なるべく、相手に良い中割りを与えずに、こちらが良い中割りを打つにはどうすればいいか?

 今回はこのテーマを考えていこう。

 「良い中割り」と書いた。

 それはつまり、「悪い中割り」もあるということである。

 と聞いて「ぼくいいスライムだよ」というあの下りを思い浮かべた方はなかなか理解が早い。

 そう、スライムにも良いスライムと悪いスライムがいるように、中割りにも良い中割りと悪い中割りがあるのだ。



 前回は、くぼみに打つ中割り、斜め一方向に返す中割り、に好手が多いと書いた。

 また、縦横方向に返す中割りは、やや嫌味があるとも書いた。

 ここでは具体的に「悪い中割り」ってどんな中割り?ということを考えていこう。


 
しろくろニート-不完全1
図1 白番

 図1は、牛定石である。

 ここで白は斜め一方向に返す中割りに見えるC5に打った。


しろくろニート-不完全2
図2 白C5

 これが失敗である。

 一見、斜め一方向に一石返しで、味が良いように見える。

 しかし、白が返したD4の石は、完全に周りを他の石に囲まれていなかった。

 これではD4はあっさり返される可能性がある。

 実際、次に黒はC3と打ってD4を返す手が最善である。


しろくろニート-不完全3
図3 黒C3

 黒のC3こそ、斜め一方向に一石返しの中割りであった。

 この手の後、D4は完全に他の石に囲まれていることがわかる。

 これにより、次に白にD4を返す手は見当たらない。

 これが良い中割りである。

 「良い中割り」とは、完全に周りを囲まれている石のみを返す中割りである。

 「完全な中割り」と言ってもいい。

 それはつまり、相手の打てる場所が増えないということを意味する。

 くぼみに打つ中割り斜め一方向に返す中割りに好手が多いのは、相手の手数を増やさないからである。

 相手の手数を増やさないことが、良い中割りの条件といえるだろう。


 逆に、相手の手数を増やしてしまう中割りは、悪い中割りになる可能性がある。

 図1で、白C5と打つのは、本当のところは、中割りとはいいがたいかもしれない。

 ただ、なんとか中に割り込もうとしている心意気を認め、ここでは「悪い中割り」、あるいは「不完全な中割り」と呼ぶことにしよう。

 「不完全な中割り」とは、完全に周りを囲まれている石以外も返してしまう中割りである。

 上で見たとおり、完全に周りを囲まれていない石を返してしまうと、その石を返す良い中割りを相手に与えてしまう危険がある。

 これがまずい。
 
 つまり、相手の手数を増やした挙句に、その手を打たれてしまうと自分の手数は増えないということになる。

 まさに、踏んだり蹴ったりである。


 オセロでは手数(打てる場所)が多い方が有利である。

 よって、自分の手数は増やし、相手の手数は減らすように打つというのが重要になってくる。
 
 そのための方法として中割りがあるのだ。

 だが、上で見たとおり、不完全な中割りを打ってしまうと、相手の手数が増え、自分の手数は増えないというひどい目にあう。

 この点よくよく注意する必要があるだろう。


 さて、図1からの最善はE6とF5の二箇所ある。

 今回はE6について見てみよう。


しろくろニート-不完全4
図4 白E6

 白も相手の石の中に割るように打った。

 これは縦一方向の中割りである。

 前回、縦横方向の中割りには嫌味があると書いた。

 打った手の、すぐ内側か外側に、相手に中割りを与えてしまうケースがあるためである。

 ところが、この図を見てほしい。

 本当ならば、黒はF5と斜めに返す中割りでも打ちたい所だが、種石がないためそれが打てないのだ。

 黒は種石を作ればF5に打つことができる。

 しかし、のんきに種石を作っていたら、白にF5と打たれてしまい、骨折り損のくたびれ儲けということになる。

 このように不完全な中割りであっても、すぐに中割りで返されないのならば、実質「良い中割り」であるといえる。

 これが相手に種石がないことを利用した実質「良い中割り」である。

 一見、「不完全な中割り」に見えても、種石がないことを先にチェックすれば、実質「良い中割り」として機能する点に注目したい。

 すなわち、相手に中割りという好手で返されないということである。


 ところで、これは前に学んだ種石消し・消去の手筋にどことなく似ている。

 まるで、未来に先回りして種石を消していたかのごとくである。

 ここでは何もしなくても種石が存在しないため、そのまま打つことができた。

 しかし、中割りした時に、相手に中割りで返されそうな時は、先に種石を消してしまうという手は使える。


しろくろニート-不完全4
図4再び 黒番

 もう一度図4を見てみよう。

 黒番ではあるが、もし、この時、白がC5に打った場合、どうなるか考えてほしい。

 先ほどは黒がたやすくC3に打った。

 しかし、今度は種石が消えているため、C3には打てないのだ。

 なんと、白のF6は実質「良い中割り」であると同時に未来の種石消しの手でもあったのだ。

 ここで黒が変な手を打ってきたならば、白はC3に打てるということである。

 これは牛定石からの展開であるが、定石とはなんとも深い意味を持った手の応酬であるということがよくわかる。
 

 長くなってきたのでまとめよう。

 相手に種石がないことを確認してから中割りを打とう。

 そうすれば、仮に「不完全な中割り」であっても、中割りで返されることはなくなる。

 実質「良い中割り」として機能するのである。

 もし種石があった場合は、未来の種石消しの手筋で先に種石を消してから中割りしよう。



 なかなか書きたい所まで到着していかないが、考えれば考えるほど、オセロの世界は広がっていくばかりである。

 では、本日はここまで!