ペンは剣よりも強し

 

 

自分がパソコン通信を始めたばかりの頃であったから、今からもう30年くらい前になるが、当時神田神保町の駿河台下交差点の近くにあった金ペン堂さんで、ペリカンの万年筆を買った。

昨年店主が逝去され、実店舗のお店は閉店してしまい、今ではお店のあった場所はコーヒー・ショップに変わってしまったとtwitter(X)の情報で知った。今度時間があったら是非神田神保町へ行ってみたいと思っている。三省堂の仮店舗とか、訪れてみたいと思う。

当時、店主に勧められて購入をしたペリカン・クラシックの品には自分は思い入れがある。インクがカートリッジ式ではなくて、ペンの尻軸を回してスポイトの要領でインク瓶から吸い上げる形状をしている。

小学五年生の頃に、家の近所の昭和の学習塾へ通った折(退職をした元小学校教諭のご婦人が自宅で算数ドリルや漢字練習帳などを使って教えてくれていた)その先生が持っていた赤ペンが、これと同じペリカンの万年筆であったのを覚えている。

 


「ペンは剣よりも強し」という言葉がある。昔、文学者の柄谷行人さんのエッセイを読んでいた時に、アメリカの南北戦争が起きるきっかけを作った女流小説家のストウ夫人の著した「アンクル・トムの小屋」の話を知った。

彼女の著作はアメリカの黒人奴隷解放運動を生み、それはやがて国を二分する戦争へと発展する。戦争は奴隷解放を求める北軍の勝利となり、ストウ夫人が当時の時の大統領リンカーンに会った時に、「あなたのような小さな方が、この大きな戦争(南北戦争)を引き起こしたのですね。」との言葉を掛けられたというエピソードが残っているそう。

日本の慶應義塾大学の校章にはペンをあしらったものが使われている。ちなみに神田の金ペン堂さんは、小説家の井上ひさしさんのご贔屓の万年筆屋さんであったという。自分は若い頃、神田の古書店街を訪ねる事を一つの祈りのような気持ちでその街を歩いた想いがある。書物を「学」を生きることのよすが(寄りどころ)にしている人間にとって、神田神保町は神聖な場所であったと想う。井上ひさしさんもきっと同じ想いであったのだろうと自分は推測する。

東京は神奈川県の西部の田舎住まいからは、ちょっと遠いところだが、ゴールデン・ウィークにでも行ってみるかな…。

 

 

 

 

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