パチリズム!

下手の横好き将棋指しの、将棋関連ブログです。

争点を調整する

2013-04-20 22:47:26 | 将棋

 攻めには『最も力が加わるポイント』というものがあります。それは格闘技の打撃にも似ています。強烈なパンチも、ポイントの手前で受けてしまえばダメージを軽減することが出来るように、将棋においても「争点をどこにするか」を考えることが、相手の攻めをいなすためには大切になるのではないでしょうか。

 

 ここで、私の失敗譜を一つ紹介しましょう。下の図は後手の△7三銀に▲6六歩と突いた局面です。

 

 

 相手が飛車を7筋に振り直して角頭を攻めてくるのが目に見えていますので、6七金の応援を作った手なのですが……ここから△7五歩が想定外の手。▲7五同歩△6四銀と進みます。

 

 

 この時点で、▲6七金には△7二飛で角頭が受からなくなっています。▲6七金△7二飛に▲6五歩が軽い反撃に見えますが、△7五銀▲5五角に△6四銀で先手が悪いです。また、▲6七金△7二飛▲7四歩はあったかもしれませんが、△7五銀が気になって指しきれませんでした。結局押し込まれて玉頭に拠点を作られてしまいました。

 

 後手は先手陣の一番固いところを攻めてきているわけですし、直ちに潰れるということはありませんが、やはり玉頭に拠点があるというのはあまりにも痛い。終盤に必ず効いてきますからね。

 

 もどって、先手は最初の図における▲6六歩にかえて▲8六歩と突くべきでした。

 

 

 これでも△7五歩▲同歩△6四銀なら先手は▲6六銀としておき、△7二飛には▲8七銀で角頭は受かっています。

 

 

 

  つまり、6六歩とついた図では先手は7四の地点を争点にするしかなく、△7五歩からの攻めに対応することが出来なかったのですが、8六歩と突いている図では▲6六銀とする余地が残っているので、7五の地点で相手の攻めを受け止めることができるのです。次に▲7六銀となると歩損だけが残りますので後手は△7五銀とするでしょうが、▲同銀△同飛▲7六歩で、先手は右銀がさばけたうえに上部に手厚くなっており、まずまずの進行では無いでしょうか。

 

 

 


振り飛車に明日はあるのか

2013-04-15 21:47:15 | 将棋

 数年前、チャットモンチーというバンドが「女子たちに明日は無い」という楽曲を発表しまして。第一印象ではネガティブな印象を持ちがちな響きですが、「今日のことは今日やってしまえ」という意味であるということを知って、なるほど非常にさばさばした心地よいタイトルだなと感心したことがあります。が、今回のエントリのタイトルは残念ながらネガティブな意味でつけております(いわずもがな)。

 

 もともと物事を深刻に捉えるという機能に著しく欠けているワタシは、振り飛車受難の現代にあっても、今は振り飛車が苦労しているけれどもそのうち巻き返すだろう、と思っていました。しかし、今日将棋連盟モバイルで配信された佐藤九段と橋本八段の対局を見て、その考えが大分揺らいできたのです。

 

 有料配信であるため流れをザッと並べるにとどめますが、簡単に言えば先手である佐藤九段が橋本八段のゴキゲン中飛車に対し超速▲3七銀を採用。そこから一直線に居飛車穴熊に組みに行きました。後手も手をこまねいてみているはずも無く、積極的に動いてポイントを挙げたように見えたのですが、やはり穴熊に組んでいるのが大きく敗戦。感想戦でも後手の良い変化は現れなかった、という将棋だったのです。

 

 もともとゴキゲン中飛車が流行した理由というのは「居飛車が穴熊に組めないから」だったはず。ところが、いまやシンプルに穴熊を目指して居飛車良しだというのです。もちろん、これから後手も工夫して良い対策が生まれるかもしれませんが……。

 

 ワタシは後手番では三間飛車を愛用していますが、基本的には居飛車党であり、相居飛車戦も好きですので、ゴキゲン中飛車が潰れても直ちに影響はありません。ですが、藤井システムにゴキゲン中飛車など、将棋を覚えた頃に花形だった戦法が窮地に追い込まれるのを見るのは、なんとも寂しいものです。


志を高く!

2013-04-09 23:12:06 | 将棋

 今日は平日であるにもかかわらず(しかも帰りが比較的遅かったにもかかわらず)、将棋倶楽部24で三局も指してしまいました。他にもやりたいこと沢山あったのになぁ……。

 

 将棋の内容はといえば、三局ともかなりの作戦負けになってしまいました。しかも、居飛車・振り飛車のどちらでも作戦負けになっているのだから、救いようがありません。

 

 なんとなく粘っているうちに、いつのまにか逆転してしまって結果としては三連勝だったのですが、これに喜んでしまってはいけないのです。三連勝というのはあくまでも偶然の産物であって、本来ならば三連敗しているはずだったのです。幸運にも勝つことが出来たからと言って、棋譜を再生しながら「逆境の中にあっても、最後まで勝負を捨てないメンタルの強さが勝利に繋がったと言えますね」「この勝負手が良かったんだよなぁ」「粘り方もうまいよね!」などとニマニマしているうちは強くはなれないのです! 志を高く持たなくては!

 

 ……いやぁ、でも嬉しいなぁ。三連勝だもんなぁ(ニマニマ)。


森内名人に望むもの

2013-04-09 00:57:09 | 将棋

 いよいよ明日、名人戦が開幕しますね。

 

 このシリーズ、ワタシは是非森内名人に勝って頂きたいと思っております。羽生三冠に比べて森内名人に特別思い入れがあるわけでもなく、羽生三冠に対して一種異様なほどのルサンチマンを抱いているというわけでもないワタシが何故、森内名人の勝利を願うのか、不謹慎ながら申し上げますと、そのほうが面白いからという、ただその一言に尽きるのであります。

 

 森内名人、羽生三冠、およびそのファンの方たちには大変失礼な話ではあるのですが『誰がどう見ても名人にふさわしい棋士を、名人戦以外はパッとしない名人が返り討ちにする』という構図がエンターテイメントとして非常に面白いと思うのです。

 

 羽生三冠は三つのタイトルを保有し、トップクラスの戦いの中で勝率7割5分をマークするなどいまだ押しも押されぬ第一人者。誰のファンかと問われれば迷うことなく渡辺・藤井ファンだと答えるワタシですが、そんなワタシでさえ、将棋連盟モバイルの中継リストの中に「羽生」という名前を見つけると「おっ!」と心躍るものがあります。やはり将棋界において特別な存在であることは間違いがないでしょう。

 

 それに対して森内名人は昨年の名人戦で鮮やかにタイトルを防衛して見せた後、今ひとつパッとしません。勝率3割台を記録した二年間に較べると随分よくなったものの、それでも昨年度は辛うじて5割を上回る程度だった勝率。名人戦を除けば負け越しています。名人戦だけ強い棋士、名人戦だけに絞っている棋士という謗りを受けてしまう可能性は大でしょう。

 

 しかし、しかしです。

 

 誰がどう見ても強い棋士が、当然のように勝ち続ける棋界が果たして面白いでしょうか。統計通りに展開する勝負の世界、そこに心沸き立つものがあるでしょうか。

 

 面白い、とは感情を揺さぶられることだとワタシは思います。たとえ、それがマイナスの方向であっても、です。

 

 だから、「なんであんなヤツが名人なんだ!」という不満もまた、エンターテイメントだと思うのです。ここ数年、名人戦が実に魅力的なコンテンツであり続けているのは、森内名人がある意味ヒールの役割を(不可抗力的にではありますが)演じ続けているからに他ならないのではないでしょうか。

 

 そういう観点からいえば、森内名人はやや上品過ぎるような気がします。もうちょっと挑発的になって、ファンの感情を逆撫でしてもいいのではないでしょうか。今年もスパーンと名人を防衛して、涼しい顔で「まぁ、他でいくら勝っても、名人にはなれませんからねぇ」くらい言って欲しいものです。無責任で失礼な意見ではありますけれども……。


三手目▲1六歩でも藤井システムとは限らない

2013-04-08 00:05:57 | 将棋

 ▲7六歩△3四歩というオープニングから▲1六歩と突く手は、藤井システムのトレードマークとして有名な手です。ここ数年では角換わり振り飛車風にする指し方もありますが、いずれにせよ振り飛車のイメージが強い手であります。

 

 

 最近とみに振り飛車づいているわたくしでございますから、はは~ん、これは先手は振り飛車指向だなと。だったらこっちが振り飛車にしたら当然相振り飛車になるだろうから、1六歩を端攻めを誘発する悪手にできる可能性が高い。あるいは先手は居飛車にしてくる可能性もありますが、居飛車にされても▲1六歩は緩手になるだろうと思って、意気揚々と△4四歩と閉じて三間飛車を目指したのであります。

 

 が、それがとんだ早合点。ここから先手には右四間飛車を目指す作戦があったのです。駒組みが進んで、先手が仕掛けてきたのが下図。

 

 

 先手が▲2六歩と突いているカタチなら△3六歩▲同歩△同飛▲3七歩に△2六飛と回る手があって、銀を上がる手をけん制できたりするのですが、この場合はソレが無いので、なすすべなく仕掛けられてしまっています。こちらも4三銀・4二金型で待つとか工夫すべきだったかもしれませんが、それでも苦戦のような気がします。

 右四間飛車への対策を知り尽くしたベテランの振り飛車党ならともかく、ワタシのような付け焼刃のエセ振り飛車党の場合は、三手目▲1六歩に対してすぐに角道を閉じるのは止めた方がいいかもです(そもそも角道を閉じる振り飛車自体どうなのか、という問題はもちろんありますが)。