止されたことになっていますが、転作した農家に補助金を出す制度は今でもありますから、事実上続いていると言って良いのではないでしょうか?
なぜ、補助金、つまり税金を使って、米の値段を高く維持する必要があるのでしょうか?
農業界の構造的な問題がある。①コメの生産量が抑えられ、米価が高く維持されていれば、小規模で生産性が低い兼業農家(農業を主な生業とするものの、同時に農業以外の職業に従事して収入を得ている農家)でも稲作を続けることができる。
こうした②兼業農家の多くが、兼業収入(サラリーマン収入など)や農地を宅地に転用した利益をJA(apan Agricultural Co-operatives 農業協同組合)に預けることで、JAは農業生産額の10倍を超える預金量109兆円という国内最大級の金融機関に発展した。JAバンクの全国組織、農林中金はこの預金で巨額の運用益を上げ、毎年3000億円ほどをJAに還元している。
「減反政策」を廃止すれば、こうした兼業農家が離農し、預金も引き上げられてしまう。それをJAは恐れている。③しかもJAには農林水産省からの天下り(退官した官僚が、民間企業へ再就職すること)が横行しており、農水省もJAの意向には逆らない。
なるほど、再就職先が無くなりますからね。減反政策を止める→兼業農家が離農する→JAが縮小ないしつぶれる→JAに天下りする農林水産省の役人が困るという構図ですね。
さらに、農家やJAは選挙の集票マシーンだ。農村から選出される国会議員が選挙に勝てるかどうかは農民やJAが自分に投票してくれるかどうかにかかっている。
まさに「票田」ですね。しかし、それじゃ、政治家も農家やJAに逆らえないじゃないですか。
農家、農業協同組合、農林水産省の役人、政治家にも「高い米価」が必要なんですね。だから、減反政策は止められないということです。
本来であればコメの生産量を増やして価格を下げ、余った分は海外への輸出に回すべきだ。これだと自国で足りなくなったとき、輸出を減らして対応できる。
イチゴなどは輸出を奨励してますよね。米の輸出はなぜか考えられてこなかった。
日本の農業の弱さは、小規模であることだ。減反をやめれば、田んぼをかき集めて大規模に米を作ろうという企業が出てくるかもしれない。その企業に米つくりを任せればよいのではないかな。
現在の状況ではしわ寄せは消費者へ行き、今年も「コメが食えない日本人」が激増しかねない事態となっているということですね。
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拙著に込めた思いについては
「やさしい中学地理」について | やさしい社会ブログ (ameblo.jp)
「やさしい中学歴史」について | やさしい社会ブログ (ameblo.jp)
「やさしい中学公民」について | やさしい社会ブログ (ameblo.jp)
を参照してください。
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