繊細で美しい世界 | 地唄舞 吉村ゆかり 粋・はんなり日記

繊細で美しい世界




今、少しずつ
美しい文体を味わいながら
読んでいる
四季に合わせたお料理のエッセイと
レシピが綴られた
寿木けいさんの「土を編む日々」。

まだ途中までしか読んでいないのですが、
その中でも印象的だったのは
春の項目の一番最初の
「淡い混沌を生きる」のお料理
「独活と蛤の鍋」のエッセイです。

このお料理は、
寿木さん御愛用の乳白色のお鍋を
旬の蛤、独活、かぶ、
そして白味噌と酒粕という
白いもので埋め尽くしたい
という願望のもとに
生まれたレシピとのことで、

白いペンキを塗るのではなく、
レースを何枚も重ねるような
絵コンテを思い描きながら
完成させたのだそう。

これを読んで、
ふと、地唄「小簾の戸」が思い浮かびました。




「小簾の戸」を舞う時にある方から

「小簾は細いものを編んで
目を透かしたものなので、
紗のような薄いものが
幾重にも重なったような
繊細な世界観を表さなくてはならないため、
目をパッチリ開けて舞うのではなく、
紗を通して見るような
少し虚な表情で舞いなさい」

というアドバイスを頂いたのです。

紗のような薄いものが
幾重にも重なるというイメージが
レースを何枚も重ね、
ふわっと靄がかかったような
白を重ねた淡い混沌の
「独活と蛤の鍋」と重なり

一見、全く違うもののようですが、
どちらも繊細で美しい世界
というところは同じなのだと思いました。