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- 第110話 クラゲの怨念はつづく
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 朝カーテンを開けると、日差しがまぶしい季節になっていた。そういえば今日の午前は仕事の予約が入っていない。今のうちに池尻大橋の図書館に本を返しに行こう。ついでに丸正で魚も見てこよう。そう決めると、私はリュックに本を詰めこんで部屋を出た。池尻は、駒…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第109話 過労死してでも締め切りだけは死守
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る いつもお世話になっている樹森さんから電話があった。「ちょっと診てあげてほしい人がいるのヨ~」と、相変わらず元気な声である。それよりも、樹森さんのところでベビーシッターをしている瀬戸さんの妹さんが、その後どうなったかが気になっていた。私がすすめて…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第108話 両手の脈をみると動脈瘤がわかる
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 激しい腰痛のせいで、寝たきりになりかけていた春子さんの施術が終わった。ここまで車に乗せてきてくれた樹森さんや、春子さんのお嬢さんたちとみんなでお茶を飲んでくつろいでいると、腰の痛みが消えて饒舌になった春子さんの口から、長女が3年前にくも膜下出血…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第107話 エッ!くも膜下出血!?
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 樹森さんの運転する車が、買い物客でにぎわう吉祥寺の街をゆっくりと抜けると、あっという間に春子さんが待っている瀬戸さんの家に着いた。見上げるほど大きなマンションの前で、「ここです」といわれて入った地下駐車場には、高そうな外車がズラリと並んでいた。…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第106話 カリエスってミステリアス
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 友人の子どもは大きくなるのが早い。ついこのあいだ生まれたばかりだと思っていたら、「もうそんな年なの!?」と驚くことがよくある。その度ごとに、独身の自分だけが、世の中から取り残されているような気分になったりする。先週、樹森さんの家に行ったら、私が…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第105話 セカンドオピニオンと複雑な心のしくみ
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 今日は武蔵小杉まで出張だから、渋谷に寄って大和田青果で野菜を買って帰ろう。そんなことを考えながら朝ごはんを食べていると、湯飲みの向こうで電話が鳴った。例の山田先生からである。先生に高木さんの相談をしたのは、おとといの夕方のことだった。あわてて耳…
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- 第105話 セカンドオピニオンと複雑な心のしくみ
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 今日は武蔵小杉まで出張だから、渋谷に寄って大和田青果で野菜を買って帰ろう。そんなことを考えながら朝ごはんを食べていると、湯飲みの向こうで電話が鳴った。例の山田先生からである。先生に高木さんの相談をしたのは、おとといの夕方のことだった。あわてて耳…
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- 第104話 ベタベタタイプの患者になっちゃイケない
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 人というのは、話し上手と話し下手の2つのタイプに分けられる。さしずめ私は話し下手タイプなのか、善意でいったつもりでも、逆に悪意だととられてしまうことがよくある。もちろん話すときだけでなく、話の聞き方にも明らかに上手な人と下手な人がいる。医療の現…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第103話 歯槽膿漏から歯肉がんの宣告
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 「二度あることは三度ある」とはよくいったものだ。この仕事をしていると、それをつくづく実感する場面が多かった。昨年の暮れから、立てつづけに寺田さん関係でがん患者が現れていた。以前、紹介されて、施術でたいへんな思いをした大腸がんの下田さん(第81話…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第102話 友人が立て続けに去っていく
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 新年早々、また寺田さんから電話がかかってきた。「ヨウ、この前はお疲れさん!」と相変わらずごキゲンである。この様子では、彼はまだ山中さんのがんのことは知らないようだ。つづけて彼は、「佐々木さんのことなんだけどナ」と切り出した。「佐々木さんて、あの…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第101話 冬が近づいている
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る この仕事を始めて、早くも3度目の冬を迎えようとしていた。北国生まれの私にはちょっぴり心ときめく季節の到来だ。しかしこのヒンヤリとした安アパートでは、ワビしさが漂い始める時季でもある。少しふとんでも買い足そうか。そんなことを考えていると、手元にあ…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第100話 腕を引っ張られると激痛になる
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る あれから3日たった。今日はまた瀬尾さんの腕の痛みと格闘する日である。前回の矯正のあと、彼の腕の痛みはかなり軽くなって、残りはあと2割くらいだそうだ。瀬尾さんが腕の激痛で受診した病院でも、そこから紹介された大学病院でも、その痛みは、第7頚椎(首の…
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- 第99話 病院から逃げた瀬尾さんの運命と頚椎矯正の苦闘
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 手術の前夜、病院から逃げ出した瀬尾さんの話にもどろう。彼はそこで頚椎椎間板ヘルニアの手術を受ける予定だった。しかし頚椎のヘルニアの存在は、一般的にはあまり知られていないようだ。腰椎の椎間板ヘルニアであれば、腰痛のもっとも多い原因の一つとして知ら…
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- 第98話 教授の執刀は怖い
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 今から何年前のことになるだろう。まだ私が子供だったころ、山崎豊子の『白い巨塔』という小説が話題になっていた。あとで何度も映画やドラマにもなった人気作品である。私が観たテレビドラマでは、主役の財前教授の役を、二枚目で名高い田宮二郎が演じて好評だっ…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第97話 この病院からすぐ逃げなさい!
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 干ししいたけの軸をかんだら、ポロッと差し歯が落ちた。あわてて鏡を見ると、そこには前歯が一本抜け落ちて、ギャグ漫画にでも出てきそうな情けない顔が映っていた。これでは人に会えない。あわてて山田先生に連絡して、歯をつけてもらうことにした。山田先生は、…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第96話 よろいを着込んだがん患者たち
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 荒井さんの施術のために、新宿のクリニックに通い始めて早くも半年が過ぎようとしていた。最初のころは、女性にしてはあまりにも筋肉が硬くこわばっていた。それが今ではすっかりやわらかくなって、ポーンと張っていたおなかもペシャンコにへこんだ。本人も、回を…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第95話 それは本当にがんなのか
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 私が定期的に施術していた森脇さんが、先日受けた検査で、「子宮頸がんの疑いあり」と診断された。そんなはずはないのにと私がいぶかっていると、改めて受けた精密検査の結果では、がんではなかったそうだ。ところがその際、医師からは「がんじゃないといっても、…
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- 第94話 初めて看護師さんに施術法を伝授
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 皮膚科医の前田先生から紹介された子宮頸がんの荒井さんは、西武線のはずれ近くに住んでいる。お宅があるのは駅からもかなり遠いところなので、とても私のアパートから通える距離ではなかった。荒井さんは、以前に比べるとものすごく疲れやすくなってはいても、同…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第93話 冠婚葬祭もつづくが同じ症状の患者もつづく
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 看護師の近野さんから手紙が届いた。いまどき手紙は珍しい。そういえば彼女には、お母さんのお葬式以来会っていなかった。白い封筒を開けながら、差出人の近野さんの名前に向かって「久しぶり~」と声をかける。久しぶりといっても、あれからまだ半年もたっていな…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第92話 親戚が集まると、ろくなことがない
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 田舎の母から電話がかかってきた。ずっと入院していた父方の祖母がとうとう亡くなったのだ。もう103歳だったから、立派な大往生である。本人も満足だろう。私が受話器をもったまま黙っていると、つづけて「葬式に出られるか」ときいてきた。母には逆らえないの…
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- 第91話 散り際の美学
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 人が最期を迎えるときの姿は、その人がどんな人生を送ってきたかを物語る。生き方同様、人にはさまざまな死に様がある。そこにはそれぞれ、その人なりの美学があるようだ。私の祖父は70代半ばで亡くなった。当時としては早いほうでもなかっただろう。彼は腹膜炎…
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- 第90話 背骨がズレて咳が止まらない
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 友人の父親の宗介さんは、今年85歳になる。戦争で胸に敵の弾を受けてしまってからは、彼はずっと片肺で暮らしてきた。それでも大して不自由もなく、特別な病気もしてこなかった。ところが最近、かぜをこじらせてしまった。症状がなかなかよくならないのである。…
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- 第89話 家で死ぬのってたいへん!
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 施術の仕事を始めてからというもの、他人の人生の最期に立ち会う機会が多くなった。その度に胸が引き裂かれる思いにおそわれて、「もうこんな仕事なんかやめてしまいたい」と何度思ったか知れない。先日も、友人の近野さんのお母さんが、まだ50代の若さで亡くな…
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- 第88話 もしも私のがんが治ったら…
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 田口さんの家にうかがうのは、これで4回目になる。初めてお目にかかってから、3週間が過ぎていた。私が行ったからといって、終末期のがんで余命幾ばくもない人に、何かできるわけではない。それでも、もう1回、もう1回と思いながら通っていた。彼女の体には、…
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- 第87話 エエかっこしいはツライよ
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 私は気が弱いほうではないと思う。しかしどちらかというと、エエかっこしいの部類ではある。この性格のせいで、これまで何度、後悔するはめになったことだろう。大腸がんの下田さんのときだって、初めにはっきりと断っていれば、何か月もあんなたいへんな思いをし…
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- 第86話 追い詰められてもうどこにも逃げ場がない
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る この仕事を始めたころは、確かリラクゼーションを目的とした施術だったはずだ。それがいつしか、がんや難病といった、たいへんな症状の患者さんばかりがやってくるようになっていた。民間療法家にすぎない私のところに、そんな重病の人が押し寄せるのは、それだけ…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第85話 これは事件なのか
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 下田さんが病院での治療を受け入れてくれたおかげで、やっと私も彼の大腸がんとの闘いから解放された。あのまま彼が病院での治療を拒みつづけていたら、私はずっと彼のもとへ通って施術をつづけていただろう。それでは、私のほうが先に逝くはめになっていたかもし…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第84話 左の起立筋は手ごわい
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る それにしても、「左」というのはどこか不気味である。背骨は左にしかズレないし、背中の起立筋も左だけが盛り上がる。人の体の「左」に現れる異変は、何か不吉なサインなのだろうか。その不気味さそのままに、大腸がんの下田さんの起立筋は、相変わらず左が盛り上…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第83話 世紀の大発見!背骨は左にしかズレない!?
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る がんの話をすると嫌われる。ここのところ、それを実感するようになった。がんという病気は、病院で発見されるまではほとんど症状がないのに、末期になるといきなり激痛におそわれる人が多い。「痛みのあまり絶叫して、アゴの骨がはずれた」とか、「痛みのせいで力…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載> -
- 第82話 たったこれだけで「がんの痛み」が消えたの?
- *小説『ザ・民間療法』全目次を見る 下田さんがパートナーと暮らしている中目黒のマンションは、幸いにも私のアパートから歩いて行ける距離にあった。彼は平日は仕事に出かけているので、日曜の午前中に行って施術することになっていた。最初の約束の日、急ぎ足で歩いてみたら20分ほどで着いた。電…
小説『ザ・民間療法』花山水清<新連載>
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