俺はマックの2階でハンバーガーを食べ、コーラを飲んでいた。2つおいた席では少し大柄なスーツ姿の黒人が寝ている。あっちのフロアでは、ヒップホップ系の格好をした黒人が窓際のバー風の席に突っ伏している。 ここから見下ろす信号機の前では、黒人達がポン引きのようにお客さんを自分の担当する店に呼び込もうと、通行人達に声を掛けている。


或る店の前には、黒人達が歌い踊り、大きな声を上げて、楽しそうに喋っている。クルッと回った拍子に通行人とぶつかり、カタコトの言葉でサラリーマン風の男性に声をかける。「オー、ゴメンナサーイ!」。


ここは日本だ。


六本木。現在午前2時30分。


久しぶりに来てみて「終わってる・・・」と思った。


ドンキホーテがあんなに目立ってる。ディスカウント・ショップがあんなに目立ってる六本木ってアリ?。


つるとんたん、BLACKHORSE、GASPANICCLUB、ドンキホーテ・・・。


この並びは無いよなあ・・・。


やたらと多いガッチリした黒人、店を引けた男と女がマックで待ち合わせしたりしてる。すごく綺麗に着飾ったクラブのおねえちゃんと、マックで待ち合わせる気持ちがわからない。


街を歩いている女性達は、例によってスカートを忘れたようなファッション。たっぷりめのセーターに黒いストッキングとか、ワイシャツにストッキングかレギンス。シャツに隠れた所に超短いショートパンツを穿いてる。Gパン切り過ぎて、ポケットが残ってて太腿に出てるような服装。


ショートパンツの上からストッキングが見えているおねーちゃん。黒人の友達と歩いているように見えたが、その黒人がストッキングを更に上に引っ張った。女の子は体が浮き上がるほど引っ張られて、頬を紅潮させキャーキャー騒いでいるように見えた。下ろされると、しゃがみこんで黒人の顔を見上げ、声は聞こえないが唇が「もう! 責任とってよね」と動いたように見えた。


女性達は元気だ。今年のハロウィンなんか、男は外国人ばかりだが、女性は外国人に混じって日本の女性もだいぶ仮装して参加していた。


六本木も渋谷もモンスター達がたくさん居た。女性達は外の寒さをあまり気にしないような露出が多い服装が目立った。


「来年はVIP扱いになって、店にホテルを用意させてやる~」という始発で帰って来た女の子達が何人か、そう叫んでいたっけ。


ここから見える天下一品で、テーブル席に座って話しながら食べているのは男同士4人とか、男2人連れの日本人達。男達は地味だ。


一方、六本木の主役の男性陣はちょっとトッポイ肩で風切るタイプの、夜でもサングラスをかけているような人種が多い。白っぽいスラックスにカラーシャツとか、一時代前ならヤーさん風ファッション。それとは一線を画した2代目風ボンボンスタイルの優しくて爽やかに見えるタイプも時たま見かける。


ここでは、ネクタイは野暮ったい。ネクタイをせずに胸ははだけ気味のファッションが主流だ。銀座では、今でもカッコいいネクタイをした紳士も見かけるが、ここではカッコいいネクタイはほぼ絶滅している。


ドンキホーテにはおっさんとおねえちゃん。全部売られるだけなのに刹那の喜びにお金を使うおっさん。まあ、個人の自由だよね。でも、その女性達もアジア系の外国人が多い。


スタイルのいい黒のミニドレスで街を歩いている女性達。ケータイが鳴ると、中国語や、ハングル語が聞こえて来るコトが多いのには驚く。顔は日本人のようだが、言葉が違うのでようやく判別出来るくらいに馴染んでいる。


そう言えばマックで深夜働いてる男性スタッフは、アジア系外国人が凄く多い気がする。麻布十番や六本木ではお客さんに外国人が多いから、このエリアの特徴なのだろうか?。


芋洗坂をくだり、六本木ヒルズを右に見ながら、麻布十番駅まで歩いて来る。


もうすぐ6時になる。始発から何本か電車が出ている。


この駅の特徴は、朝、香水とアフターシェーブの香りが立ち込めることだろう。香水の香りはいろいろで、甘いタイプからフェロモン系までさまざまな香りがある。アフターシェーブは柑橘系が主流だ。


朝7時を過ぎると、アフターシェーブ。そして、8時を過ぎると香水の香りが強くなる。女性達の職場が近いコトを示しているような気がする。そして、JRのようなオープンスペースではなく、地下深く潜った大江戸線の特徴とも言える雰囲気の一つだといえよう。


でも、この香りが立ち込める駅としては、麻布十番が最右翼だ。  


       作:代田八郎



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