その場所へ行くには、道路から直接は渡れない。
西の湖の西岸にあり、東西に伸びたよし笛ロードを徒歩か自転車で辿って来るしかない。
どこか懐かしい人里離れた奥地。
時折、近江八幡水郷巡りの疎な乗客を乗せた屋形船が、小雨そぼ降る湖面を慣れた手つきの船頭によって滑るように通り過ぎてゆく。

まさに別世界。
地元でもあまり知られていないのか、観光客もほとんど来た形跡がない。
屋形船でしか訪れられないかのよう。

湿地の仮設道の両脇には小さな野草が咲いている。
生い茂る樹木はここだけしか生えてないかのような特殊な姿形をしている。

自然を蔑ろにして進化してきた文明に、この地の時空がたじろぎながら静かに自身を護っている、そんな声なき声が雨音に負けずに聴こえてくる気がした。

まだまだ私の知らない身近な場所が五万といる事だろう。
まさに環境と人は深い所で結びついている、どちらも無ければどちらも存在しない不ニの関係なのだ。