先日、日本地政研究会(日本地政研究会 | Facebook)の皆さんと上野を探検した。フィールドワークでは様々な実物に触れることができる。ぜひ、受験生も「実物」を見るようにしてほしい。
「実物」から得られる感動は格別です。
では、まず上野公園について説明します。そもそも上野の地形はどうなっているのでしょう?この写真を見てください。日暮里駅周辺です。↓
すごい高低差!!
上野から北区方面に台地が続きます。これを上野台地といいます。↑は上野台地の北端です。
縄文時代の頃、この辺り一帯は東京湾の入り江であった。
はい。貝塚もかなり発見されています。
また、台地の下には湧水があるのが普通だが…。
はい。台地からの湧水などがたまってできた池が不忍池(しのばずのいけ)です。
江戸時代の不忍池を描いたものに↓があります。歌川広重の
作品です。
上野公園のあたりは、昔からある程度栄えていたようだ。7世紀ぐらいと推定される古墳も結構ある。権力者がいたということだね。↓は前方後円墳の摺鉢山古墳だ。
しかし、どこが「前方」で「後円」よくわからなかったですよね。
たしかに。さらにいつ建立されたか不明な「花園稲荷神社」「五條天神社」もあります。↓です。中は神域のため撮影禁止です。
古くから地域の人々に崇敬されていたんだろうね。
さて、江戸時代になるとこの地域は大変貌します。江戸に幕府ができたからです。上野は江戸の鬼門(北東 日本では古来より鬼の出入り方角であるとして忌むべき方角とされる)にあたります。そこで江戸の鬼門を守る寺として寛永寺が建立されます。↓を見てください。
今の上野公園全体が寛永寺なんですね。
東叡山寛永寺が正式名称です。東叡山というのは、京都の鬼門を守る比叡山を意識した名前です。上の広重の絵は「寛永寺清水観音堂(きよみずかんのんどう)」です。これは京都の清水寺を意識したものです。不忍池は琵琶湖に見立てられました。
ちなみに、広重の絵の松は現存しています↓です。
また、大寺院は、いざというときは大人数を収容できるので、軍事拠点としても機能させることも可能でした。
上野は寛永寺の門前町として栄え、大仏もできました。いまでは顔しか残っていませんが…。↓です。
さて、寛永寺の軍事拠点としての機能が発揮された事件が幕末に起きているよね。
はい。いわゆる上野戦争です。1868年、15代将軍である徳川慶喜(とくがわよしのぶ)が天皇に反逆したとされ「賊」とされたことに納得できない幕臣などが彰義隊(しょうぎたい)を結成し、約1000人が寛永寺に立てこもります。
明治新政府としては、この徳川残党を倒さなければ、東京に政府をつくることはできないね。
7月4日、寛永寺を包囲した政府軍は、攻撃を開始しました。
上の地図の最南端にある「黒門(くろもん)」では特に大激戦となります。黒門から彰義隊を攻めるのは、新政府軍の最強部隊である薩摩藩です。指揮官は西郷隆盛。黒門があったところには黒門を模した噴水があります↓
さて、午前中は彰義隊が優勢でしたが、午後からは当時の最新兵器であるアームストロング砲の砲弾が寛永寺に着弾し始めます。アームストロング砲のものか分かりませんが、着弾した砲弾も寛永寺清水観音堂に現存します。↓です。
アームストロング砲は現在の東大付近から発射された。よく「赤門から黒門を撃った」なんて言われるよ。
アームストロング砲の着弾とともに、形勢は大逆転。彰義隊は総崩れとなり、包囲されていなかった根津方面から逃げていきます。
しかしわざと逃げ道を開けておいたのも政府軍のリーダー大村益次郎の作戦でした。彰義隊は、待ち構えていた明治政府軍に次々と逮捕されていきます。しかし、一部は東北などに逃げました。下は彰義隊の一部が逃げ込んだ永久寺の門に残る弾痕です。
こうして彰義隊は1日で壊滅しました。
寛永寺は完全に焼失しました。↓が上野戦争後の寛永寺です。江戸の人々は徳川の世は終わり、新しい時代が始まったのだということを体感したでしょう。
寛永寺は明治新政府に逆らったとして、10分の1に縮小されました。
上の古い寛永寺の地図の東側にたくさんの施設があるね。そこは全部つぶされてJRが通っています。
寛永寺が立ち退いた場所が現在の上野公園なのです。
上野公園ではたくさんの人が死んでいるんですね。
これが彰義隊の墓です。上野公園内にあります。彰義隊の戦死者が火葬にされた土地に建てられたのです。
そしてそのそばには悲劇的な最期を遂げた西郷隆盛の像があります。↓です。
西郷さんの銅像のあたりから、彰義隊が大砲を射ち、西郷さんが指揮し、黒門を攻める薩摩の部隊を苦しめたと言われています。
上野公園ではたくさんの人が亡くなっているのですね。これからは死者のことを思い浮かべて上野公園に行きます。
拙著です↓。 ↑のように講師と生徒二人の会話形式で社会科を語る本です。 ゼミナールに参加する気分で、単なる暗記じゃない、基本から説き起こす社会の参考書をぜひ知ってほしいです。 以下から立ち読みも可能です。
拙著に込めた思いについては
「やさしい中学地理」について | やさしい社会ブログ (ameblo.jp)
「やさしい中学歴史」について | やさしい社会ブログ (ameblo.jp)
「やさしい中学公民」について | やさしい社会ブログ (ameblo.jp)
を参照してください。
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