Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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多系統萎縮症の鑑別診断としてのIgLON5抗体関連疾患

2024年05月05日 | 自己免疫性脳炎
岐阜大学に異動し取り組んだことのひとつが「変性疾患と診断してきた症例の中に,治療可能な自己免疫性脳炎が含まれている」という仮説を検証し,免疫療法で治療することでした.ただ自己免疫性脳炎の経過は教科書的に「急性~亜急性」ですので,「慢性」に経過する変性疾患のなかに自己免疫性脳炎が隠れているという私どもの仮説はありえないとしばしば言われました.しかし事実は教科書通りではなく,慢性の経過を示す自己免疫性脳炎というものがあり,その代表がIgLON5抗体関連疾患です.

今回,Parkinsonism Relat Disord誌に掲載された当科の大野陽哉先生らによる論文は,多系統萎縮症(MSA)が疑われ,IgLON5抗体検査を依頼された35名の患者に対し,cell based assayを行い,陽性患者3名の臨床的特徴をまとめたものです.症候としてはパーキンソニズム,小脳性運動失調,重篤な起立性低血圧,急性呼吸不全,パラソムニア,声帯外転不全,錐体路徴候などを認め,一方,MSAに非典型的な症候として舌ミオリズミア,水平方向性眼球運動制限,繊維束性収縮,有痛性筋痙攣を認めました.いずれの症例も免疫療法により程度の差はありますが改善を認めました.



以上より,IgLON5抗体関連疾患はMSAの鑑別診断となりうることが示されました.本研究は,岡山大学山下徹准教授ら,山形大学太田康之教授ら,聖マリアンナ大学山野嘉久教授らとの共同研究として行いました.以下よりDLできますのでご覧いただければと思います.
Ono Y, Tadokoro K, Yunoki T, Yamashita T, Sato D, Sato H, Akamatsu S, Mizukami H, Ohta Y, Yamano Y, Kimura A, Shimohata T. Anti-IgLON5 disease as a differential diagnosis of multiple system atrophy. Parkinsonism Relat Disord. 124, 2024, 106992
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